| japanese.china.org.cn |26. 10. 2026 |
食は広東にありー珠海ポートプラザで出会った「豚手ワンタン麺」=小林正弘氏
文・写真=小林正弘
清華大学法学博士 Genuineways IP Inc.パートナー


10月下旬、出張で広東省珠海市を訪れた。秋が深まりつつある北京を離れ、珠海に降り立つと気温は30度。海風が心地よく、南国の花々が街路を彩っている。海の向こう側には、澳門(マカオ)特別行政区のホテル群や旧市街の街並みが肉眼でもはっきりと見える。その海上には、香港特別行政区・珠海・澳門特別行政区を結ぶ全長55キロ、現在世界最長の海上大橋である港珠澳大橋が果てしなく伸びている。

出張の日程を終え、北京へ戻るフライトまでの空き時間を利用して、珠海の拱北口岸の地下にある珠海ポートプラザへ足を運んだ。ここは市場や飲食店、土産物店など約2000件の小規模店舗が集まる地下ショッピングモールだ。隣接する拱北口岸から徒歩でそのまま通関して澳門へ行けることもあり、休日には20万人以上、平日でも十数万人が訪れる人気の観光スポットとなっている。
地下1階に降りると、新鮮なエビやカニ、魚といった海鮮、野菜や果物を扱う市場が広がっている。海鮮の値段は内陸の北京に比べると2、3割ほど安く感じる。早速、現地の食生活の豊かさを実感した。店先には広東料理の名物、ローストダック(焼鴨)が吊るされている。ローストダックに目を奪われていると、「ラオバン(敬意を込めた客への呼びかけ)、できたての焼鴨、いかがですか?」と気さくな調子で店員に声をかけられた。

飲食店街には、一人49元(約1100円)で食べ放題の回転式火鍋店、店頭で店員がワンタン作りを実演しているワンタン専門店、澳門名物のタルトや広東の各種スイーツ・ドリンクを扱う店などが軒を連ね、歩いているだけで自然にお腹が空いてくる。どこで昼食をとろうか迷った末、ほぼ満席でにぎわっていたワンタン麺店「七叔公面家」に入ってみることにした。店員のおすすめで「豚手ワンタン麺」を29元(約650円)で注文。じっくり煮込まれ、とろけるように柔らかい豚手。プリプリと弾けるようなエビがたっぷり詰まったワンタン。コク深くもくどくないスープ。コシのある細麺。相性はまさに絶妙。仕事の疲れは一口食べた瞬間に吹き飛んだ。まさに「食は広東にあり」という言葉を実感する味わいだった。

「豚手」という言葉は、北京では聞いたことがない。北京では豚の前足も後足も区別せず「猪蹄(豚足の意)」と呼ぶ。調べてみると、豚の前足(豚手)は身が締まって弾力があり、赤身の割合が高く、食べてもあまりくどくない。一方の後足は脂が乗って柔らかめで、脂肪とゼラチン質が多く、もちもちとした食感が特徴のようだ。

料理に求める食感に合わせ、前足と後足を使い分ける。その繊細なこだわりの中に、長い歳月の中で磨かれた広東の食の知恵が息づいている。広東料理の奥深さを実感し、珠海ランチ散策の余韻を胸に、北京への帰路についた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2026年10月26日
