世界経済フォーラムの創始者・会長のクラウス・シュワブ氏
「もう何度中国に来たか覚えていないな。少なくとも30回は来ているだろう。」世界経済フォーラム(WEF)のクラウス・シュワブ会長は夏季ダボス会議の前晩、新華社の独占インタビューを受けた。
36年の時が経ち、シュワブ会長は今ではもう古希に近い年齢となった。フォーラムの名も、ヨーロッパ経営者フォーラムから世界経済フォーラムへと変わり、世界各国の経済界のリーダーたちが押し寄せてくるようになった。未来経済へ向けての新思潮を引っ張っていくフォーラムとなったのだ。
発展を遂げた今となっては、ダボス会議での関心事はすでに経済問題だけではない。「環境保護・均衡のとれた発展・人類の健康等々、いずれも討論するに値する問題である。」とシュワブ会長は語る。
平等で開放的な雰囲気の中で、壁のない交流を行う。これがダボス会議が他と異なる点である。ここでは、皆が地位・権力・財産の優劣をつけられない円卓を囲み、言いたいことを言うのだ。
「ダボス」の中国コンプレックス
ダボスから北京までは、飛行距離にして8,000km近く。この二つの遠く離れて、どちらもある種シンボル的な意味を持っているところは、早くも70年代からつながりがあった。1979年、シュワブ氏は改革解放を宣言したばかりの中国に、同フォーラムへに参加するよう熱意を込めて招請した。
「ここ30年ほど、フォーラムはずっと中国と良好な協力関係を保ってきた。」と、シュワブ氏は言う。中国のリーダーも幾度もダボス会議に出席し講演を行ってきたし、今や中国経済界の中心となっている人物もたくさんかつてこの会議に出席し、ここからインスピレーションを得てきた。
この、世界経済のトップフォーラムでの中国の影響力も、時間の推移と共に変化している。現在、世界経済フォーラムジュネーブ本部では、中国チームが作られている。このフォーラムでは、ジュネーブ以外に二つの事務所を持っている。一つは北京で、一つはニューヨークにある。
今年一月に行われた冬季ダボス会議は、中国色がより深いものとなった。会場の入り口には何箇所も中国の国旗が飾られ、議事日程をめくってみれば、いたるところに「中国」とあり、議題が直接中国と関わりのある会議も多い。たとえば「中国はどのような世界の形成を望んでいるのか」「中国は全世界のパートナー」「中国――新機軸打ち出しの始まり」などである。たとえ主題が中国と直接関係のあるものではなくても、討論が深まっていくうちに大抵中国に関わってくる。
「今後、世界経済フォーラムは二つの支柱を持つことになる。一つは冬季ダボス会議、もうひとつは夏季ダボス会議である。」とシュワブ氏は語る。世界経済フォーラムは、夏季会議を冬季ダボス会議並みの規模と影響力を持つ大型国際会議へと発展させ、新興グローバル企業が関心を持つ企業の国際化という問題を重点的に討論する場にするつもりなのである。
大連は速い発展と完璧なインフラ設備により夏季ダボス会議の初開催都市に選ばれた。記者がシュワブ氏に大連とダボスという二つの会場を比較してくれるよう頼んだところ、氏は三度も連続して「Bigger(更に大きい)」という言葉を用い、さらに「Fantastic(ファンタジックな)」とも付け加えた。どうやら、名だたるスキー場であるダボスとは非常に対照的な海辺の都市、大連に彼はとても満足しているようだ。
「中国はすでに新しいリーダーシップの国の1つ」
世界経済フォーラムの統率者として、シュワブ氏は世界経済の局面の変化について、鋭く観察し、切実に理解している。中国などの新興経済大国の迅速な発展、多極的な世界経済力の次第の形成を感じ、彼はたびたび中国に来て、新たなインスピレーションを求め、フォーラムの新たな突破口を探している。
「ここ30年というもの中国経済はずっと迅速な発展を続けている。全世界で最も発展の速い経済地域の一つである。中国はすでに、立ち遅れた経済体から他国を導いていく立場にある国となった。」と、シュワブ氏は両手を上に向ける仕草をしながら語った。
世界経済が年平均約3.3%の発展をしているとき、中国では30年続けて年平均9.67%の発展を遂げている。中国経済が全世界全体で占める割合は1.8%から5%を超えるところまでになった。貿易総額が全世界で占める割合は0.8%から6.7%を超えた。中国の経済成長の全世界への貢献度は15%を超えていて、世界で経済発展の奇跡を創り出している。
シュワブ氏の考えでは、世界経済フォーラムが西洋にだけ留まっていられないことは、大勢の赴くところである。さらに言えば東洋にもっと関心を払い、中国の迅速な発展で原動力を得る必要がある。
会員制の組織である世界経済フォーラム会員には、全世界500強のうちの大半が含まれている。しかし、世界経済の行く末はこれら500強によってのみ決定されるわけではない。現在、数多くの新興グローバル企業が目覚しい発展ぶりを見せ、全世界に向けて業務を拡大している。こうした、10年内に500強にランクインするであろう潜在力を持つ会社は、今はまだ世界経済フォーラムの会員ではなく、「世界の成長企業」と呼ばれている。
シュワブ氏は「長年の発展を経て、世界経済フォーラムは、新興経済大国と成長企業に目を向けている。そして中国はすでに新しいリーダーシップの国の1つとなっている」と断言している。
シュワブ氏は、中国政府が打出した持続可能な発展戦略と調和社会の構築という理念を非常に賞賛している。今回の夏季ダボス会議の具体的議事日程の作成にはこうした理念が具現されている。急速に伸びている世界のエネルギー需要による環境破壊をいかにして減らすか、企業はエイズ撲滅においてどのような役割を果たすべきか、…などなど。
「中国は責任のある大国であり、更に多くの世界的責任を果たすことができる。」とシュワブ氏は語った。
「チャイナネット」 2007年9月9日