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japanese.china.org.cn |13. 08. 2025

ロボット産業の発展と鉄画芸術の継承―安徽省蕪湖市を訪れて

タグ: 経済 文化 安徽 ロボット 鉄画 芸術
中国網日本語版  |  2025-08-13

文・写真=小林正弘

清華大学法学博士 Genuineways IP Inc.パートナー

7月29日、「長江の旅 世界と手を携えて(長江之旅 世界同行)」取材チーム一行は武漢駅から高速鉄道で安徽省蕪湖(ぶこ)市に向かう。車窓から緑豊かな田園風景、澄んだ湖、風力発電の大きなプロペラが見える。長江中下流一帯が古くから肥沃な穀倉地帯として栄え、現在はグリーン発展・環境保護に注力している様子が垣間見られた。長江の雄大な流れを眺めつつ全長約6㎞の安慶鉄路長江大橋を通過し、夕日が沈む頃、長江に面し山と水が調和した都市・蕪湖に到着した。

翌朝、中国ロボット産業のリーディング企業「エフォート・インテリジェント・ロボット株式会社(以下「エフォート」)」を視察した。エフォートのロボット開発はその前身、2007年設立の自動車部品会社「蕪湖奇瑞装備有限会社」での工業ロボット自主開発に始まる。中国で工業用ロボットが注目されていなかった頃から自主開発の努力を続け、中国製造業グレードアップ関連政策の追い風と中国電気自動車産業の発展の浪に乗り、2020年に中国ハイテク・イノベーション企業向け株式市場(科創板)に上場を果たした。

エフォートの展示スペースでは工業用ロボットが自ら対象を識別し、必要な動作を思考し自動車部品の接合や各種形状に応じた塗装作業をしなやかに行う様子が見られた。また企業のニーズに応じてロボットの製品開発を行う工場内では至る所で大型アームロボットが高速で動作を繰り返したり、人型ロボットの動作テストが慎重に行われている様子が印象的であった。

張帷(ちょうい)副総経理は、競争の激しいロボット業界で生き残るために常に努力を続けており、その戦略として国内では清華大学やハルピン工業大学との共同研究、博士号取得を採用条件とする人材確保、海外市場開拓としてヨーロッパ拠点確保、2年に一度は日本企業の視察を行うなどして競争力を高め、10年後のロボット市場を見据えロボット製品開発を行っている様子を詳細に語ってくれた。その中で特に強調していたのが、企業のニーズを掘り起こしロボット製品市場を開拓する優秀な営業マンの重要性であった。日本のロボット関連企業も中国企業の懐に深く入りニーズを発見して製品の販売につなげる積極的な市場開拓が必要な時代が到来していると感じた。

中国のロボット産業イノベーションの現場を視察した後、蕪湖市の伝統工芸であり、ハンマーを以て筆に代え、鉄を以て墨と為す「鉄画」を鑑賞すべく「蕪湖工芸美術廠」を訪れた。館内では清代に隣同士であった画家と鉄工職人の交流を起源とし、中国画の精神を鉄に転化させる独創的な鉄画芸術の340年以上にわたる発展過程とその代表作品が展示されていた。80 以上の国々から5000人を超える外国人が来館しており、著名な日本画家・東山魁夷氏もその芸術性を非常に高く評価している。鉄画が世界各国との文化交流において重要な役割を発揮してきた様子が伺えた。

今回は国家級無形文化遺産「蕪湖鉄画鍛制技芸」の代表的な伝承者である張家康氏が実際にその技法を竹の若葉の作成を通じて披露してくれた。一本の鉄線が熱せられ赤く光るとすかさずハンマーを続けざまに打ち込んでいく。すでに葉の形が打ち出されてもまだ完成ではない。異なるハンマーに持ち替え、若葉の初々しさ出し、捻りを加えて風にそよぐ様子を表現していく。完成した青銅色の竹の若葉には葉脈までが浮き上がり、まるで本物のように生命力に溢れていた。張氏は完成した2枚の竹の葉を同行したイタリア人記者の娘と筆者の娘にプレゼントして下さった。多くの人々を魅了してやまない鉄画の真髄に触れる忘れがたい貴重な体験となった。

鉄画技術の伝承は戦争や歴史の原因で一時的に断絶の危機に直面した後、1957年頃から復興がなされ現在に至る。しかし、ハンマーを操る力仕事であり、高い芸術水準に達するには長期間の鍛錬と芸術的な素養が必要とされるため後継者不足に直面している。これに対し、蕪湖市では2025年4月17日に「蕪湖鉄絵継承・発展促進3カ年行動計画(2025-2027年)」が決定され、今後、鉄画技術伝承、産業促進、IP宣伝など創造的な発展に向けた各種取り組みがなされる予定だ。今後の鉄画工芸の継承と更なる発展を心から祈りたい。

蕪湖ではロボット産業の勢いと伝統芸術の温もりを感じることができた。取材チームはバスに乗り込み一路南京へと向かった。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年8月13日