紅海は神がエジプトに賜ったプレゼントで、ここはナイル川から遠く離れており、古代エジプトの悠久で燦然たる文明とは関わりがない。そのため船で紅海の奥に向かう際に、観光地のガイドブックを持つ必要がなく、頭を使う必要もなかった。自分の両目さえあれば、この尽きることなき青い海と晴天を味わうことができた。
砂漠の港が視界の中で遠のくと、海水もエメラルドグリーンから紺碧に変わった。時おり白い帆が目の前を漂い、孤独の美を感じさせた。
多くの人にとって紅海の最大の魅力はダイビングだろう。ここの海底は水上の風景よりもいっそう彩り豊かだ。
私たち八人は底がガラス張りの船に乗り、果てしなく広がる紅海でサンゴ礁を探した。こうして一滴の水もない船内で、魚たちと共に泳ぐ美しい時間を体験できた。筆者の心は海底に移り、無数の魚たちが肩をかすめていった。今も昔も変わらぬ海底天国の夢を見た。