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japanese.china.org.cn |25. 09. 2023 |
米国が立ち上げたIPEF 地域の平和と発展を破壊
トランプ政権の「インド太平洋戦略」に経済の支柱が欠けるという不足を補うため、バイデン政権は2022年2月に「米国のインド太平洋戦略(U.S. Indo-Pacific Strategy)」文書を発表し、「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の構築を同戦略的行動計画の重要な構成部分とした。バイデン米大統領は2022年5月23日の日本訪問中にIPEFの立ち上げを正式に宣言した。米国のインド太平洋戦略の経済の分枝であるIPEFには、中国の地域における経済的な影響力を削ぎ落とし、中国に対する競争力の形成を急ぎ、米国のインド太平洋地域における経済面の覇権的な地位を固めるという目的がある。そこで米国は産業チェーンの再構築やフレンド・ショアリングなどの手段を通じ、自ら主導し中国を排斥する「小グループ」を構築しようと愚かにも企んだ。このやり方はアジア太平洋諸国間で形成済みの良好な経済・貿易協力関係を破壊し、地域の平和・安定・発展をも破壊する。
(一)地域経済一体化の協力の歩みを妨げようとする。2022年の年初、アジア太平洋15カ国が8年間の交渉を経て合意に至った「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」が正式に発効した。アジア太平洋自由貿易圏の建設、最終的なアジア太平洋地域一体化の実現に向けしっかり基礎を固めた。米国が構築したIPEFは排他的かつ対抗的で、同地域の一体化の流れに背く。まず、RCEP参加国である中国、カンボジア、ラオス、ミャンマーの4カ国を除外している。その一方でいわゆる「高基準」により、貿易やデジタル経済などのルール及び基準の策定の主導を試み、各国に立場表明を働きかけている。排他性を出発点とするIPEFが、地域経済一体化及び経済グローバル化の大きな流れに合わず、地域の協力に壁を作ったことは明らかだ。
(二)アジア太平洋で形成済みの産業チェーン及びバリューチェーンの破壊を試みる。バイデン政権は半導体産業への補助の法整備を促し、産業を本国に戻し外資を集めている。現在すでにサムスン電子、ハイニックス、TSMCなどの世界的に有名な半導体メーカーが米国本土での投資の拡大を発表している。その一方で、米国はアジア太平洋の同盟国及びパートナーの力を借り、その半導体産業の権力の影響範囲を拡大し、自国のサプライチェーンの安全を保障している。例えば米国は米日豪印「クアッド」の首脳会合で「重要技術サプライチェーンに関する原則の共同声明」を発表し、半導体及びその他の重要技術分野の協力推進を強調した。米国は日本、韓国、中国台湾と共同で「半導体クアッド」を構築し、レジリエンスを備えたサプライチェーンの重要な支柱とした。米国は自国の利益のために、同盟国及びパートナーを巻き込みアジア太平洋経済のサプライチェーンとバリューチェーンの再構築を試み、地域経済協力を破壊する最大のトラブルメーカーになった。
(三)中国抑圧の「小グループ」を形成し、中国をバリューチェーンのミドル・ローエンドに固定させようとする。バイデン政権はフレンド・ショアリングに取り組み、単一の国(特に競争相手国)に対するサプライチェーンの依存を弱めている。そこで米国は「有志国」に対してサプライチェーンの構築を呼びかけ、企業に投資先の調整を迫っている。重要技術、重要資源、重要能力、重要投資などの産業チェーン分野を有志国に向けることで、サプライチェーンの安全と強靭性を実現しようとしている。その目的は、中国と米国の間で立場をはっきりさせるよう関連国に迫り、中国との「デカップリング・チェーン寸断」を図り、中国の現代化発展の歩みを妨げることだ。中国は世界経済の重要な成長源だ。米国が同盟国と共に中国を抑圧し、中国の前進を阻止することは、地域ひいては世界の平和的な発展に影響を及ぼす。
インド太平洋戦略の経済的支柱であるIPEFは、ASEANの地域内における中心的な地位を形骸化し、かつ「世界の工場」である中国まで除外した。アジア太平洋を分裂させ、中国と地域諸国の経済・貿易関係を断とうとする意図が非常に顕著だ。冷戦終了後、アジア太平洋経済が急成長を維持し、世界の平和・安定の錨、経済発展の成長源、協力の新高地になったことは周知の通りだ。ところがIPEFは経済問題を政治化・武器化・イデオロギー化させ、経済デカップリング、技術封鎖、産業チェーン寸断を人為的に作り出し、発展の格差を広げた。地域の安定と発展を大きく破壊し、地域諸国の全体的かつ長期的な利益を損ねた。地域内の国は「小グループ」の発想に自覚的に反対し、地域の得難い協力の成果を守り、共に地域経済一体化を持続的に推進し、アジア太平洋運命共同体を構築するべきだ。(筆者・倪月菊 中国社会科学院世界経済・政治研究所研究員、国家グローバル戦略シンクタンク客員研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2023年9月25日