――2005年3月8日に、第10期全人代第3回会議にて
王兆国全人代常務委副委員長
代表の皆さん
私は全国人民代表大会常務委員会の委託を受けて、『反国家分裂法(草案)』について説明を行うことにする。
一、 制定の必要性と実行可能性
台湾問題を解決し、祖国統一の大業を完成することはわれわれの党と国家の三大任務の一つである。長年らい、台湾海峡両岸の関係を発展させ、国家の平和統一を促すため、われわれはたゆまざる努力をはらってきた。しかしながら、ここ一時期以来、台湾当局は「台湾独立」を企む分裂活動の推進に拍車をかけている。エスカレートするさまざまな「台湾独立」を企む分裂活動の中で高度の警戒心を保たなければならないのは、台湾当局がいわゆる「憲法」と「法律」の形を利用して、「公民投票」、「憲政改造」などの方法で、「台湾独立」を企む分裂勢力の国家を分裂させるねらいを達成するためにいわゆる「法律」的支持をおこない、大陸部と台湾が同じく一つの中国に属する事実を変え、台湾を中国から分裂させようと企んでいることである。事実が示しているように、「台湾独立」を企む分裂勢力の国家を分裂させる活動は中国の主権と領土保全を大きく脅かし、平和統一の前途を大きく破壊し、中華民族の根本的な利益を大きく損ない、台湾海峡地域ひいてはアジア・太平洋地域の平和と安定を大きく脅かすものとなっている。そのため、『反国家分裂法』の制定は必要かつ時宜にかなったことである。
ここ数年来、広範な幹部と大衆、社会各界の人々と海外の華僑同胞が法律の手段で「台湾独立」を企む分裂勢力の国家を分裂させる活動に反対し、それを押さえ込み、祖国統一の実現を求める声はますます高くなり、全人代の代表たちは台湾問題に対し立法のための議案と建議をたくさん提出し、全国政協委員たちも台湾問題に対し立法のための提案をたくさん提出し、これらすべては本法の制定が人民大衆の願いと合致するものであることを示している。現在、本法を制定する条件はすでに整っているのである。憲法の中では、「台湾は中華人民共和国の神聖な領土の構成部分である。祖国統一の大業を達成することは、台湾同胞を含む中国人民全体の神聖な責務である」と明確に規定されている。これは本法を制定する憲法のよりどころである。三世代の中央指導部、特に鄧小平、江沢民両氏の台湾問題解決に関する思想、中央の一連の台湾に対する方針・政策は本法を制定するための明確な基本的構想と政策的よりどころとなっている。法学専門家と対台湾実務専門家が行ってきた関連の研究とその成果も本法の制定のために一定の条件を作り出した。
二、本法起草の原則と草案の形成
本法を制定する上での全般的な原則は、鄧小平の理論と「三つの代表」(中国の先進的な生産力発展の要求、中国の先進的な文化の前進方向、中国の最も広範な人民の根本的な利益を代表すること)という重要な思想を導きとし、憲法をよりどころとし、対台湾の仕事における中央の政策と方針を貫徹し、確固として「台湾独立」を企む分裂勢力の国家を分裂させる活動に反対し、それを押さえ込み、祖国の平和統一を促すテーマをめぐって、われわれの最大の真心をこめて最大の努力を尽くして平和統一を目指す一貫した主張を充分に具現するとともに、全中国人民が国の主権と領土保全を守りぬき、「台湾独立」を企む分裂勢力がいかなる名目、いかなる形で台湾を中国から分裂させることを絶対に許さない共通の意志と断固たる決意を表明するものである。
本法の制定は必ず上述の原則に基づき、各方面の意見に充分に耳を傾け、厳格に法律の定めたプロセスにのっとらなければならない。この法律をりっぱに制定するために、本法を起草する作業グループはここ数年来の全人代代表、全国政協委員、社会各界の人々と海外の華僑同胞の台湾問題に対して立法する意見と建議を真剣に検討し、呉邦国委員長はさらに相前後して四つの座談会を主宰、開催し、一部の省(直轄市)の責任者、法学専門家と対台湾実務専門家、中央関連部門の責任者および一部の台湾・香港・澳門の同胞および海外の華僑同胞たちの意見をそれぞれ聴取した。各方面からの意見をまとめ、検討することを経て、『反国家分裂法(草案)』(意見を求めるための原稿)を起草した。胡錦涛総書記は各民主党派中央と全国工商業者連合会の責任者および無党派の人々が参加する座談会を主宰、開催し、呉邦国委員長は法学専門家と対台湾実務専門家の座談会を開催し、草案について意見を求める原稿に対する意見を聴取した。それを踏まえて、草案について意見を求める原稿に対するさらなる改正を経て、『反国家分裂法(草案)』を形成した。第10期全人代常務委第13回会議は当該草案をじっくり審議し、会議に出席した常務委のメンバーは全員すべてが賛成という形で『反国家分裂法(草案)』の議案を可決し、今大会に提出して審議を求めることを決定した。
