| 中日両国> |
| japanese.china.org.cn |22. 10. 2025 | ![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
長江デルタ訪問で読み解く「十四五」期の成長の要因=小林正弘氏
文・写真=小林正弘
清華大学法学博士 Genuineways IP Inc.パートナー
滔々と流れる長江が育むデルタ地帯は、中国経済の心臓部として「十四五(第14次五カ年計画、2021ー25年)」計画綱要に掲げられた「質の高い発展」の理念を、最も鮮やかに具現化する地域の一つだ。「十四五」最終年を迎えた本年、筆者は長江デルタを構成する安徽省蕪湖市、江蘇省南京市・鎮江市、上海市を訪問する機会に恵まれた。その経験に基づき、中国経済の堅実な成長を支える要因として、「新たな質の生産力」の飛躍、「文化・観光」を核とした生活の質向上および地域経済活性化について考察したい。
革新のエコシステムが支える新たな質の生産力
「十四五」期間中、中国の科学技術革新と産業イノベーションの融合が加速し、「新たな質の生産力」の発展を強力に支える基盤が形成された。科学技術革新と産業高度化は、長江デルタにおいて強力な推進力を得ている。

蕪湖市のエフォート・スマート・ロボット訪問では、その革新の息吹を直に体感した。複雑な環境下で自ら判断し、自動車部品の接合や精密塗装をこなす自律ロボット群、企業のニーズに合わせて日夜改良を重ねる人型ロボットの試作現場は、中国ロボット産業の最前線であった。張帷副総経理が語った競争の激しい中国市場での生き残り戦略は、清華大学やハルピン工業大学との産学連携、博士号取得者を要件とした高度人材確保、欧州拠点を軸とした海外展開、そして日本企業への2年毎の視察による先端技術動向の把握と市場動向分析に集約することができる。これは競争力を維持し、10年先の市場を見据えた「質」重視の成長戦略そのものだ。

この革新の力は、上海市普陀区の「海納小鎮(ハイナタウン)デジタルイノベーションセンター」でさらに体系化される。ここでは、ロボット、新素材、スマート医療など「新たな質の生産力」を担う技術・製品が、中国科学院・中国工程院をはじめとする産学官の連携によって精力的に開発され、長江沿線8都市(上海、南京、無錫、常州、蘇州、南通、鎮江、泰州)を結ぶ産業化エコシステムによって市場へと送り出される。8都市が形成する「沪寧経済ベルト」の2024年GDP総額は約315兆円に達し、全国の11.2%を占める中国随一の成長エンジンへと発展した。
さらに、グリーン発展を支える華東電力設計院では、原子力、再生可能エネルギー(風力・太陽光)、火力、蓄電システムを統合し、供給効率を最大化する先進的なプロジェクト設計が進められていた。叶勇健副総経理が華東エリアについて語った「世界最大規模の供給ネットワーク」と「世界トップレベルのグリーンエネルギー供給」は、脱炭素社会への移行と、AI時代の爆発的な電力需要に確かに応え得る、中国の強靭なインフラ基盤を象徴していた。
「十四五」期間における中国の科学技術イノベーションは、自国内の変革を深化させるに留まらず、人類社会全体に対し高度な利便性とスマート化を具現した新たなライフスタイルや社会インフラシステムのあり方を世界に示すものであり、深い示唆に富んでいる。中国発の科学技術イノベーションは今後、より一層、世界に建設的な影響を与えていくだろう。
文化・観光:地域アイデンティティと経済活力の融合
「十四五」期間において、中国は経済社会の発展において「人民の幸福」を一貫した指針とし、人民中心の理念に立ち、社会福祉と生活水準の向上に注力することにより、国民が獲得感、幸福感、安心感を感じられるように様々な努力がなされた。「十四五」計画では経済指標のみならず生活の質的向上を重視し、内需拡大や消費活性化を重んじている。この点において、歴史文化の継承・革新と観光産業の高度化が重要な役割を発揮している。

南京市の「老門東」は、その好例である。明清時代の繁華街を復元したこの歴史地区では、江南の情緒を演出する灯籠が柔らかな光を灯し、若者や家族連れが漢服を纏って散策や写真撮影を楽しむ。伝統と現代が融合した空間は、文化を消費と日常に浸透させる成功モデルとなっている。
歴史文化の継承も地域活性化の鍵だ。南京雲綿博物館では、皇帝の礼服にも採用された最高級織物「雲錦」を熟練の職人が今なお継承し、贈答用掛け軸など新たな商品形態で現代に息づかせている。一方、「世界文学サロン」では魯迅ゆかりの地をデジタル地図で辿るなど、最新技術を駆使して文化資産を可視化・体験化する試みが行われており、文化的営みの新たな地平を切り開いている。

さらに、草の根スポーツがもたらす経済効果も見逃せない。鎮江市で開催されていた江蘇省都市対抗サッカーリーグ「蘇超」の試合観戦は、その典型例である。地元鎮江チーム対南通チーム戦では、3万人収容スタジアムが満員となり、壮観な応援旗とスタンディングオベレーション、歓声が熱狂的な一体感を生んだ。観客動員規模は世界のプロリーグでも6番目といわれる「蘇超」は、単なるスポーツイベントを超え、サッカーを軸に江蘇省13都市の住民が移動し、地元の文化とグルメを消費するスポーツツーリズムを形成し、スポーツを核とした地域経済循環モデルを確立している。
「十四五」期間中、中国はコロナウィルス対策や不動産業界の不振、経済安全保障や関税による貿易障壁などの難題や悲観的予測に直面しながらも、平均GDP成長5%前後(世界2位)を維持し、滔々と流れる長江の如く発展を続けている。今回の訪問を通じ、その強靭な中国経済の力の源泉と民衆の生活の質の向上に触れることができた。その要因は将来を見据えた確固たる中長期の国家発展戦略とそれを支える政策、そして技術・産業革新を生み出すエコシステムと14億の民衆の生命力と潜在能力ではないだろうか。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年10月22日
![]() |
|
![]() |













