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japanese.china.org.cn |10. 12. 2025

纐纈厚氏「一刻も早い高市首相の発言撤回と謝罪が唯一の解決策」

タグ: 台湾 存立危機事態 防衛政策
「人民網日本語版」  |  2025-12-10

高市首相の発言が中国政府と中国国民を激怒させている。激怒する理由を残念ながら高市首相自身も日本政府も、また日本国民も充分に理解していない。(文:纐纈厚・山口大学名誉教授。人民日報掲載)

高市首相の発言が、何よりも国際法や国連憲章に違反して、中国の国内問題に介入していることだ。額面通りに解釈すると、「日中共同声明」に示された「一つの中国」という大原則と日中関係の基礎を否定するに等しい内容なのである。中国側から高市首相の発言について批判したのも肯ける。日本政府は、中国が既存の秩序を変更する試みを果敢に行っている、と批判する。だが、現実には既存の秩序を変更しようとしているのは日本政府である。

日本政府は、あらためて「日中共同声明」の内容と、日中国交回復前後において、当時に内閣が鮮明にしていた「一つの中国論」の持つ最重要性の意味を確認すべきであろう。注意すべきなのは、高市発言を擁護する人たちや勢力は、中国の反発や批判、そして対日カードに、ここぞとばかりに中国悪玉論で盛り上がっていることだ。極めて単純かつ危険な論理で、中日間で取り交わした「四文書」を否定する。中国の高圧的態度が癪に障る、と言ったものも多い。この反応は稚拙過ぎる。右傾化が進行する現在の日本の政治思潮において、この勢いが高市発言を呼び込んだともいえる。

11月21日、木原稔官房長官は記者会見で、「誤解を招くようなことがあれば、今後は極めて慎重に対応しなければならない」とまで踏み込んだ発言を行った。事実上、高市発言の不適切性を認めたのである。だが、ことの重大性から鑑みれば、さらに踏み込んで発言の撤回と謝罪が不可欠でり、誤解や不適切性の表現では、中国に誠意を見せたことにはならない。

「存立危機事態」という言葉は、最初は「事態対処法」として法制化され、2015年に国会が強行採択した新安保法制に組み込まれたものである。平和憲法の実践を通して平和国家日本を訴え続けることで、先の侵略国家日本の汚名を清算することが求まられていながら、逆行する動きが近年顕在化していることは、極めて遺憾なことである。相手国への先制攻撃を明言する安保三文書は、その意味で憲法違反の文書である。高市首相の敢えて言えば「妄言」が、日中信頼関係を破壊している。「国家国民を守る」と繰り返してきた首相が、自ら「国家国民」の安全を酷く毀損してしまったのである。それは政治外交領域に留まらず、観光、貿易、教育など諸領域に拡がっている。

高市首相が外交防衛政策については、基本的な知識を欠いていることも露呈された格好だ。日本外交のレベルの低さを中国を含め、国際社会に発信してしまったと言える。さらに問題は首相周辺の人々が、首相の大失態を糊塗するかのように、懸命にフォローしていることだ。高市首相が、自民党内外のタカ派、軍国主義者の厚い支持を背景にしており、それに迎合する発言や行動を繰り返す可能性は当初から危惧されていた。その危惧は早くも現実のものとなった。

残念ながら日中関係は、台湾を巡る高市早苗首相の発言を機に悪化の一途をたどることになろう。ここに至っては、一刻も早い高市首相の発言撤回と謝罪が、唯一の解決策である。日中関係の安定と友好関係の強化こそが、日本にとって最大の安全保障政策なのだから。

「人民網日本語版」2025年12月10日