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北東アジアに安全の新モデルを

中国人民外交学会は、1949年12月に周恩来総理の指導の下に設立された。民間外交を研究・従事する中国唯一の遺構である。長く、周総理が名誉会長をつとめた。現在の楊文昌会長は外交官出身。  この半世紀、北東アジアの安全にかかわる情勢は一貫して複雑であり、新旧の矛盾が交錯し、不安定要素が非常に多い。一面では、冷戦時代に形成された脆弱な平和の局面が維持されてきたが、もう一面では第二次世界大戦以後に発生したこの地域の大小の戦争と衝突が残した傷跡と後遺症が、まだ完全には治癒していない。この地域に存在している各種の隠れた危険は、短期間にうまく解決するのは難しい。とくに昨年発生した朝鮮半島の核危機問題以来、北東アジアはすでに、中東地域に次いで難しい問題の最も多い地域になった。

存在する主な危険は

この地域に存在する、安全にかかわる隠れた主要な危険は――

①朝鮮半島の核危機は、今年初めになって真っ暗なトンネルに光明が差して来たにもかかわらず、米朝間の政治的相互信頼が非常に脆弱であり、交渉に実質的な進展があるかどうかは、現在、肯定的な判断を下すのは依然として時期尚早である。

②米国と日本の二大経済強国は、絶えず安保同盟を強化しており、北東アジアのその他の国々の安全に対して圧力となっている。自分の安全の追求が他人に不安を感じさせるこうした振る舞いは、この地域の恒久平和を形成するうえで不利である。

③朝鮮半島の南北の軍事的対峙の情勢は緩和されたとはいえ、双方が威嚇しあい、抑制しあう軍事演習が依然、頻繁に行なわれている。朝鮮半島の脆弱な平和の中に緊張要因はなお存在し、南北の統一の前途は依然、見通しが立たない。

④国家の領土や海洋権益をめぐる争いはひっきりなしに発生しており、措置をあやまれば、新たな危機の導火線になり得る。

このほか、陳水扁を頭とする「台湾独立」勢力は「台湾独立」の理念を放棄せず、絶えずゴタゴタを引き起こし、台湾海峡やこの地域の平和に重大な脅威をつくりだしている。

欧州モデルは適応できない

私が北東アジア地域の新しい安全モデルを打ちたてる構想を提起するのは、この地域が朝鮮戦争以来、安全メカニズムが形成されたことがなく、イデオロギーを基礎として打ちたてられた一部の国々の安全同盟が、この地域の恒久平和を保障することができなかったからである。北東アジア地域の特殊な歴史的背景から、世界のほかの地域の安全モデルをこの地域に適用することはできず、この地域が多様性を持っているという特徴に基づいて、関係国が受け入れられるプランを追求しなければならない、と私は考える。

冷戦が終わり、欧州の安全情勢には重大な変化が起こった。当面、欧州一体化のプロセスは一時的に挫折したにもかかわらず、新しい欧州を平和的に建設しようという要望はすでに、全ヨーロッパ大陸の主旋律になっている。

これに比べて北東アジアの安全情勢は楽観できない。その理由は第一に、すでに述べた大きな矛盾がしばらくはうまく解決することが難しいからであり、第二に北東アジア各国は歴史や文化的背景が違い、経済発展の水準も大きな差が存在するからである。このため、この地域は欧州のように一体化に向かう条件を持っていないのである。

昨年9月19日、北京で開かれた第4回の「六者会談」が終わり、共同声明が発表された  しかし、この地域のすべての国が平和と発展を渇望している。自国の経済や社会の発展にとって有利な平和的な環境を必要としている。このため、北東アジアは、この地域のすべての国を制約する新しい安全モデルを急いでつくる必要がある。 平和条約の締結を  将来の北東アジアの安全の新モデルに対する私の初歩的な構想は、朝鮮半島の核危機問題をめぐる「六者会談」を契機に、この地域の平和と安全を討議するサミットを開き、『21世紀北東アジア平和条約』を締結するというものである。

各国首脳のサミットを開く目的は、北東アジアの国々の多様性に基づいて、この地域の恒久平和を守る基本原則を提起することである。このサミットを基礎に、各国政府は専門家を任命して、『21世紀北東アジア平和条約』の具体的な条項を制定する。そして地域的な国際会議の方式でこれを討論、可決し、それを各国政府に提出し、各国政府が署名して発効するとともに、国連に提出し、記録に残す。この新条約が締結されれば、次のような効果が発生する。

①この地域に存在する一連の歴史が残した問題の温度がさらに下がり、この問題の最終的な平和解決のために、条件を創り出す。

②この地域の国々の、イデオロギーの違いによって生まれる対抗意識を大いに緩和する。

③比較的長持ちする平和的環境は、この地域の経済の融合に有利となり、米国およびすべての東アジアの国々、大洋州の国々はそこから利益を得る。地域経済の融合の深まりは逆に、地域の平和と安全に積極的な影響をもたらすに違いない。 四大国がカギ握る  北東アジアの平和モデルを造り上げるには、中国、米国、日本、ロシアなど、この地域にかかわる大国が率先垂範する必要があり、同時に、この地域のすべての国々が積極的に参加する必要がある。

率直に言って『21世紀北東アジア平和条約』を締結するのは決して容易なことではない。しかし、異なる価値観を持つこの地域のすべての国々にとっては、努力に値することである。

指摘しておかなければならないのは、こうした新モデルが形成されるかどうかのカギは、中、米、日、ロの四大国がどのような政治的決断をするかにかかっている。この地域の大国は、北東アジアの長期的な平和と安定が、自国の長期的な利益に合致するばかりでなく、この地域のその他の国々に対しても責任を負っていることを示すということを認識しなければならない。

従って、私は大胆にこう提案したい。『21世紀北東アジア平和条約』の構想を正式に、中、米、日、ロの戦略対話メカニズムの中に組み入れ、だんだんに指導者の対話の議題に組み入れるべきである。

中国と日本は、北東アジアの二つの大国であり、この地域の恒久平和のために努力する責任があることを指摘しておかなければならない。(中国人民外交学会会長 楊文昌。中国人民外交学会は、1949年12月に周恩来総理の指導の下に設立された。民間外交を研究・従事する中国唯一の遺構である。長く、周総理が名誉会長をつとめた。現在の楊文昌会長は外交官出身)

「人民中国」より2007年9月24日

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