三、草案の主な内容
(一)本法の立法の主旨と適用範囲
当面の台湾海峡両岸関係の情勢及びその発展の趨勢から見て、「台湾独立」を企む分裂勢力の国家を分裂させる活動に対し、必ず断固として反対し、押さえ込まなければならず、さもなければ、台湾海峡地域の平和と安定を脅かす根源を取り除くことは難しく、海峡両岸がともに発展をとげ、ともに繁栄する歴史的チャンスはぶち壊され、台湾同胞の利益と福祉は葬り去られ、中華民族の根本的な利益が損なわれることになる。そのため、草案は冒頭で「台湾独立」を企む分裂勢力の国家を分裂させることに反対し、それを押さえ込み、祖国の平和統一を促し、台湾海峡地域の平和と安定、国家の主権と領土保全、中華民族の根本的な利益を守るために、憲法に基づいて本法を制定することを規定している。こうして規定したことは本法の立法の主旨を明らかにするものであり、また本法の適用範囲を明らかにするものである。
(二)台湾問題の性質について
台湾問題の性質を明らかにすることは台湾問題を解決する基点である。
中国共産党第16回大会は、「世界には一つの中国しかなく、大陸部と台湾は同じように一つの中国に属し、中国の主権と領土保全は分割を許さない」と明確に打ち出した。これはわれわれが台湾に対する仕事の原則的立場であり、これは全中国人民に支持されている。台湾問題は前世紀40年代後半の中国の内戦によって残された問題である。さまざまな複雑な要因により、台湾海峡両岸は今になっても統一されておらず、しかし、台湾が中国の一部分である地位と、大陸部と台湾が同じように一つの中国に属する事実は変わっていない。台湾問題を解決し、祖国統一の大業を達成することはまったく中国の内政であり、台湾同胞を含む中国人民全体の根本的な利益にかかわることである。これに基づいて、草案は次のように規定している。
1、中国共産党第16回大会の関連の主旨を具現するとともに、国家の主権と領土保全を守ることは台湾同胞を含む中国人民全体の共通の義務であり、台湾は中国の一部分であり、国は「台湾独立」を企む分裂勢力がいかなる名目、いかなる形で台湾を中国から分裂させることを絶対に許さないと明確に規定している。
2、台湾問題は中国の内戦によって残された問題である。台湾問題を解決し、国の完全な統一を実現することは中国の内部の事柄である。この問題において、われわれはいかなる外国勢力の干渉も受け入れない。
3、祖国統一の大業を達成することは台湾同胞を含む中国人民全体の神聖な責務である。
(三)平和的方式で国の統一を実現することについて
一つの中国という原則を堅持することは台湾問題解決の揺るがすことのできない基礎である。一つの中国を原則とすることが具現しているのは大陸部と台湾が同じように一つの中国に属するという事実であり、追求しているのは平和統一の目標である。「平和統一、一国二制度」はわれわれが台湾問題を解決する上での基本的方針である。平和的方式で国の統一を実現することは台湾海峡両岸の同胞の間の感情的融合に役立ち、台湾海峡地域ひいてはアジア・太平洋地域の平和と安定に役立ち、中華民族の偉大な復興の実現に役立ち、台湾同胞を含む中国人民全体の根本的な利益に最も合致するものである。「一国二制度」という構想は祖国の統一を実現し、国の主権と領土保全を守る原則性を具現するものであるとともに、台湾の歴史と現実を充分に配慮し、高度の弾力性を具現するものでもある。そのため、草案は次のように規定している。一つの中国という原則を堅持することは国の平和統一を実現する基礎である。平和的方式で国の統一を実現することは台湾海峡両岸の同胞の根本的な利益に最も合致するものである。国は最大の真心をこめて、最大の努力を尽くして平和統一の実現を目指す。国が平和統一を実現した後、台湾は大陸部と違った制度を実行し、高度に自治を行うことができる。
