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ボーイングの苦境、「メイド・イン・アメリカ」の現状を反映

中国網日本語版  |  2024-05-11

ボーイングの苦境、「メイド・イン・アメリカ」の現状を反映。

タグ:ボーイング 安全事故 技術 製造業 サプライチェーン

発信時間:2024-05-11 09:29:54 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

 米連邦航空局は先ほど、ボーイングの「787ドリームライナー」が必要な検査を行ったか、従業員による文書改ざんがあったかを確認する調査を開始したと発表した。この調査は予想外ではない。過去1年以上に渡り、ボーイング製の主力機の安全事故が多発していたからだ。ドア脱落、離陸時のタイヤ落下、空中でのエンジン出火など、安全性と技術力で知られたボーイングがスキャンダルの渦に陥った。さらに深いレベルで見るならば、ボーイングが現在直面している生産及び安全問題は一枚の鏡のように、米製造業が迎えている生産の遅れ、サプライチェーン寸断、熟練工の不足、コスト削減の圧力といった数々の問題を照らし出している。『環球時報』が伝えた。

 (一)ボーイングの生産状況の混乱は、米製造業のハードランディングのリスクのさらなる拡大を浮き彫りにした。データによると、ボーイングの今年第1四半期の交付は83機で、「100機未満」というデータによりコロナ後で最悪の第1四半期を迎えた。23年同期は130機。今年1月に米アラスカ航空のボーイング機のドアが脱落した後、同社の航空機生産量が減少を続け、工場の生産性が低下している。同社従業員のブログによると、ドア枠の破損した締め釘の修復にかかる時間は予想の50倍にのぼる。

 ボーイングは「米製造業の王冠」と呼ばれ、高い技術力と付加価値と競争力といった特長を持つ。その生産の遅れはある程度、米製造業が迎えている苦境の現れだ。

 (二)ボーイングのサプライチェーン寸断による苦しみは、米国がいわゆる「サプライチェーンの安全の弾性」と経済効率のバランスを取れないことを反映した。ボーイングの生産の乱れと事故多発は、部品不足の深刻化を受けてのことだ。これは米国の地政学的な目論見による、産業チェーン及びサプライチェーンをかき乱すさまざまな操作によるものだ。最新の例を挙げると、ボーイング787は熱交換器の供給不足や座席の不足といった問題により交付が遅れている。米国のロシアへの厳しい制裁により、ボーイング787の熱交換器のサプライヤーがロシアとウクライナの衝突から間もなくロシア事業を停止し、生産を米国と英国に移転したからだ。しかしボーイングが現在、787の生産を拡大しようと試みているが、米英に移転した新しい生産ラインでは十分な熱交換器を供給できない。重要部品の不足により生産が遅れ、ボーイングのキャッシュフローが悪化した。

 米製造メーカーは対外投資及び調達の際にコストや効率などを主に考慮していた。米国の「オフショアリング」は通常、より安く、より早く、より柔軟で、より効率的であることを意味する。ところが現在、地政学的な不確実性が高まる中、米政府は米企業にいわゆる「予見不能なシステマチックな衝撃」に適応するよう求め始めた。米政府が「デカップリング・チェーン寸断」の拡大を騒ぐ中、米国の多くの大型、さらには中小の製造メーカーがサプライチェーン面の危機に直面している。米国地場の製造業全体がより厳しい試練を迎えている。

 (三)ボーイングの熟練工の不足は、米製造業の技術発展と熟練工の供給のミスマッチを露呈した。コロナ後に観光業が徐々に回復する中、市場で新型機の需要が激増している。ボーイングを含む航空機メーカーは多くの従業員を雇い生産量を着実に増やす必要がある。だが先進製造業が必要とする作業員とその技能のレベルが上がっている。作業員は多くの専門的な能力を把握し、さらには機械、電子、ソフトウェアなどの知識と技術が必要で、技術のハードルが大幅に上がっている。さらにコロナ後の米労働市場は常に逼迫しており、ボーイングの高技術作業員の採用目標の達成が困難だ。

 米製造業の技術発展のペースは、労働力の技能進歩のペースを大幅に上回っている。技術は多くの労働力に置き換わるが、生産フローの急速な改善に適応できる高技能作業員も必要だ。

 コストを削減し各種難題を解消するため、ボーイングは技術集約度の低い生産部分をより低コストな地域に移転しようと試みている。例えばボーイングの組立ラインは主にワシントン州にあったが、現在は人件費も地価も割安なサウスカロライナ州で新たな組立ラインを建設することを決めた。しかし米国内で生産ラインを移転しても、コスト拡大、労働力不足、部品供給寸断、限定的な生産能力といった数多くの問題を根本的に解消できない。ボーイングは生産の乱れと事故多発の苦境に陥っているが、これは泥沼に深くはまる「メイド・イン・アメリカ」の縮図にもなっている。

(筆者=馬雪・中国現代国際関係研究院米国研究所副研究員)

 「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年5月11日

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