王浩=文
北京市は、第二十九回オリンピックの終了後まもなく、第十三回パラリンピックを迎える。北京オリンピック組織委員会は二つの大会を運営するにあたって、「どちらも同じように素晴らしいものに」という理念を掲げている。中国では今、数百人におよぶ選手たちがパラリンピックに向け、熱心に練習中だ。パラリンピックが北京で開催されることにより、中国社会の障害者に対する関心も高まっている。
夢に向かって努力
パラリンピックまで二百日あまりとなったある日、北京市南部の大興区にある「北京市障害者スポーツ訓練・職業技能訓練センター」のプールでは、楊博尊さん(二十一歳)が二十人以上の仲間たちと一緒に練習に励んでいた。
目の不自由な楊さんは天津からやって来た水泳選手。プロの選手になって二年あまりの間に、国際的な障害者の大会で金メダルを十四枚も獲得している。プールの中でゴールは見えないが、まもなくだと察することはできる。コーチも教えてくれる。
楊さんは子どものころ、音楽やスポーツが大好きで、勉強もトップクラスの優秀な生徒だった。しかし高校生のときに急性の緑内障をわずらい、視力を失った。そのときから彼の生活は大きく変わった。楊さんは当時を振り返って、「生きていくことにやるせなさを感じました。しかも、そのようなどんよりとした気持ちから抜け出すこともできませんでした」と話す。
それでも両親や友人たちの温かい支援のもと、その困難な時期を乗り越えた。「周囲の人の愛が僕を支えてくれた。ちゃんと独り立ちし、他人を困らせてはならないと思ったのです」
音楽が好きだった楊さんは、地元のライブハウスでDJをしたり、曲を作ったりした。その後、中国身体障害者連合会(身障者連合会)に加入し、友人に勧められて水泳を始めた。彼には水泳の才能があったため、上達が速く、各種の大会で優秀な成績をおさめた。
楊さんと話をしていると、自分に自信を持ち、前向きであることが感じられる。
北京パラリンピックでは、百メートル背泳ぎと四×百メートルリレーの自由形などに出場する予定だ。「パラリンピックに出場することは、すべての選手にとって最高の夢です。僕たちはしっかりと準備をしていますが、結果についてはあまり考えていません」と話す。楊さんはまた、自分の体験をもとにした歌も作り、パラリンピックのテーマソングに応募した。
大興区のスポーツ訓練センターで練習に励んでいる選手たちはみな、楊さんのように前向きで明るい。身障者連合会の賈勇・理事兼体育部主任によると、北京パラリンピックには三百五十~四百人の中国人選手が参加資格を得られる見込みだという。開催まであと二百日あまり。彼らは最後の準備段階に入っている。
バリアフリー化が進む
二〇〇四年九月に設立された「北京市障害者スポーツ訓練・職業技能訓練センター」では、毎年、三万人以上の障害者がスポーツ訓練や職業訓練を受けている。身障者連合会の統計によると、ここ数年、毎年二百万人以上の障害者が各種スポーツ大会に参加している。また、スポーツ訓練センターも年々増えていて、国家級をはじめ、中国全土に省級のスポーツ訓練センターが十八カ所設立された。
パラリンピックの開催準備は中国国内と国際社会から広く支持を集め、北京のバリアフリー化を促進している。〇七年には、百三十の道路、千百八十の交差点、四百六十の銀行、二十の郵便局、五十の大学、百九の学校がバリアフリー化された。
北京オリンピック組織委員会執行副主席でもある身障者連合会の湯小泉・副主席は、「北京空港もバリアフリー化の最中です。パラリンピックの選手たちを北京に迎え入れるころには、大きく改善されていることでしょう」と話す。
このほか、重点ホテルや地下鉄などの交通機関、万里の長城や故宮などの観光地でもバリアフリー化が進んでいる。湯副主席によると、中国のバリアフリー化は着手が遅かったため、すべての場所をすぐに国際レベルにまで高めるのは難しい。しかし、パラリンピックの準備を通して、できるだけはやく国家基準に合わせたいとしている。「パラリンピックが開催されるときには、バリアフリーのノンステップバスや地下鉄、都市鉄道などを使って、障害を持つ観客を会場に運ぶことができるようになります。また、障害者たちが買い物に出かけたり、レストランへ食事に行ったり、ホテルに泊まったり、公園や観光地へ遊びに行くのも便利になることでしょう」
北京パラリンピックでは三万人のボランティアが必要だとされている。オリンピック、パラリンピックのボランティアの登録はすでに七十三万人を超え、そのうち八〇%以上の人が両方の大会でのボランティアを希望している。ボランティアの研修も始まった。選手たちのためにすばらしいサービスを提供してくれることだろう。
