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japanese.china.org.cn |30. 04. 2026

英紙が中国の貧困ゼロ宣言に疑問? 英アカデミー会員の詳細考察に強い共鳴=小林正弘氏

タグ: 貧困脱却 経済 支援 収入
中国網日本語版  |  2026-04-30

文=小林正弘

清華大学法学博士 Genuineways IP Inc.パートナー

近日、ファイナンシャルタイムズのウィリアム・ラングリー記者による「中国は貧困をなくしたと主張しているが、本当にそうなのか?」という記事が発表され、これに対し英国王立芸術協会のアカデミー会員あるロバート・ウォーカー氏が詳細な考察を行った。

おそらく日本では中国政府が2020年を目標に国内の絶対貧困人口(年収入2300元以下の人口をいう)をゼロにするという人類史的挑戦を行い、この目標を達成したことはあまり知られていない。

ウィリアム氏の記事は、同氏が当時の最貧困地域の一つである貴州のドン族住民への現地取材を通じて、現地政府の住宅や生活支援を受けて貧困村落から都市部へ移住したものの現在も貧困生活を送っているケースを紹介し、中国政府の貧困ゼロ宣言に疑問を投げかける内容であった。

ロバート氏が記事で指摘するように、一部の遠隔地ではその地理的条件が制約となり、鉄道や道路といった交通インフラを通じた十分なアクセスを確保することが難しく、貧困脱却の成果を定着させることが難しい。また農村生活から都市生活への適応は、読み書き等の最低限の学力、新たな地域産業の育成、伝統文化の継承、生きがいとコミュニティの再構築なども必要となる。これらの多角的かつ中長期的な課題に対応するには、次世代も見据えた時間軸での粘り強い取り組みが不可欠となる。

こうした状況を踏まえ、中国政府は、2015年12月にこのような地域の貧困民が希望する場合に、移住による脱貧困を行うことを決定し、移転先の住居建設、インフラ整備、就学、医療、就職先、産業開発等を政府が主導し、貧困民が移転先で自立し、社会生活の再構築ができるまでサポートを行っている。また、絶対的貧困ゼロ達成からの5年間(2021年~2025年)を貧困脱却の過渡期と位置づけ支援を継続し、更に本年からスタートした第15次五カ年計画でも再び貧困に陥らせないことを目的とした継続的な重点的政策支援が実施される。

ウィリアム氏の記事はその移住政策における個別の課題事例に焦点を当て、政策の改善点を浮き彫りにする点で価値を有するものの、取材の範囲や期間が一部に限定されており、その住民が現在も貧困生活を送っている根本的な原因については深い分析がなされておらず、その課題に対する中国政府の取り組みの詳細にも触れられていない。中国に対する基本知識のない読者が、他の関連情報に触れずに、この記事のみを鵜呑みにした場合、「中国は世界の貧困対策から遅れている」といった誤解が無意識に刷り込まれるおそれがある。

筆者は昨年2月、広西チワン族自治区崇左市を旅行で訪れ、小桂林と呼ばれる明仕田園で筏に乗り崇左の山々の美しい奇景と田園風景を鑑賞しながら、一緒に搭乗しているガイドの女性と会話する機会があった。その女性は「以前、山が多いため、この地域は耕作に適さず現地住民の生活も大変であったが、現在は自然環境を活かした観光業や民宿経営などによって農村経済が発展しており、高級な民宿ほどなかなか予約が取れない」と聞いた。ガイドの明るい表情に現地住民の生活が以前に比べて豊かになっている様子が伺えた。

ロバート氏は同記事が2014年から2021年にかけて中国の農村住民一人当たり可処分所得が80%以上増加したことを認めながらも、世界銀行のデータ――すなわち、過去40年間で中国は極度の貧困人口を約8億人減らし「世界の貧困削減成果の4分の3近くを貢献した」――については一切言及していない点などに着目し、選択的な物語づくりと隠れた偏見によって、中国の貧困削減の成果を否定しようとする報道姿勢を鋭く指摘している。

このような報道は日本における中国報道でもよく見られる傾向である。様々な中国経済崩壊論などが長年喧伝されてきたが、気づけば中国のGDPはこの十数年で日本の5倍規模にまで成長した。中国は広大であり、悠久の歴史があり、民族、文化、経済は多様かつ複雑で、社会の変化スピードは極めて速い。筆者は中国に住んで18年になるが、自身が見聞きし理解できる中国は全体のごく一部に過ぎず、実際に接した人々は14億人の中国人の中の僅かな一握りであり、専門家として中国を一概に論じる勇気はない。「木を見て森を見ず」、「群盲象を評す」(数人の盲人が象の一部だけを触って感想を語り合う逸話)という戒めを常に胸に刻み、多角的な視点から絶えず変化する中国に触れ、学び続け、正視眼で中国の実態を理解し、認識を深めていきたい。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2026年4月29日