湖南省北西部の武陵源山脈にある張家界は、自然の織りなす美しい風景で知られる中国有数の名勝だ。かつてここは、黙々と土を耕す土着の農民以外には、足を踏み入れる人もほとんどいないような静かな山村だった。その自然も世間の人の目に触れることなく、あたかも深窓の佳人のように神秘のベールに包まれていたのだ。
ところが1980年代に入ってから、状況は一変した。観光業の隆盛やマスコミによる盛んな報道により、張家界の自然は多くの人々の知るところとなった。霧の中に隠れていた「処女地」は、一躍注目を集めるようになった。
1992年12月には、ユネスコのスタッフが現地を視察。様々な角度からの審査と指定範囲の確定作業を経て、この地を世界遺産リストに加えた。これを契機に、張家界の名は国際的な景観区・自然保護区として一挙に広まった。
「張家界」とは一帯の山地を差す俗称で、その中に張家界自然風景旅遊区という千平方 キロあまりの景観区がある。索渓峪、天子山と並ぶ張家界の三大景観区の一つとして知られており、この三大景観区をあわせて武陵源風景名勝区と総称することもある。
数億年の間に繰り返された地殻変動の結果、この地には石英砂岩の岩の森が形成された。その独特の景観により「天下の奇山」とも称えられる。姿形のそれぞれ異なる岩の峰が全部で3103あり、その高さは100メートルから300メートルに達する。一帯の森林被覆率は80%を超え、むき出しの岩肌に木々が直接根を張り、青々と茂っているのが面白い。琵琶渓、花渓、金鞭渓などの渓流が岩の峰の間を縦横に流れる様は、まるで山肌に銀の絹糸がからまっているかのようだ。山と川、そして多くの洞窟が織りなす景色は、ここでしか見ることができない絶景だ。
山中にはキク科、ラン科、マメ科、バラ科、イネ科など、93科517種の木本植物が自生する。鳥類はベニジュケイ、クビワガラス、オナガキジ、ソウシチョウ、ホトトギスなど41種、野生動物もバーラル、ムジナ、ヤマアラシ、キバノロなど、28種が生息している。
張家界自然風景旅遊区は十年あまりの保護と開発を経て、三大景観区の中でも中心的な名勝となった。周囲を茅岩河、九天洞、天門山、武陵山、普光寺などの景観区に囲まれ、自然と歴史文化、人々の習俗が一体となった見所の多い観光地として発展している。張家界の国際的な知名度は今後ますます高まり、世界共有の財産として認知されていくだろう。
「人民中国」より 2007年10月8日