| 中日両国> |
| japanese.china.org.cn |14. 08. 2025 | ![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
歴史を絶対に忘れない―世界に誇る国際文化都市・南京を訪れて
文・写真=小林正弘
清華大学法学博士 Genuineways IP Inc.パートナー
7月30日の夕方、「長江の旅 世界と手を携えて(長江之旅 世界同行)」取材チーム一行は南京の宿泊ホテルに到着後、夕食を兼ねて秦淮区中華門の東に位置し、明清時代に栄えた繁華街と周辺居住区を保存・復建した老門東に繰り出した。頭上には彩りの灯篭が柔らかく江南の街並み照らし出している。石畳の街頭には多くの若者や家族連れがウィンドーショッピングや漢服・チャイナドレスをレンタルして写真撮影を楽しんでいた。筆者も奥まった路地を歩き、静かに佇む明代の城壁を眺めていると歴史と文化の都・南京へやってきた実感が湧いてきた。

翌朝、雨の中、中華門にほど近い現代的なガラスの塔がそびえる大報恩寺遺跡博物館を訪れた。かつてこの場所には「中世世界7大奇跡」の一つとしてヨーロッパにも伝えられた全面が瑠璃(ガラス質の陶器)で装飾された九層の塔(琉璃塔)が建っており、毎夜、僧侶が灯火の番をして、9層の塔全体が光り輝いていたという。博物館ではテクノロジーとアートを融合させ、南京の六朝時代から明清時代にかけての「仏教の都」としての歴史を視覚的に伝える様々な工夫がなされていた。明代の永楽10年(1412年)、明の第三大皇帝・永楽帝(朱棣)が母・碽妃を偲んで大報恩寺と琉璃塔を建立したことに因んだ両親への報恩をテーマとした現代写真展示やシルクロードの悠久のロマンを感じさせる「微笑みのガンダーラ仏像」は心の琴線に深く触れるものがあった。
午後には南京雲綿博物館を訪れ、皇帝の龍袍(礼服)などに用いられた中国古代の織物技術の最高峰とされる「雲綿」の歴史と伝承の様子を学んだ。中国の織物技術は2009年にユネスコの無形文化遺産として登録されている。その代表といえる「雲綿」は、複雑な図案をプログラミングのように製図化した後、絹糸、金糸、銀糸、孔雀の羽根を使った糸を二人で協力して操る大型機織り機を用いて編まれていく。その技術は現代科学技術を用いても自動化することはできず、熟練の職人が1日8時間作業しても5~6センチしか織れない。20年以上にわたり「雲綿」を織り続ける一対の夫婦が一心不乱に黙々と作業する様子が深く印象に残った。「雲綿」は光の角度によって繊細なグラデーションと光沢を放つ。1500年以上の歴史をもつその技法は遣唐使などによって日本にも伝わり、日本独自の美意識とも融合し発展を遂げ、京都西陣織の「浮織り」技法にも生かされている。中国からの文化的恩恵と繋がりを深く感じるとともに、「雲錦」の技術を贈答用の掛け軸にするなど新しい形で商品化し、後継者育成を推進することで無形文化財の伝承と発展に注力する取り組みが大変に示唆的であった。

翌8月1日は「世界文学サロン」を訪れた。中国4大古都の一つである南京は文学においても1800年以上の歴史をもち、かつて李白が金陵鳳凰台で詩を詠み、魯迅が南京江南水師堂などで学ぶなど、詩人・文学者のゆかりの地である。中国四大名著のうち『紅楼夢』『三国演義』とも深く関り、1万部以上の文学作品がこの地で生まれている。文化の香り高き南京は2019年にユネスコ世界文学都市に認定されており、南朝時代の文学館跡地に建つ「世界文学サロン」では六朝時代から現代までの文学史を各種デジタル映像資料や例えば魯迅ゆかりの文学散歩デジタル地図などで分かりやすく説明している。敷地内にはカフェや自由にメッセージを書き込める巨大な真っ白のかたつむりのオブジェがあり、筆者も文学サロンを訪れた感動を綴り、次の目的地である今回の「長江の旅」を企画した江蘇省放送テレビ総局(集団)本部へと向かった。

江蘇省放送テレビ総局(集団)ではAI技術を駆使したコンテンツ制作、先端技術を取り入れた音楽劇場、テレビニュースの生放送撮影現場、江蘇国際メディアセンター、豪華な内装を備えた貸切映画館などを視察し、芸能、映画、ニュース報道、携帯端末用コンテンツ配信まで多角的な事業展開を積極的に展開している様子を視察した。特に専門アプリを立ち上げ、AIによる歴史建造物の立体画像解析、動作捕捉、生成映像技術を用いて動物キャラクターなどが司会をする各種コンテンツ動画配信を行う先駆的取り組みは衝撃的だった。

その後、取材チーム一行は南京城壁博物館を視察し明朝の開祖・朱元璋が開始した城壁作りの工程と歴史を学んだ。1937年12月、日本軍による南京侵攻が行われ、同博物館に隣接する城壁・中華門も砲弾によって激しく損傷し、非道極まる南京大虐殺によって無数の尊い命が失われ、永遠に癒えることのない深い悲しみの傷跡が刻まれた。展示スペースの一画には日中両国の友好を願い、南京城壁修復事業を推進した平山郁夫氏が修復後に城壁を訪れた際の写真や書画が展示されていた。実際に中華門を歩き、当時の惨状に思いを巡らせると、多大な文化的恩恵を受けながら、その大恩を忘れ、中国侵略を行った日本の傲慢さ、軍国主義の愚かさを深く反省し、二度と同じ過ちを繰り返さないために、この歴史を絶対に忘れてはいけないとの思いを強くした。

夕食後、秦淮河沿いの歴史ロマン溢れる美しき夜景や川辺で語り合う市民の姿を船上から眺めていると「平和ほど尊いものはない。平和ほど、幸福なものはない。平和こそ、人類の進むべき、根本の第一歩であらねばならない」(池田大作『新・人間革命』)との言葉が胸中に響いた。日中の文化的繋がりと平和の尊さを嚙みしめ、南京滞在の最後日の夜を過ごした。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年8月14日
![]() |
|
![]() |













