汽車が疾走して車輪がグルングルンとうなるなか、空がだんだんと白んできた。カーテンを開けると、どこまでも続く鮮やかな緑が眼の前でパッと光った。
緑はうねり、ときに小さな土の盛り上がりでかすかに上がり下がりしながら、整然として空の果てまで伸びていく。広大な緑に嵌め込まれたような家々。家屋の前や、その後ろに決まって、数株の艶やかな桃の花が趣を添えている。どの農家も、みんな色を調合する達人なのだろうか、と疑ってしまうぐらいだ。自分の住むところを、これほど緻密なまでに、緑の田野に絶妙な趣を醸し出しているのだから。
揚州の三月。緑の木々の茂みに姿をみせる灰色の反り返った庇や、家屋の前や後ろにある青々とした細竹は、そう、いつも不意にそこに姿を現す。静かにくねくねと流れる小さな川、湾曲した三日月形の小さな橋。それに川岸で淡く霞にたなびく柳。その新緑はまるで、薄絹をまとっているかのようだ。緑の柳には幾つか、花開こうとする蕾の艶やかな紅色がみえる。これは別にある名所を紹介しているのではない。揚州を散策すると、数歩行くたびに出合うのが、こうした光景なのだ。
揚州の都市建築には目立った特徴がある。新旧の風格が完ぺきなまでに美しく統一されていることだ。緑の樹木が影を落とす公共バス停の傍らに、いつの時代のものか古い牌坊(鳥居)が聳えている。国際ブランドを売る近代的な大規模なデパート。とはいえ、外観は古色蒼然とした二階づくりの建物であり、外壁の広告看板までも、この古びたビルと完全にマッチしている。揚州はまるでずっとこんな風にあったかのように、実に落ち着いた雰囲気なのだ。古典的でありながらも、どこかひそやかに近代なものを秘めている。
三月、北方では黄砂が飛び舞う季節でも、ここ南方はもう春うららかだ。湿り気のある空気に、淡い青草のにおいが漂っている。窓辺の幾つかの竹と、小さな水溜りが引き立つ。街を行く人びとはみなリラックスして落ち着いた様子で、そのさり気ない表情が、ここは揚州、揚州の三月だと告げてくれる。
「チャイナネット」2006年4月