人民元国際化は中国に巨大な利益をもたらす。第一に、中国の長年にわたる「貿易大国だが通貨小国」というアンバランスな状況を変えるのにプラスになる。さらに国際通貨システムの中国に対するマイナス影響を軽減し、世界の経済活動に対する中国の影響力と発言権とを強化し、中国の国際的地位を向上させることになる。第二に、人民元国際化により中国は通貨鋳造税による収入が増え、これにより紙幣を発行して海外の通貨保有者のリソースと引き替えることになり、外貨使用による資産の流出を減らすことができる。第三に、人民元国際化により米ドルなどの国際準備通貨へのニーズが減少するため、中国の外貨準備の規模を縮小し、巨額の外貨準備からくる圧力を緩和させることが可能になる。第四に、人民元国際化により企業の為替レートのリスクを軽減し、中国の国際貿易、国際投資の発展を促進する上で有利になる。
人民元の国際化は両刃の剣であり、利益をもたらすと同時にリスクをももたらす。たとえばマクロ調整の難易度が高まる。人民元が国際通貨になると、大量の人民元が国際金融市場に出回るようになり、国内のマクロ調整政策の効果にも影響するようになる。また国内経済・金融の安定維持の難易度も高まる。人民元国際化により中国の金融市場や経済システムが外部からの打撃を受ける可能性が高まる。さらに人民元国際化はさまざまな課題に直面することになる。課題とは、国際金融市場の発達が不十分であること、資本項目が完全には開放されていないこと、金融派生商品(デリバティブ)が不足気味であること、金利と為替レートの市場化が実現していないことなどで、こうした要因が人民元国際化の歩みをさまざまに制約することになる。
そうはいっても人民元国際化は全体として弊害より利益が大きく、課題よりチャンスが大きい。よって人民元国際化は必然的な流れだということができる。国際化がもたらす金融リスクを軽減し、国際化の利益を最大限にするために、国際化のレベルに合わせて段階的な戦略を取り、これにふさわしい政策を組み合わせていくのが望ましい。
(筆者の孫立行氏は、上海社会科学院世界経済研究所国際金融通貨研究センターの副主任兼副研究員)
「人民網日本語版」2009年4月9日
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