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japanese.china.org.cn |29. 05. 2025

身近な北京を再発見―近未来総合文化施設・北京城市図書館

タグ: 文化 施設 図書館
中国網日本語版  |  2025-05-29

文・写真=小林正弘

清華大学法学博士 

Genuineways Law Firm パートナー

北京の労働節休暇に家族を連れて北京の南東にある通州区にある北京城市図書館を訪れた。通州区は近年、北京の「副都心」として現代的なスマート・エコシティの建設が進んでおり、都市行政機能の分散と集中を担う北京市政府新庁舎やユニバーサルスタジオ北京などの観光スポットとしても有名だ。

筆者の住む北京の北西から対極に位置する通州への50キロ程の道路は全長約7キロの独立三車線トンネル(双方向6車線)など、とても良く整備されており、北京城市図書館のある周辺エリアは緑が多く、サイクリング専用道路もあり、人と自然にやさしい都市建設が進められている状況が実感できた。

北京城市図書館に到着してまず驚いたのは1700台分の駐車スペースをもつ巨大地下駐車場であった。同駐車場は図書館を含む北京アートセンター、大運河博物館の三大文化施設および城市緑心森林公園の共有駐車場となっており、周辺の駐車場も合わせると4000台の駐車が可能という。

地上に出ると、そこには森林をモチーフにした吹き抜けガラス張りの巨大図書館が聳え立っていた。図書館の建築面積は7.5万平方メートルに達し、蔵書数は800万冊、閲覧席は約2400席を備えており、世界最大の仕切り壁のない開放的な読書空間があるという。 「さあ本を読もう」と図書館に入ると、入り口付近にはカフェや北京グッズを販売している休憩コーナーがあり、ロボットがコーヒーやアイスクリームを提供している。全く想像していなかった楽しい雰囲気に自然と心が和んだ。そして、さらに進むと、AIとの対話ができる近未来的なサイバー空間があり衝撃を受けた。魯迅のAIに「仙台に行ったことはありますか?」と質問すると魯迅AIは医学から文学の道を志した仙台留学の経験を語ってくれた。娘が恐る恐るAIに質問を投げかけていたのが印象的であった。

驚きの連続を経て図書閲覧スペースに辿り着くと、巨大な吹き抜けの空間に144本の柱が立っており、その柱が無数の木の葉を模した天井を支えている。まるで森林の中にいるような雰囲気だ。巨大なスクリーンには中国の歴史や文化、そして世界各国の言葉が映し出され、中国伝統文化を大切にすると同時に世界との繋がりや協調を重視していることが感じられた。

最新式のタッチパネルを供えた読書机や図書検索システムの他、子供の背丈に合わせた本棚を用意して読みたい本が見つかればその場で座って読める子供専用の読書スペースや京劇や影絵などの中国文化体験コーナー、中国四大名著の西遊記古書などを展示した古籍博物館など、楽しみながら中国文化や最新デジタル技術に触れる様々な工夫が凝らされており、これまでの図書館の概念を刷新する驚異の近未来総合文化体験施設であった。

娘が子供用読書スペースで本を2冊の読み終えた後、隣接する大運河博物館にも足を運んだ。長江と黄河を貫き杭州と北京を繋いだ世界最長の人工運河である京杭大運河。その起源は紀元前5世紀の春秋戦国時代まで遡ることができ、2500年の歴史をもつ。かつての通州もその重要な交易点として栄えていた。中国の歴代王朝と共に発展し、経済・文化の大動脈としての役割を担ってきたその壮大な歴史と現在を最新の斬新な展示手法や立体映像などで分かりやすく紹介しており、娘も楽しみながら学ぶことができた。

隣国中国の一般市民、特に青少年たちは普段からこのような素晴らしい文化環境で大いに刺激を受け、日々の大変な勉強に励み、中国の未来を担う人材へと成長している。現在、中国政府は2035年までの文化強国の建設を国家戦略目標に掲げ、文化を愛し、文化を通じて世界との対話を目指す取り組みを強化している。その一端を垣間見み、存分に歴史・文化を堪能できた北京副都心の図書館見学であった。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年5月29日