北京師範大学で心理学を研究する許燕教授がこのほど、一般市民への科学普及について「職業の枯渇と心の健康」と題するレポートを作成した。これは、このほど開かれた「国際心理学大会」で発表され、その後に中国聯通(チャイナユニコム)が行った電話アンケートでは、自身の症状と許教授のレポート内容がまったく同じだと感じ、どのような治療を受ければよいか質問する人が多かった。
許教授はこれに対し、「『職業の枯渇』が徐々に流行病となっている今日、大部分の人はこれについて必要な知識が欠け、応対能力にも欠けている」との懸念を示した。
「職業の枯渇」とは、仕事のプレッシャーで心身が疲労した状態を指す。1961年に「職業の枯渇」をテーマとした小説が米国でセンセーションを巻き起こした。小説は、ある建築士が仕事での極度の疲労が原因で理想と情熱を失い、現実の生活から逃げてアフリカの原始林で暮らすという内容だ。この小説から、「枯渇」という言葉が人間の視野に入り込んできた。許教授は、「このような現象は現在、私たちの身近でますます増え、中国社会はすでに『職業の枯渇』の多発期に入っている」と話す。
許教授は「職業の枯渇」について、「世界範囲で普遍的に起こっている現象」だと説明する。中国国外では、1970年代から研究が始まり、中国では20世紀末に注目され始めた。
北京安貞医院はこのほど、被験者70万人に対し10年間にわたって行った調査の結果を発表した。調査結果によると、35歳の男女における、脳梗塞、脳出血など脳の病気に関する突然死の発病率は、10年前に比べてそれぞれ136%と220%増加した。冠状動脈性硬化症は、45~49歳の男性では同50%増加し、55~59歳の女性では同32%増加した。また、若者の心と健康の問題もますます顕著になり、心臓病の発病年齢は30歳にまで下がった。
許教授は、数年前のあるレポートについてもまだ鮮明に覚えているようだ。レポートによると、北京市中関村の知識階級者の平均死亡年齢は53.34歳で、寿命は10年前に比べ5.18歳短くなった。許教授はこのことから、現在の中国における中年と青年は、特に知識階級者において「職業の枯渇」が非常に深刻だと見ている。
許教授によると、「職業の枯渇」は、他人を助ける仕事をしている人、投資家、仕事に大きなプレッシャーを感じる人、自己評価が低い人などに多発している。心理カウンセラーは、仕事の「他人を助ける」という性質から、かえって「枯渇」に陥りやすい産業で、全体の40%を占める。2位は教師で20%、他には新聞関連、警察、医療関連などが挙げられる。
許教授によると、「職業の枯渇」の主な症状は、身体の疲労、情緒低落、想像力の衰弱、価値観の低下、冷淡な態度、攻撃的な行動など。元気がない、非常に疲れる、不眠・頭痛・背中の痛み・胃腸不良などの症状が見られる場合、「職業の枯渇」を患った可能性が非常に高い。
許教授は、「職業の枯渇」の危険について、「業績の低迷や、情熱の減退などにより、仕事上の道徳性や積極性に欠けたり、家庭内にも危険が及ぶことがよくある」との懸念を示している。日増しに強まる社会的プレッシャーがもたらす個人への影響については、「社会の発展は一個人の力では抑制できない。社会の発展プロセスを変えることはできないが、発展状態を調整して自身が社会にさらに適応させることはできる」と考えている。
「人民網日本語版」2004年8月15日