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japanese.china.org.cn |14. 03. 2022

全人代「政府活動報告」を読む

タグ: 政府活動報告
中国網日本語版  |  2022-03-14

「政府活動報告」を読む中での「気づき」 

文=木村知義 

 


 「政府活動報告」(以下「報告」)を読む際、たとえば経済の専門家や中国研究者それぞれに読み解きや大事な「見立て」があるでしょうが、ここでは少し視角を変えて、私なりにどんな「気づき」があったのか、限られた論点のみですが、述べてみたいと思います。 


35×17=595?! 


 そこでまず、「35×17=595」、この数字からです。

 

 一体何を言い出すのだとお思いになるでしょうね。でも、少し我慢してお読みください。

 

私は、中国で何か大事な「イベント」がある時は、CCTVをLiveで視聴することを習慣にしています。 


 3月5日、午前9時(北京時間)、全人代開会。人民大会堂の議場を埋めた全国からの代表の表情に注目しました。気のせいか、一昨年、昨年と比較してなんとなくゆとりが感じられ、やはりコロナを乗り越えてきた自信がそうさせるのだろうな、と思ったのでした。しかし、李克強首相の「報告」が始まって少し時間が過ぎたころから議場全体から緊張感が伝わってくるように、私には感じられたのでした。あらためて「報告」を読んでみてわかりました、その意味が。 


 「報告」では、まず、一年を振り返って達成した成果とそこから見えた課題が語られます。「この1年、複雑で厳しい国内外情勢と多くのリスク・試練を前に、全国が一丸となって奮闘努力し、感染症対策と経済・社会発展を統一的に進めた結果、年間主要目標・任務は比較的よく達成され、第 14 次 5 ヵ年計画は良い スタートを切り、わが国の発展は新たに大きな成果をあげた」と述べて、具体的な数字なども挙げながら成果について整理し、詳らかに語っています。その後です、Liveで見た「緊張感」に通じるくだりに出会ったのは。 


 「われわれは成果を肯定する一方、目の前の課題と試練をはっきりと認識している」として、依然として地球規模で感染が続いていることに始まり、世界経済回復の原動力が不足していることなど「外部環境」がいっそう複雑化して厳しさを増し、不確実性は高まる一方としたうえで「わが国の経済発展は、需要の縮小、供給体系への衝撃、市場期待の後退という三重の圧力にさらされている」と、中国が直面している「厳しい状況」について踏み込んで語っていきます。それが日本語版では1行35字で17行、595文字に及んでいるのです。 


 ここまで率直、直截に困難を語ることに、私は、胸を衝かれました。なぜかと言えば、「困難」を語ることができるというのは、強さだからです。ここまで中国はたくましくなったかという感慨を抱きました。 


「憂患意識を高め」とは 


 そして「われわれは、憂患意識を高め、課題と試練に向き合い、全力で活動に取り組み、人民の期待に確実に応えなければならない」と結んでいます。この「憂患意識を高め」という表現に、私は、エッ?と立ち止まりました。この言葉にまったく馴染みがなかったからです。でも、漢字というのは面白いもので、「憂患意識」という4文字を眺めているだけでなんとなくわかるような気がしてくるので不思議です。しかし調べてみてとても深い発見がありました。 


 中国の外文出版社によって2016年に上梓された「美丽中国:解读2050中国生态现代化」(日文)という書物があります。そこでは「中国の伝統文化を『憂患文化』という人がいる。中国の伝統的な人文・文化における憂患意識は、先見の明がある理性的思考であり、現在の人類に大いに役立つ」と述べられていて「うまずたゆまず、職責を果たして、自発的な積極性を発揮し、問題を未然に防ぎ、それによって危難の到来を避けるように戒めた」言葉だというのです。また、「憂患意識」は「歴史的責任感から出発し、潜在する危機に対する洞察と予防であり、つまり『詩経』で言うところの『転ばぬ先の杖』であり、『易経』が言う『危険を考えてそれを予防する』ということである」とも記されていました。古代中国から脈々と息づく「ものの見方、考え方」であるとともに困難や危機に立ち向かう私たちのあり方を諭す言葉であることを知ったのでした。まさに大きな気づきであり感動でした。 


「注目」の成長率目標に何を見る?! 


 さて、中国が取り組む政策について網羅して詳細に語っている「報告」ですが、日本のメディア報道に接するとき、「興味はそこだけなの?!」と言いたくなる経済成長率の数値目標についてです。ご存じのように今回は「5.5%前後」としています。昨年の「6%以上」から「引き下げた」、「30年余りで最低の目標」とする一方、「多くのエコノミストが予想していたより高めの目標」とするもの、「前年より引き下げた。それでも目標達成は容易ではない」などなど、「一体どっちなんだよ」と冗談さえ言いたくなるメディアの報道ぶりでした。 


 そんななかで、国際通貨基金(IMF)が中国の今年の成長率を4.8%と見込んでいるのに対して「中国の野心的GDP成長率目標、苦境の世界経済を幾分後押しも」と伝えた「ブルムバーグ」の報道に、ハッとさせられました。 


 中国の掲げる数値目標が高いか低いかというありきたりの「言挙げ」ではなく、いま「苦境」にある世界経済を「後押しする」可能性があるという視界の広がりが大事だと気づいたのです。中国経済の成長が世界経済の成長にどれぐらい貢献しているかを測る数値がさまざまに示されていますが、「今後5-10年間、世界の経済成長に対する中国の寄与度は25%から30%前後」(中国経済体制改革研究会遅福林副会長:人民網2020年11月30日)というように、いまや中国が世界にとって最大の「成長エンジン」の地位にあることは確かです。この気づきは非常に重要な視点だと思いました。 


共に「困難」に立ち向かい、共同発展の道へ 


 そして、サプライチェーンをはじめ、世界は相互依存を深める時代となっています。世界経済への「貢献度」にとどまらず、中国が掲げる「目標」が世界にどうかかわるのかという視界の広がりと合わせて、中国が語る「困難」はまさに私たちすべてにとっての「困難」だという「気づき」に立って、共に手を携え、困難、課題に立ち向かう契機にしていくという「読み方」が欠かせない時代になっていると痛感したものです。中国の成長を応援することが私たちの成長につながり、私たちの発展が中国の発展につながるのだという、共同発展の意識の共有と協力、協働の大切さを知るということでもあるでしょう。 


 幾多の困難があるとしても勇気をもってそれらを乗り越え、民生を第一として「人民の素晴らしい生活への憧れを一つ一つ現実のものにしていかなければならない」と語りかける今回の「報告」に、人間を大切にする温もりと政策の実現に向けたなみなみならぬ覚悟を感じ、胸を打たれました。 


 「政府活動報告」というと何か堅苦しい文書でとっつきにくいとお思いになるかもしれませんが、「中国の今の姿」、「生きた中国」を読み解くための絶好の「読み物」だと言えるのではないか、そして世界の共同発展の力にしていくためにも、ぜひ一緒に読み、深める営みをと呼びかけたいと思ったのでした。 


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