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| japanese.china.org.cn |19. 08. 2025 | ![]() |
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都市再生と未来産業技術・エネルギー革新の最前線―「長江の旅」終着点・上海を訪れて
文・写真=小林正弘
清華大学法学博士 Genuineways IP Inc.パートナー

8月3日、「長江の旅 世界と手を携えて(長江之旅 世界同行)」取材チーム一行は鎮江駅から高速鉄道に乗り1時間20分程で今回の旅の最終目的地、長江が大海につながる上海へ移動した。宿泊ホテルで簡単に夕食を済ませようと思い携帯アプリで出前を注文すると30分ほどで部屋の電話が鳴った。ドアを開けると配達ロボットが待っており、注文した夕食を届けてくれた。快適な上海ライフをさっそく体験することができた。

翌日の午前中はオフィス街に近い、まるでオアシスのような「半馬蘇河公園」を訪れた。「半馬」は中国でハーフマラソンを意味する。普陀区を流れる蘇河に沿って21キロにわたる美しい景観を楽しめる遊歩道、船乗り場、道の駅などの関連施設が整備されている。「公園内に立つあの綺麗な白い塔は以前の工場の煙突を改装したもの」との説明を受けて大変に驚いた。かつて工場や倉庫が密集し、水質汚染も深刻であった地域が、生態系を回復し、市民に安らぎをもたらす総合文化エリアへと生まれ変わった光景に深い感動を覚えた。

公園内にある道の駅「半馬蘇河ステーション・長風湾党群サービスセンター」では周辺の観光情報案内や読書休憩スペースの他、半馬蘇河周辺の魅力を体現したバッグや文具など「半馬蘇河(BMSH)」ブランドグッズや歴史ある上海「英雄」万年筆が販売されており、いずれもその斬新かつ洗練されたデザインが印象に残った。

午後には普陀区の重点デジタル経済産業パーク「海納小鎮(ハイナタウン)デジタルイノベーションセンター(以下、ハイナタウン)」を訪れた。館内にはロボット製品、超薄型ガラス素材、スマート医療関連商品等が展示されており、中国経済を牽引する新たな技術やサービスが普陀区に集中するハイレベルの人材リソースと華東師範大学など産学官連携を通じて弛みなく生み出されていることがわかる。

そしてこの上海普陀区を起点として開発された技術が今回の長江の旅の訪問地を含む長江沿線都市(上海、南京、無錫、常州、蘇州、南通、鎮江、泰州)にて産業化され、8都市の2024年GDP総額は約315兆円を突破し、全国GDPの11.2%を占める中国で最も活発な経済ベルトの一つである「沪寧経済ベルト」が形成されていることを学ぶことができた。特に、ハイナタウンでは中国科学院・中国工程院の院士(アカデミー会員)がハイレベルシンクタンクとして機能し、共同プロジェクトを通じてハイレベルのイノベーションを可能にしている点が印象に残った。

世界経済をリードする中国発のイノベーションの重要拠点の視察を終えた後、低価格の電気料金と電力の安定供給をデザインし中国のグリーン経済発展を支える「華東電力設計院」を訪れた。発電施設の設計と電力技術の開発に取り組む華東電力設計院は、1970年に中国東部地域の深刻なエネルギー不足に対し、周恩来総理が上海に中国初の原子力発電所建設プロジェクトを指示して以来、国内外で数多くの大規模原子力・再生可能エネルギー発電所の設計に携わるほか、原子力発電と風力・太陽光・火力エネルギー、さらに蓄電システムを最適に組み合わせた統合プロジェクトを設計し、再生可能エネルギーの利用効率を向上させるなど脱炭素へ向けた堅実な戦略プランを提供している。担当者の方の「中国は真剣かつ確実に脱炭素の目標実現に向けて取り組んでいます」との責任感に溢れた言葉が深く印象に残った。華東電力設計院副総経理の叶勇健氏は「華東エリアの電力供給ネットワークは世界最大規模であり、沪寧沿線都市のグリーンエネルギーの供給レベルは世界最高レベルにある」と語った。3D映像や説明パネル・発電施設のジオラマ模型を通じてその着実な歩みを実感することができた。

取材終了後、「華東電力設計院」の15階から螺旋状のスロープを使って電力を消費せずに自力で歩いて地上まで降りた。中国の持続可能な社会建設、グリーン発展の理念と節電の大切さを自ら思索させる設計に深い啓発を受けた。

長江の旅は黄浦江のナイトクルーズでクライマックスを迎えた。外灘の夜景はいつになく輝いて見えた。取材チーム一行は思い思いに10日間にわたる長江の旅を振り返り、感想を語り合った。長江の悠久の流れが文明、歴史、文化、経済、そして人々の生活に深く関わり、その流れは止まることなく未来、そして世界へと繋がっていく。中国の民衆の活力、文化の魅力、自然の美しさ、そして技術革新の勢いを実感し、新たな友と出会った忘れがたい旅となった。中国生活17年になる筆者にとってもすべてが新鮮で貴重な体験であった。現地を訪れなければ分からないことがたくさんある。ダイナミックに変化を続ける中国の魅力は尽きることがない。いつか長江上流の旅もしてみたい。末筆ながら今回の旅を企画した江蘇省放送テレビ総局(集団)をはじめ、お世話になったすべての方々、一緒に旅をした取材チームの友に深く感謝したい。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年8月19日
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