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japanese.china.org.cn |18. 08. 2025

「嫉妬するほど美しい」古都で熱狂のサッカー観戦―江蘇省鎮江市を訪れて

タグ: 江蘇 鎮江  文化 観光 サッカー
中国網日本語版  |  2025-08-18

文・写真=小林正弘

清華大学法学博士 Genuineways IP Inc.パートナー

8月2日、「長江の旅 世界と手を携えて(長江之旅 世界同行)」取材チーム一行は「長江伝奇」号に乗り、雨に煙る水墨画の世界に入り込んだような長江クルーズを満喫した後、バスにて南京に隣接し、「嫉妬するほど美しい」と呼ばれる鎮江(ちんこう)へと移動した。

最初に訪れたのは金山公園だ。長江と古運河(北京まで続く京杭大運河)が交わり形成された金山湖にて傘ほどの大きさのハスの葉を掻き分けながら進む船上遊覧を楽しんだ後、1600年以上の歴史を刻み、かつて鑑真が日本への渡航前に修行し、宋代の詩人・蘇軾が感嘆し詩を残した金山寺を登った。急勾配に立つ壮麗な仏殿を鑑賞しつつ、山頂に立つ慈寿塔を目指す。眼下に折り重なる伽藍の向こうには雄大な長江と一体となった金山湖や緑豊かな鎮江の美しき街並みが一望でき「嫉妬するほど美しい」景観を満喫した。

コクのある醤油スープが魅力の鎮江名物料理・鍋蓋面を堪能し早めの夕食を済ませた後、草の根・江蘇省都市対抗サッカーリーグ「蘇超(スーチャオ)」の地元鎮江チーム対南通チームの試合を観戦するため鎮江市市民スポーツセンターへ向かった。会場に向かう途中でドシャ降りの大雨に遭い試合が開催されるのか心配だったが、到着すると、試合開始直後から3万近い観客を収容した超満員のスタジアムでは大応援旗による応援合戦、会場全体を席巻するスタンディングオべレーションと大歓声の熱狂に包まれていた。観客の熱い視線を一身に集めグラウンドを真剣に駆け巡り、ボールを追って激しくぶつかり合う選手たちは平日は各々仕事を持つ一般市民である。

このサッカー都市対抗戦は今、中国で空前のブームとなっており、その観客動員規模は世界プロサッカーグの六番目に数えられるという。前半と後半の間のハーフタイムにはチベット族や鎮江のダイナミックな伝統舞踊が披露され、サーカー観戦に止まらない文化イベントとしての魅力も体感することができた。筆者が宿泊したホテルにも蘇超観戦客が泊まっており、食事中も蘇超談義でもちきりであった。地元チームを応援するために江蘇省内13都市の市民が各地を移動し、現地の文化や美食を楽しむスポーツ観光が郷土文化への誇りを深め、明日への確かな活力と希望を生み、地元経済の大きな起爆剤にもなっていた。

蘇超観戦で熱狂の夜を過ごした翌朝、中国4大酢の一つ鎮江香酢の歴史を学ぶため1840年創業の現地大手酢ブランド「恒順」本部に併設する「中国酢文化博物館」を訪れた。バスを降りると、甘酸っぱい酢の香りに包まれた。鎮江香酢は酒造の際の酒粕を発酵・熟成させたもので、比較的ソフトな口当たりが特徴だという。直接の試飲体験はとても刺激であった。酢に賞味期限はなく、熟成期間が長いほど品質が向上するという。博物館には100年前の酢も保管されており驚かされた。このように伝統を継承のみならず、近年では酢の良質な成分を高める製造法の開発による特許取得、造酒の行程を生かしたスパークリングワインのような紹興酒や可愛いお酢のアイスクリームなど酢以外の新商品開発など、更なる品質向上へ努力と現代の消費者ニーズに合ったマーケティング戦略をグローバルに展開している点にも学ぶところが多かった。

鎮江香酢を試飲し元気になった一行は、かつて長江の渡し場として栄え、唐から民国時代までの古い街並みが残る「西津渡(せいしんと)」でシティウォークを楽しんだ。敷詰められた石畳、立ち並ぶレンガ造りの楼閣、アヘン戦争後の開港地の歴史を物語る英国領事館跡のヨーロッパ建築などが見事に修復されている。唐代から清代まで地層が一目で見れる階段の遺跡が1000年の歴史を物語り、かつて旅人が船を待った休憩所跡が長江の流れの変遷を示していた。この街全体が長江の歴史を凝縮した生きる博物館であった。

長江の歴史を刻む鎮江で民衆の爆発的なエネルギーと伝統食文化の新しい息吹きを体験した一行は、今回の旅の最終目的地である上海へと向かった。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年8月18日