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japanese.china.org.cn |15. 09. 2023

どのような「再グローバル化」が必要か?

タグ: グローバル化 貿易 ビジネス 意思決定
中国網日本語版  |  2023-09-15

 世界貿易機関(WTO)は12日に発表した年間世界貿易報告書の中で、「貿易及びビジネスの断片化の兆し」が出始めており、世界範囲で「国際貿易の成長と発展を脅かしている」とした。WTOのチーフエコノミストが作成したこの報告書は、「再グローバル化」(リ・グローバリゼーション)を主張した。実際にはこの報告書の発表前に、各国及び地域の経済・貿易分野の多くの専門家及び学者、意思決定機関、その他の関連機関が長年に渡り、グローバル化に生じうる脱グローバル化と断片化の現象に強い懸念を示してきた。現在のグローバル化が直面している挑戦に対するWTOの警告は時宜にかなっており、世界の経済・貿易が向かう先について警鐘を鳴らした。

 次の3つの基本的な問題を整理しておく必要がある。まずは「なぜ今まで」で、すなわち第二次大戦後の国際経済・貿易の秩序がなぜ今まで維持されたかということだ。次に「なぜ今になり」で、すなわち脱グローバル化と断片化という現象がなぜ今になり既存の国際経済・貿易秩序に強い衝撃を及ぼしているのかということだ。それから「なぜここから」で、すなわちこれらの現象がなぜ米国の現在の中国への抑圧から生まれているのかということだ。

 (一)「なぜ今まで」。第二次大戦後に世界は回復し、成長した。現在の国際経済・貿易ルール及び秩序は全体的に、米国を中心とする西側陣営が作ったものだ。言い換えるならば、以前のグローバル化は西側のルールと意義に基づくグローバル化だった。特にベルリンの壁の崩壊、旧ソ連の解体の後、世界の二極化された政治構造は速やかに米国主導で欧州が追随する一極政治構造になった。

 特に新たに独立した東欧諸国は長期に渡り、厳しい政治の変革と経済の苦境といった難題を抱えた。さらにその後各地及び世界で数回の金融・経済危機が発生し、これらの国の発展がより厳しくなった。これらは同時に、米国およびその同盟国の世界経済・貿易における覇者としての地位をさらに固めた。

 (二)「なぜ今になり」。半世紀以上の発展を経て、西側主導の国際経済・貿易秩序において、経済・貿易構造及び主体に大きな変化が生じた。分かりやすく言えば、かつての割安な原材料と高価値の工業品の間の「ポストコロニアリズムの経済・貿易モデル」の維持が困難になった。利益を考えると、先進経済体の工業国は割安な原材料の入手がますます困難になった。後発の農業国は産業化の実現後、先進国に工業製品の大幅な値下げを迫り、欧米の利益が急速に減少した。市場競争を考えると、後発経済体の産業化により多くのアジア・アフリカ・ラテンアメリカ諸国の市場シェアが上がり、先進国よりも大きな力を持つようになった。特に多くのローエンド製品と一部のミドルエンド製品で欧米はほぼ総崩れとなった。

 (三)「なぜここから」。「なぜ今まで」と「なぜ今になり」を理解した後、「なぜここから」、すなわちなぜ米国の中国への抑圧という問題に最終的に帰結するのかという問題の理解が容易になる。上述したように過去のグローバル化は西側主導であり、完璧には程遠かったが、戦後の半世紀以上に渡る政治・経済構造により、西側が作った国際経済・貿易ルール及び秩序が全体的に見て安定し、戦後の世界の経済・貿易の発展を促した。ところが中国を始めとする新興経済体が、国際経済・貿易取引に占める割合でも、国際的な産業のバリューチェーンにおける質でも大きな力を握るようになると、米国は半世紀以上維持してきた世界の「一強」の地位が強く脅かされていると一方的に考えた。中国抑圧はトランプ政権からバイデン政権に至る対外的な重要任務になった。

 つまり以前の国際経済・貿易ルール及び秩序は米国及びその同盟国が作ったもので、中国及びその他の発展途上国は半世紀の国際経済・貿易において西側ルールの執行者であることが多かった。ところが今や米国は自ら作った国際経済・貿易の秩序を覆そうと試みている。これを受けWTOが警告したように、ある程度の脱グローバル化と断片化が生じている。その災いの元はいずれもこうして生じた。多くの発展途上国は要警戒だ。

 当然ながらWTOが提案した再グローバル化は、かつてのグローバル化とは異なる。時代がすでに移り変わり、国際経済・貿易構造にも大きな変化が生じた。特に南北の国の国際経済・貿易構造における量と質の割合も今は昔と大きく異なる。再グローバル化が必要ならば、それは各経済体の科学技術の価値及び経済・貿易の実力に基づく、経済・貿易の公平・公正・持続可能という原則を守る新たなグローバル化モデルであるべきだ。いわゆる貿易の断片化と脱グローバル化は、「破壊なきところに建設はない」のチャンスとも言えるのではないか。世界の最も多数の経済体が参加する、新たなグローバル化がこれによって構築されるかもしれない。

 (筆者=趙永昇・対外経済貿易大学地域国別研究院研究員、フランス経済研究センター主任)

「中国網日本語版(チャイナネット)」2023年9月15日