| japanese.china.org.cn |29. 06. 2026 |
初夏の北京を歩く――日常の風景と時代の息吹を映す週末散策=小林正弘氏
文・写真=小林正弘
清華大学法学博士 Genuineways IP Inc.パートナー
何気ない北京の日常の風景に、ふと「この街は変わり続けている」と気づかされる瞬間がある。6月中旬の週末、日差しの眩しい晴天の午後、筆者は北京の夏の風物詩であるハスや睡蓮の撮影スポットを下見するため北京の北側に位置するオリンピック森林公園へ向かった。
オリンピック森林公園への移動は渋滞の心配がなく涼しい地下鉄が便利だ。北京市にはすでに30本の地下鉄線が網の目のように張り巡らされている。今回、乗り換え時に利用した地下鉄12号線は2024年に開通。清掃が行き届いた地下鉄構内には、古代文化をモチーフにした壁面アートがあり、利用者の心を和ませてくれる。プラットホームの乗車口にはホームドアが標準設置され、電子パネルには地下鉄の各車両の混み具合がリアルタイムで表示され、細やかな気配りと公共インフラの向上が感じられた。
オリンピック森林公園に到着し、まず目を奪われたのはチャイナモバイル(中国移動)とその子会社ミグー(咪咕)主催の「ミグーAIワールドカップカーニバル」の幟とサッカー観戦ができる大型スクリーンを備えた野外特設ステージであった。AI、ロボット、クラウドゲームの体験、有名解説者によるワールドカップサッカーの実況が一体となったイベントで、多くの家族連れが青空の下で様々なアトラクションを楽しんでいた。AIによる試合解説や戦術分析、ロボットがゴールを守るPK対決など、子供も大人も楽しめるサービスを通じて、市民生活にAI関連サービスの普及を図る試みに驚かされた。
思わぬ寄り道を楽しんだ後、大自然の澄んだ空気と心地よい木漏れ日を浴びながら蓮や睡蓮の待つ湿地帯へと向かった。渓流で水と戯れる子供たち、腰まで水に浸かって子供のために魚をすくっている父親の姿が微笑ましい。湿地帯や湖には一面が蓮の葉で覆われており、蕾がふっくらと膨らんでいた。清掃員の方に開花時期を尋ねると、「来週あたりには開花するだろう」と丁寧に答えてくれた。
総面積約6.8平方キロメートル(故宮の約15個分に相当)のオリンピック森林公園の森林と湖は人工のものだが、今では306種の鳥類が確認されるなど、開園から約20年の年月をかけて独自の生態系が形成され、本物の自然へと変化を続けている。
夕闇が迫る中、中関村に最近オープンした都市公園型ショッピングモール「アートパーク(大融城)」へ向かった。高層ビルが立ち並ぶ一画に、今中国で流行しているポップマートの大型マスコット、中国式の建築物、西洋式のオープンカフェなどが同居する不思議な空間があった。その一画だけ高層ビルはなく、低層の飲食店街と約2万平方メートルの緑化公園となっており、その地下1、2階部分がショッピングモールとなっている。地下一階部分も開放式の音楽ホールのような構造になっており、若者たちが即興で行うK‐POPダンスや音楽ライブで躍動し、多くの市民が地下階と地上階から若者達のパフォーマンスを見物している。
公園の木々はLED照明で幻想的にライトアップされ、子供たちは無人店舗で稼働する接客ロボットを興味深そうに眺めていた。地下レストラン街は席待ちの人々で溢れており、筆者は3時間待ちが常態のスシローで、幸運にもカウンター席を確保し、新鮮な寿司を堪能することができた。
商業、自然、娯楽が調和したアートパークの設計理念は、「公園による活性化と都市更新」にあるという。このエリアには、筆者が留学生時代の2010年前後、フランス系大型スーパー・カルフール(家楽福)などがあり、大いに賑わっていたが、施設の老朽化やニーズ、ビジネスモデルの変化に適応できず次第に衰退していった。若者のライフスタイルに合わせ活気を取り戻したアートパークから、老朽化した都市空間を自然と歴史が調和した人に優しい近未来都市へと変貌しゆく北京と若者達のエネルギーを垣間見ることができる。日常の散歩で見かけた一つひとつの光景が、常に進化し続ける北京の今を物語り、未来を予感させるものであった。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2026年6月29日
