戦国時代に、竽という吹奏楽器が大好きな斉の宣王という人がいた。彼はとくに合奏が好きで、300人もの吹奏者を招いて、彼らの合奏を毎日のように楽しんでいた。

一方、南郭という人がいて彼はもともとを吹くことなどできなかったが、この情報を耳にすると、「これは大もうけのチャンスじゃないか」と考え、宣王のところに行って、「私は有名な竽の吹奏者です」とうそをついて自己推薦した。宣王は、彼の言うことをまったく疑わず、すぐに彼を300人の楽隊に入れた。その後南郭は楽隊が合奏するとき、いつも真剣な顔をして吹くふりをして、給料をただでせしめた。

こうして何年間も過ぎていった。あるとき合奏が大好きだった宣王がなくなり、彼の息子の湣王が王位を継いだ。湣王も竽が好きだが、合奏ではなく独奏を好んだ。彼は300人の吹奏者を一人一人順番に吹かせることにした。こうなると、南郭はたいへん焦り、もうこれ以上ここでごまかし続けることはできないと思って、荷物をまとめて夜逃げしてしまった。