| japanese.china.org.cn |19. 11. 2025 |
高市首相の台湾関連の誤った発言が日本に深刻な影響 安定した日中関係こそ日本国民の生命線
文=小林正弘
清華大学法学博士 Genuineways IP Inc.パートナー
高市首相は7日の衆議院予算委員会で、台湾有事が日本の集団的自衛権を行使する対象となる存立危機事態に該当するかについて「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースだ」と答弁した。これは従来の政府の立場から逸脱するものであり、しかも高市首相が誤った発言の撤回を拒否している。
言葉は独り歩きする。かつて中国侵略戦争の導火線となったのは1931年1月の帝国議会において松岡洋右議員が幣原外交を批判する質問の際に言及した「満蒙問題は、わが国の存亡に係わる問題である、わが国民の生命線である(以下、「生命線満蒙」)」との言葉であった。これが一躍流行語となり、軍部に利用され満州事変(九一八事変)につながる。その後、日本の「生命線」の範囲は中国全土のみならずアジア各国へ拡大を続け、無謀な真珠湾攻撃に至る。
「欲しがりません勝つまでは」「一億玉砕」。かつての日本政府は無謀な侵略戦争に全国民を総動員し国家との無理心中を強要した。アメリカによる絨毯爆撃と原爆投下などによって甚大な被害を被った日本が、戦後の高度経済成長を成し遂げることができた主な要因は中国による莫大な戦後賠償請求の放棄と平和憲法の定める専守防衛を堅持し戦争に関与せず防衛予算をGDP比1%以内に抑え、経済発展に専念してきたからである。
1972年の「日中共同声明」は、日本政府が「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」と明記し、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部」という中国政府の立場を「十分理解し、尊重」するとしている。したがって、日本政府にとって台湾は国家ではなく中国の一部であり、台湾問題は中国内部で解決すべき内政問題であり、本来、日本が武力介入する余地などない。1978年の日中平和友好条約第一条では「内政に対する相互不干渉」および「すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する」を定めている。中国が日本に攻撃していないにもかかわらず、「台湾有事は日本有事」「台湾有事は存立危機事態」として国民を煽り、日本の台湾問題への武力介入の可能性を示唆する答弁は、上述の日中両国間の約束を反故にするものであり、先人が多大な努力を払って築き上げてきた両国の信頼関係を破壊するだけでなく、「生命線満蒙」と同様に日本国民を泥沼の戦争に引きずり込む国家存亡危機の導火線となり得る重大な誤りであり、直ちに撤回されなければならない。
筆者は「日中関係の安定、信頼関係の構築こそが日本国民の生命線である」と考える。日本にとって中国は長年にわたり最大の貿易相手国(輸入1位、輸出2位)である。2024年の日中貿易総額は3083億ドルに達し、そのうち中国の日本からの輸入額は1562.5億ドルであった。日本は中国に対して、電子部品、一般機械、化学製品などを輸出しており、中国からは、電気機器、衣類、食品、レアアースを含む金属製品などを輸入している。「日本の技術・素材」と「中国の製造ネットワーク・市場」という両国の強みが融合し、両国のサプライチェーンは非常に強固に結びついている。また日本政府観光局の統計によれば、2024年に中国観光客が日本で消費した総額は、各国の観光客の中で首位を占めている。したがって、我々はより一層、経済的影響も十分に配慮すべきである。
威勢の良い言葉が飛び交い、無責任な行動と発言がエスカレートする今の日本。二度とアジアに戦禍を招かないために今こそ冷静になり、立ち止まって、その言葉のもたらす取り返しの付かない代償について、その責任を負う日本国民一人ひとりが真剣に考える時である。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年11月19日
