| japanese.china.org.cn |18. 12. 2025 |
中国政府が旧ソ連による731部隊の尋問文書公開 不戦の誓いを深める契機に
文=小林正弘
清華大学法学博士 Genuineways IP Inc.パートナー
12月13日、第12回南京大虐殺犠牲者国家追悼日に際し、中央公文書館はロシアから引き渡された旧ソ連による731部隊の尋問文書(機密解除済)を公開した。この文書には、731部隊隊員の尋問記録、731部隊の罪状調査報告、旧ソ連当局内部の通信文が含まれており、記録期間は1939年5月11日から1950年12月25日までに及んでいる。同資料は、731部隊の隊員を裁いた1949年のハバロフスク裁判の記録を主体とし、尋問を受けた隊員が「細菌戦の準備や実行の罪を認めた」内容とされる。
1931年に陸軍に創設された細菌戦遂行、研究のための特殊部隊「関東軍防疫給水部本部、満州七三一部隊」では、不当に逮捕され捕虜とされた中国、旧ソ連、モンゴル、朝鮮の人々が特別監獄に強制収容され、人としての扱いを受けずに『マルタ』と呼ばれ、生きたまま細菌実験や生体解剖が行われ、1940年から1945年にかけて、少なくとも3000人が犠牲になったとされる。敗戦直前に組織的な証拠隠滅行為が行われ、特別監獄は爆破。捕虜はすべて殺され、被害者の証人は存在しない。
今回公開された旧ソ連の資料と同様に、中国、アメリカ、日本などでも731部隊の史料に関する公文書などが発見されている。中国の被害者家族が日本政府を被告として提起した国家賠償請求訴訟では、東京地方裁判所が2002年の判決にて、最終的に請求は棄却したものの、中国4都市で行われた細菌戦の事実を認定し、旧日本軍による当該戦闘行為は非人間的なものであったとの評価は免れないとし、ジュネーブ議定書が禁止した「細菌学的戦争手段の使用」にあたり国際法上の「国家責任」が生じていたとの判断を示した。
731部隊「少年隊」元隊員であり、人体実験の様子を目にし、特別監獄の爆破や殺害され焼かれたマルタの骨を拾い集めるなどの証拠隠滅に加担した清水英男氏(94歳)は戦地中国から帰国後、軍歴を隠すこと、公職に就かないこと、隊員間で連絡をとらないことを厳命されたという。731部隊の生存者が高齢化し、戦争を経験していない世代が大部分を占める中、戦争の悲惨さ、残酷さを国民一人ひとりが認識することが大事である。
筆者自身、実際に南京大虐殺記念館や各地の抗日戦争記念施設を訪れて感じるのは、「戦争はこれほどまでに人間を残酷にするものか」、「被害の実態がこれほどまでに悲惨なものだったのか」という衝撃である。731部隊や南京大虐殺の史実を知ること、侵略の歴史に目を背けずに学ぶことが、「戦争は絶対に起こしてはならない」という思いを深めることに繋がる。戦争の残酷さ、悲惨さを知らなければ、平和の尊さがわからない。積極的に証言活動を行う清水氏はインタビューで「子どもたちが、悪いことは悪いことだと判断するには、本当のことを知らないといけない」と語っている。一人でも多くの日本人が中国の抗日戦争記念関連施設を訪れて、自分の目で事実を認識し、戦争の善悪、被害者の無念と怒りの叫びに思いを巡らすことが、自身の心に平和の砦を築くことになる。
日本政府は731部隊の存在を認めながらも、「(同部隊の)活動の詳細を示す資料がない」ことを理由に人体実験や細菌戦などの事実を認めていない。非人道的な戦争犯罪の証拠を隠蔽し、史実に真摯に向き合わない日本政府の態度は、侵略を受けた国々の人々にどう映るだろうか。平和国家であると主張しても、果たして国際社会から信用されるだろうか。
戦後80年を経た今でも、日本軍国主義による侵略行為の真相解明と総括が十分になされていない。どうして非人道的な行為が組織的になされたのか。生命を軽視する軍国主義の残虐性は、他国の人々に牙を向いただけでなく、最終的には沖縄戦での集団自決や特攻隊など、日本国民にも容赦なく向けられた。愚かな指導者に率いられた国民もまた哀れである。
731部隊の生存者が存命するうちに日本政府が真相解明に向けた調査委員会の設置など実質的な取り組みを行い、非人道的な行為がなされた原因について総括した上で、被害者の遺族の方々に心からの反省と謝罪を行うことが必要である。平和国家としての根幹である専守防衛や非核三原則、そして防衛装備移転三原則などに揺らぎが見られる中、日本が二度と同じ過ちを繰りかえさないために、加害の史実について国民一人ひとりが認識し、教科書や実際の教育の現場でも詳細に教え、「いかなる戦争も絶対に許さない」不戦の誓いを深めていく必要がある。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年12月18日