台湾海峡地域の平和と安定を維持し、海峡両岸の共同の発展と繁栄を促すことは海峡両岸の同胞の共通の願いであり、海峡両岸の同胞の共通の利益と合致するものである。そのため、草案は次のように規定している。国は次のような措置をとって台湾海峡地域の平和と安定を維持し、海峡両岸間の関係を発展させる。(一)海峡両岸の住民の間の往来を奨励し、促進し、相互間の理解を増進し、相互間の信頼感を増強する。(二)海峡両岸間の経済交流と協力を奨励し、促進し、直接の通信・通航・通商を実現し、両岸間の経済関係を密接にし、互いに実益をもたらすようにする。(三)海峡両岸間の教育、科学技術、文化、医療衛生、スポーツの交流を奨励し、促進し、ともに中華文化の優れた伝統を発揚させる。(四)海峡両岸が共同で犯罪を取り締まることを奨励し、促進する。(五)台湾海峡地域の平和と安定を維持し、両岸間の関係を発展させることに役立つその他の活動を奨励し、促進する。国は法律によって台湾同胞の権利と利益を保護する。
国の平和統一の実現は台湾海峡両岸間の話し合いと交渉の促進を必要とし、話し合いと交渉のために広い空間を提供することを必要とする。一つの中国という原則を堅持する基礎の上では、どんな問題でも話し合うことができる。草案は次のように明確に規定している。一、国は台湾海峡両岸間の平等な話し合いと交渉を通じて平和統一を実現することを主張する。話し合いと交渉は段取りを追って、段階を分けてすすめることができ、やり方は弾力的で多様なものであってもよい。二、台湾海峡両岸は正式に敵対状態に終止符を打ち、両岸間の関係を発展させる企画、平和統一の段取りと按配、台湾当局の政治的地位、台湾地域の世界におけるその地位と相応の活動空間および平和統一の実現と関連のあるその他のいかなる問題について話し合いと交渉を行うことができる。
(四)非平和的方式で「台湾独立」を企む分裂勢力の国を分裂させることを阻止することについて
われわれは一貫して平和的方式で国の統一を実現することを主張してきた。台湾海峡両岸の同胞はすべて中国人であり、台湾同胞はわれわれの血を分けた兄弟であり、われわれよりもさらに平和的方式を通じて国の統一を実現することを願うものはいない。平和統一にたとえ一縷の希望しかなくても、われわれも最大の努力を尽くしてそれを勝ち取るよう努め、絶対にあきらめることはありえない。同時に、必ず明確にしなければならないのは、国の主権と領土保全を守ることはわれわれの国、民族の核心的利益であり、台湾同胞を含む中国人民全体の共同の義務であり、われわれは従来から武力使用を放棄することを約束したことはなく、いかなる主権国家でも国を分裂させる行為を容認することはできず、必要な方式によって国の主権と領土の保全を守る権利がある。
非平和的方式をとって国の分裂を阻止し、国の主権と領土の保全を守ることはわれわれの平和統一への努力が完全に無効となった状況の下で、やむを得ず行う最後の選択である。草案は、「台湾独立」を企む分裂勢力がいかなる名目、いかなる方式で台湾を中国から分裂させる事実をつくり出し、あるいは台湾を中国から分裂させるに至らせる重大な事件が起こり、あるいは平和統一の条件が全く失われた場合、国は必ず非平和的方式及びその他の必要な措置をとって国の主権と領土保全を守らなければならないと規定している。草案は同時に、非平和的方式およびその他の必要な措置をとる際、本法は国務院、中央軍事委員会が決定を行い、それを組織、実施するとともに、ただちに全国人民代表大会常務委員会に報告することを授権している。
ここで強調しなければならないのは、もしも「台湾独立」を企む分裂勢力があくまで我意をおし通し、われわれに最後の選択を行うことを余儀なくさせ、非平和的方式及びその他の必要な措置をとるに至ることになれば、それは決して台湾同胞に対するものではなく、あくまで「台湾独立」を企む分裂勢力に対するものである。草案は、本法の規定にしたがって非平和的方式及びその他の必要な措置をとる場合、それを組織、実施する際、国は最大の可能を尽くして台湾の一般住民と台湾に在住する外国人の生命と財産の安全およびその他の正当な権益を保護し、その損害を減らし、同時に国は法律によって中国のその他の地域にある台湾同胞の権利と利益を保護することも明確に規定している。
『反国家分裂法(草案)』と以上の説明を審議してもらいたい。
「チャイナネット」2005年3月