デフレが長年続いた後、中国経済はインフレの試練に直面し始めた。
国家統計局が8月13日に発表したデータによると、7月の全国消費者物価指数(CPI)の総体的な水準は前年同月比で5.6%上昇した。この上昇幅は5%という中国のインフレ警戒ラインを超えるものである。
年初、中国人民銀行はCPIの上昇幅3%を調整ラインに定めたが、その目的はインフレを防止することだった。5月にCPIが3%を突破して3.4%に達した時、人民銀行は金利の上昇や貸付準備金率の引き上げといった通貨調整手段を運用して介入に乗り出した。だが、現在の5.6%という上昇幅は、人民銀行の調整がCPI抑制の効果を上げることができず、インフレがすでに中国経済が直面しなければならない1つの問題になっていることを示すものだ。
食品価格がCPIを押し上げ
国家統計局チーフエコノミストの姚景源氏は「消費者物価指数の上昇は構造的なものである。指数の構成要素から見ると、食品価格が上昇を加速させている主因だ」と指摘する。統計データによると、7月の食品価格の前年同月比の上昇幅は15.4%に達し、前月を4.1ポイント、5月を7.1ポイント上回り、今年の最高値となった。だが、非食品価格の上昇は0.9%に過ぎない。
姚景源氏は「食品の中で上げ幅が最大なのが豚肉だ。豚肉の価格の大幅な上昇が、その他の一次産品や加工食品、飲食サービス業などの分野にまで急速に広がったことで、食品の値上がりが進んだ。第3四半期全体の上昇幅は上半期を上回ると予想される」と分析する。
多くの専門家は、中国経済が発展に向けて注意を払わなければならないのは、食品価格の上昇の工業製品価格への波及をできだけ回避することであり、工業製品価格が大幅に上昇すれば、インフレの発生は避けられないと見ている。人民銀行は8月8日に発表した「第2四半期の通貨政策執行報告」で、「前期、穀物と肉・家禽・卵の価格上昇はすでに下流の食品加工、飲食業種に波及している」と指摘した。
喜ぶべきは、現在のところ工業製品価格がまだ比較的低い水準にあることだ。7月の上昇幅はわずか2.4%で、6月より0.1ポイント下落した。
ただ、こうした状況が維持され、継続するかどうかは予断を許さない。クレディ・スイスのアジア地区チーフアナリストの陶冬氏は「食品値上がりの傾向は一段と悪化するだろう。中国はトウモロコシや大豆で大量に輸入に依存しており、国際農産品価格の上昇が絶えず国内価格に影響を及ぼす。しかも小麦やコメの国内価格が国際市場と連動する度合いもますます高まっている」と強調。
秋の穀物生産から見ると、約7300万ヘクタールの耕地のうち、4分の1が干ばつや洪水の被害に見舞われている。夏の穀物は上半期に比べ1.9%の増産となったが、年間生産量の5分の4を占める秋の穀物が不作となれば、年間生産量は06年を下回り、食品価格が下落することはない。
陶冬氏は「食品の値上がり以外にも、賃金や賃貸料の上昇もインフレ要因となっている」と指摘する。