僕がちょっと気になったというのは、相変わらずの中国の危険な投資熱の臭いを感じたところです。
「シルバー産業」といってしまえば、新しい産業区分のようにフレッシュなイメージできこえるのですが、今回の記事について言えば、ふたをあけてみればそれは「不動産開発事業(土地開発)」と「保険事業(金融)」です。つまるところ、典型的なバブル構造を助長させる事業がコアになっているだけでありまして、日本での一般的に認識される広範囲な「シルバー産業」とは異なるものであります。本来であれば「シルバー産業」と言い切るからには「不動産開発」や「保険」などは産業バリューチェーンでコア(核心)ではなくて、その上流や下流に位置する付帯するべき事業であるべきで、その産業バリューチェーンのコアとなる事業は「医療介護サービス」などの決めの細かい在宅サービス、遠隔地医療提供、医療介護人材育成などの「ソフトウェア」というものが具体的に社会投資されるべき事業として語られるべきでしょう。
ですから、僕はこの記事の内容をみて思いました。「シルバー産業」というのは、またもや中国バブル助長に向かうために体良く「話しのすり替え」として利用されているひとつだなぁということです。
実はこれだけでなく、中国において他の産業も「話しのすり替え」は非常によくみられます。古くは「IT産業基地」というものが中国各地に建設されましたし、最近では「エコパーク」という環境に配慮した「グリーン産業」という大義名分をかぶって産業基地の開発(環境汚染や資源効率を意識した技術を導入した工業地区、結局は不動産開発が主要な目的であることがよくあります)がありますし、僕が専門で研究しているエンターテイメント産業においても「テーマパーク開発」という不動産開発の大義名分に助力するだけというケースがよくあります。確かに、ほとんどの産業が新しく育つ場合、バリューチェーンとして上流には「不動産開発」というものがあるというのは順当であります。しかしながら、その不動産開発というものが、手段ではなくて目的化することが往々にみられるということが問題でしょう(ITそのものでも、グリーン技術そのものでも、エンターテイメント文化そのものの技術発展への投資でなく、付帯する不動産開発が目的化してしまっている)。
中川幸司さんのブログ「情熱的な羅針盤」