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japanese.china.org.cn |12. 12. 2025

中央経済活動会議から読み解く 今後の中国マーケット動向と対外開放政策の本気度

タグ: 中央経済工作会議 技術革新 開放
中国網日本語版  |  2025-12-12

文=小林正弘

清華大学法学博士 Genuineways IP Inc.パートナー

12月10、11の両日、中央経済工作会議が北京で開催された。本会議は中国共産党指導部の中国経済ガバナンスシステムにおける最高レベルの政策決定プロセスと位置づけられる。特に新たな5カ年計画(以下は「十五五」計画)のスタートとなる2026年の経済政策の重点が示されており、今後5年間の中国経済の方向性を読み解く上でも重要な意味を持つ。

会議で強調されたのは次の8つの重点である。すなわち①内需主導を堅持し、強大な国内市場を構築する。②革新駆動を堅持し、新たな成長動力の育成・強化を急ぐ。③改革の難関突破を堅持し、高品質発展の動力と活力を強化する。④对外開放を堅持し、多分野における協力とウィンウィンの推進を図る。⑤協調発展を堅持し、都市と農村の融合及び地域間の連動を促進する。⑥「二酸化炭素排出ピークアウト及びカーボンニュートラル」の目標を堅持し、全面的なグリーン転換を推進する。⑦福祉を最重要視し、民衆のためにより多くの措置を遂行する。⑧ボトムラインを堅持し、重点分野におけるリスクの積極的かつ着実な解消を図る。

上記の内容から今後、中国マーケットは内需拡大により更に成長し、技術革新により新しい産業が育成され、グリーン経済発展が堅持されると共に、その市場は「対外開放の堅持」によって外国企業にも参入の門戸がさらに拡大することが予想される。

外国企業が中国マーケットで投資を行う場合、安全かつ安定したビジネス環境と外国企業の参入障壁の緩和が不可欠である。この点、『国民経済・社会発展第15次5ヵ年計画の策定に関する中共中央の建議』では、「相互投資・連携の空間を広げる」との独立した項目を設け、「外資誘致に向け新たな優位性をつくり出し、「参入許可・営業許可」を着実に実行し、外資参入ネガティブリストを縮小し、外資収益の国内再投資を促進する。対中投資への行政支援体系を整備し、内国民待遇を全面的に徹底し、データの高効率で円滑かつ安全な越境移転を推進し、透明で安定した予見可能な制度環境を整備する。対外投資管理を効果的に実施し、海外進出総合支援体系をより完全なものにし、貿易・投資の一体化を促進し、産業チェーン・サプライチェーンの合理的で秩序のある越境配置を導く」としている。

中国マーケットはサッカーでのヨーロッパプレミアリーグ、野球でのアメリカメジャーリーグと言えるかもしれない。そこを目指し、そこで活躍することが、ひいては国内レベルの向上につながり、国別対抗戦のオリンピックやワールドカップによる成績に反映される。経済的に見れば、世界最大規模かつ最も競争が激しい中国マーケットで勝ち抜くことが、GDPが最近インドに抜かれ世界第5位に後退している日本経済の捲土重来のカギになると言えよう。

筆者は11月4日から6日の三日間、北京で開催された日中韓協力事務局(TCS)主催の第一回知財(IP)スタートアップキャンプに参加し、三カ国のAI関連ベンチャー企業家および専門家とAI技術を使った起業プランを企画する取り組みに参加する機会に恵まれた。三カ国に共通する高齢化問題について先端技術を駆使した商品デザイン、マーケット戦略、知財戦略を含む実践的な起業プランを三カ国混合チームの一員として企業経営者達と議論し練り上げ、月間利用者数が14億人を超えるSNSアプリWechatを運営するテンセント本社や大手ECサイトとロボット配送など先端技術を駆使した物流などに取り組む京東(JD.COM)本社などを訪問した。その中で見えてきた中国マーケットの強みは14億の市場規模と中国企業が自前でChatGPT(チャットGPT)のような大規模言語モデルLLMなどの新技術を開発・運用できる技術力と資金力、その新技術を市場等に投入して得られる膨大なデータであり、日本企業の強みは技術を人にとって温かみのあるものに最適化する極め細やかな職人技であると感じた。

実際にトヨタや日産は自動運転など新技術で中国企業と共同開発を行い、互いの強みを生かした商品は後塵を拝した中国新エネルギー車マーケットでシェア拡大の兆しが見られる。例えば、日産の中国専売純電気自動車(BEV)N7は2025年3月に発売され、8月には月間1万台超の販売を記録した。新エネルギー車以外にも、例えば中国で今後の急速な発展が見込まれるシルバー経済はバイオテクノロジー、AI診療、認知症予防や心理ケア、介護用ロボット、養護デジタルサービスなど、日中両国の強みを活かすことができる分野が多岐にわたる。

このように、日中両国の経済・技術協力は、両国にとっての利益だけでなく、世界全体に貢献する数々の革新が期待される。今後もアジアの持続的成長を牽引し、確かな未来を開くために、両国が互いの強みをよく理解し、最大限に活かし合うことが重要である。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年12月12日