2400万ヘクタールが耕地から林地に
「退耕還林」プロジェクトは、政策の重要性、投資規模、波及地域、国民の参画規模においてこれまでで最大の生態建設プロジェクトだ。1998年に長江と松花江で発生した大洪水のあと、西北および西南地区における生態系の脆弱さが露呈した。さらに中国の食糧は毎年増産され、安価な食糧価格が農民を苦しい立場に追いこんでいる。 「退耕還林」政策が実施されたのは、一定の傾斜率の耕地を林にして植生を回復し、脆弱な生態環境を保護するためであった。このほか、国が保有する過剰な食糧を植林農家に支給援助し、財政圧力を軽減するという意味もあった。さらに大きな目的は、生態林と経済林を発展させ、農村の経済構造を改善し農民の収入を増やすことであった。
1999年、当時の朱鎔基総理は「長江、黄河の中・上流域における植生の回復、荒れた山の緑化、土壌流失の防止、生態環境の保護を行い、5年間で効果が現れ始めるようにし、10年間で大きな成果をあげなければならない」と指摘し、同プロジェクトが始動した。 当時は農業税の負担が重く、食糧価格も低迷していたため、農民は積極的にこの政策を実行した。加えてこの政策は主に財政支出に頼っていたため、耕地の広さに応じた補助金を支給できたことから農家はきわめて積極的であった。
1999年、四川、甘粛、陝西の三省がテスト地区となり、2000年にはこれが長江上流および黄河中・上流域の13省174県にまで拡大された。07年までに実施された地域は25省、農家は3200万世帯、農民は1億2400万人にのぼった。
実施から8年間で、同プロジェクトにより生まれた造林面積は全国の造林総面積の60%を超え、西部地区の多くの地域では90%を上回った。現時点で累計2400万ヘクタールの「退耕還林」が達成された。
「退耕還林」は確かに中国の自然生態を改善した。国家林業局の統計では、この8年間で「退耕還林」による森林被覆率は平均で2ポイント上昇、なかでも内モンゴル自治区では4ポイント、陝西省延安市では25ポイント上昇した。
このほか、同プロジェクトが行った食糧や生活費の補助手当ては農家の収入の大きな部分を占めており、国土資源部の統計によると農民1人あたり純収入の10%を占めた。