九月六日から始まる北京パラリンピックでは、百五十の国から四千人の選手と五百人のコーチ、そして多くのメディア関係者を迎える。北京のバリアフリーの実力が試されるよい機会だ。湯副主席は、北京はすでに準備が整っていると自信をのぞかせる。
「人民中国」により 2008年2月1日
人民中国2008年2月号目次
■特集 「改革・開放」30年の軌跡と未来
鼎を鋳た農民/転職した労働者
民営企業家/「海亀」の起業家/証券マン
農村から出た学者/専門家インタビュー
外国人の眼に映った「改革・開放」
中国が「改革・開放」政策を始めてから今年で三十年。閉鎖的な計画経済から、開放的な社会主義市場経済に移行した中国は、驚異的な経済成長を遂げた。 この激動の三十年を、人々は懸命に生きてきた。そしてこれから、どう生きようとしているのか。農業、工業など分野に生きる六人の物語から、中国の未来がはっきりと見えてくる。
■社会・経済
★チャイナ・パワーを読み解く②
中国企業の海外展開と日本
★ 北京 交通新時代へ
交通基盤の建設を猛スピードで進めているにもかかわらず、急速な経済成長と本格的なマイカー時代の到来により、深刻な交通渋滞に陥る北京。オリンピックの開催を目前に控え、のろのろと一向に進まない車の流れを何とかしようと努力している最中だ。地下鉄の建設、公共交通機関の運賃の値下げ、幹線道路の整備……交通の発展は市民の生活にもさまざまな変化をもたらしている。
★わたしの一日 心臓血管病病院の婦長 白氷氷さん
患者と仕事に尽くすナイチンゲール
■伝統・観光
★慈覚大師円仁の足跡を尋ねて⑭
五台山での円仁(3)
五台巡礼
★茶馬古道の旅⑫ 天上の湖 ラウ湖の朝
★太極拳よもやま話① 太極拳の発祥地 陳家溝(2)伝承
すべての流派の源である「陳式太極拳」がどのように受け継がれ、社会に普及していったかを述べる。もともとは陳氏の家伝の拳法であったが、歴代の大家たちが少しずつそれを体系化し、一門の垣根を越えて広く伝えるようになった。資料として、「陳式」から派生した別の流派も簡単に紹介。
★中国茶文化そぞろ歩き 第7回
正山小種を訪ねる
■中国・日本
★ 里帰りした鉱物顔料
★ 周恩来総理と中日関係(中)
生誕百十周年にあたって
★放談ざっくばらん 上海が選んだ日本人タレントと私
二人三脚で夢に向かって
★@chinaわたしと中国 肌で感じた文化交流の力
■カルチャー・スポーツ
★北京五輪いよいよ 障害者が輝く
北京パラリンピック
北京市は、第二十九回オリンピックの終了後まもなく、第十三回パラリンピックを迎える。北京オリンピック組織委員会は二つの大会を運営するにあたって、「どちらも同じように素晴らしいものに」という理念を掲げている。中国では今、数百人におよぶ選手たちがパラリンピックに向け、熱心に練習中だ。パラリンピックが北京で開催されることにより、中国社会の障害者に対する関心も高まっている。
★名作のセリフで学ぶ中国語
中国の植物学者の娘たち(The Chinese Botanist's Daughters )
(植物园)
★快楽学唱中文歌♪
厖龍『両只胡蝶』
●CHINA NOW 中国はいま
ガソリン価格の高騰 庶民は対策に知恵しぼる
パラリンピック控えた北京に 盲導犬ラッキーがやってきた
「金買い」がブームに 中産階級や若者も投資
1億元が当たったら 世界一周など夢さまざま
サッカーW杯アジア予選 勝利で迎えたい春節
世界から注目あびる 奇抜な北京の建築群
●トピックス「情報の扉」
【文化】醤文化博物館、紹興にオープン
【観光】新潟市、天津で観光説明会を開催
【科学技術】中国企業、百二項目で世界記録
【観光】中日三万人の観光交流活動
【交流】「中日文化交流写真展」北京で開催
【交流】中日学生の新年会、北京で開催
【社会】就職差別を禁じた『就業促進法』施行
【書籍・エンタメ情報】TVドラマ『士兵突撃』
【書籍・エンタメ情報】書籍『老外的中国情結』
★窓・編集後記
〔とじ込みページ〕
○中国の切手 「中国初の月探査成功記念」
○三国人物の隈取り② 蒋幹
○読者アンケート
★中国語新辞苑
啃椅族30 两会博客31 求学房32 游贿33
墓产经济34 炫富35 奔奔族40 证奴41
蜜月保姆54 高薪跳蚤55 点映76 抱抱团77
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