share
中日両国>経済>
japanese.china.org.cn |28. 05. 2026

国際化が進む人民元

タグ:
人民中国  |  2026-05-28

Terra Nexus最⾼経営責任者 田代秀敏=文 

人民元の国際化が、米国の通貨覇権の重要な支柱である「ペトロダラー」体制を揺るがしている。 

世界最大の石油会社であるサウジアラムコが、ここ数年、中国に販売する原油の人民元決済のシェアを徐々に拡大している。サウジアラムコは、原油取引が米ドルで決済され、産油国は米ドル建ての輸出収入で米国債を大量保有するという「ペトロダラー」体制の重要な支柱であった。それが今では、人民元の国際化の重要な支柱となっている。 

今年3月時点で、中東地域全体から中国への原油輸出における人民元による決済のシェアは史上最高となる41%に達した。人民元は初めてユーロを上回り2位の座に就いた。それに対して、第2次世界大戦後の世界で基軸通貨として「君臨」してきた米ドルのシェアは52%に低下した。 

こうなった原因は、今年2月末からの米国・イスラエルとイランとの衝突だけではない。最大の原因は、中国が世界最大の原油輸入国であることだ。実際、中国税関総署のデータによると、中国の昨年の原油輸入量は5億7773万トンだった。これは日本の1億1500万トンの約5倍である。このことは、中国の購買力平価換算の国内総生産(GDP)が世界最大であり、日本の約5・9倍であることを反映している。 

人民元の国際化すなわち国際市場における人民元の利用拡大を象徴するのは、「パンダ債」、つまり人民元建てで外国の発行体が中国大陸部で販売する債券である。同じく人民元建てで中国の香港地区などで販売される「点心債」とは異なり、中国大陸部で販売される。 

パンダ債は、すでにハンガリーやインドネシア、アラブ首長国連邦(UAE)のシャルジャ首長国などによって発行されており、発行総額は2024年に1950億元、昨年は10月までに1300億元に達した。また、ブラジル、パキスタン、スロベニアはパンダ債の発行計画を今年初めに発表した。ケニアは今年に入り、中国の銀行からの米ドル建て融資を人民元建てに借り換える契約を結んだ。 

別の一歩も進められた。豪州に本社を置く世界最大級の資源会社BHPのマイク・ヘンリー最高経営責任者が昨年10月、鉄鉱石を中国に輸出して人民元建てで販売しているのは「理にかなっている」と述べた。鉄鉱石の他にも人民元建て決済は増加し、国境をまたぐクロスボーダーの人民元建て決済額は、24年に前年同期比22・5%増の64兆元に達した。 

中国は人民元に特化したクロスボーダー決済システム(CIPS)を15年から稼働している。CIPSに直接参加して口座を開設するには、原則として国際銀行間通信協会(SWIFT)の銀行特定コード(BIC)を保有しなければならない。しかし、BICを保有していなくても、営業許可証の翻訳文などを提出すれば直接参加できる。直接参加行同士はSWIFTを経由せずに人民元クロスボーダー決済が可能で、指定された直接参加行に手続きを委託すれば、口座を開設しない間接参加も可能である。 

CIPSには今年3月までで、世界から194行が直接参加し、1597行が間接参加している。そのうちアジアからは131行が直接参加し、1165行が間接参加(うち中国大陸部は合計564行)している。他に欧州からは直接参加が33行で、間接参加が266行である。アフリカからは直接参加が9行で、間接参加が73行である。南米からは直接参加が8行で、間接参加が33行である。オセアニアからは直接参加が7行で、間接参加が25行である。北米からは直接参加が6行で、間接参加が35行である。昨年の取引額は180兆元(約4170兆円)で、1日の決済額は今年4月2日に1兆2000億元を突破した。 

直接参加行には中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行、交通銀行の本店そして東京支店など主な海外支店だけでなく、日本の3メガバンクや英HSBC銀行、米JPモルガン・チェース銀行、ドイツ銀行、フランスのBNPパリバ、シンガポールのDBS銀行など各国を代表する銀行の中国支店が含まれる。 

CIPSにQRコード決済、ブロックチェーン、デジタル人民元なども接合され、国際送金に要する時間はSWIFTに比べて大幅に短縮された。昨年4月には、多国間中央銀行デジタル通貨ブリッジ(mBridge)を用い、人民元とUAEの通貨ディルハムとの交換を秒単位で実現した。将来は「一帯一路」参加国との貿易決済の90%カバーを見込んでいる。 

中国の金産出量は24年で世界最大の約380トンである。また、中国の公式の金準備は今年4月現在2321・6トンで世界第6位となっている。 

豊富な金準備を背景として香港で人民元国際化が進んでいる。金現物を取引する上海黄金交易所(SGE)は昨年6月、初めて香港で金を人民元建てで取引可能にした。さらに、香港政府は今年1月、金の国際取引センター構築に向け、金の取引に特化した「中央清算システム」を整備すると表明し、SGEと連携に向けた合意書も結んだ。 

昨年9月25日、デジタル人民元国際運営センターが上海で正式に稼働を開始し、デジタル人民元越境デジタル決済プラットフォーム、デジタル人民元ブロック・チェーン・サービス・プラットフォーム、デジタル資産プラットフォームという三つの主要業務プラットフォームを立ち上げた。デジタル人民元国際運営センターは中国人民銀行デジタル通貨研究所が設立・管理しており、デジタル人民元の越境およびブロックチェーンインフラの構築・運営を担当し、国内外の金融インフラとの越境相互接続を推進している。 

世界経済の不確実性が高まる中で、人民元の国際化は貿易そして投資の決済通貨の多様化に貢献する。特定の通貨が国際決済手段であることは、その通貨を発行する国の政策や行動が直接に国際経済を不安定にする。また、その通貨を発行する国は経常収支も財政終始も赤字であっても、国債を外国に大量販売することで財政を持続することが可能となり、赤字が膨張し続けてしまい、世界経済を不安定にする。人民元の国際化は、特定の通貨から特権的な地位を剥奪し、その通貨の発行国が「普通の国」として経済と財政を健全化することに貢献するだろう。 

日中両国が自国通貨建て決済を拡大していくことは可能である。日中両国はサプライチェーンが複雑に絡み合っており、自国通貨建て決済の拡大は両替コストと為替リスクを減少させる。また、購買力平価換算のGDPが最大の中国と第5位の日本とが貿易の自国通貨建て決済を拡大していくことは、自国通貨建て決済を新しい標準として世界経済に普及させることに貢献するだろう。 

※本文は、田代秀敏「国際化する人民元 クロスボーダー決済額も金準備も増加中」(週刊エコノミストOnline、今年2月4日)に基づき、加筆・改訂したものである。