真夏の炎天下では、屋外にいるだけで熱中症になる危険があり、帽子やハンディファンだけでは役に立たないことが多い。もし「温度調節ベスト」があり、強い日差しの下でも涼しく感じられるとしたらどうだろう。その発想が、現実のものとなった。科普中国が伝えた。
今年3月、北京大学の鄒如強教授研究チームは学術誌「Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)」に研究成果を発表した。特殊設計の繊維を用いて「エアコン」を布地の中に織り込んだのだ。この素材で作られた衣服は通常のポリエステル製ベストより表面温度を7~8℃低く保つことができるという。
この優れた効果はどのように実現されたのか?
その秘密は相変化材料(PCM)にある。相変化材料とは、物質が相変化する際に温度が一定に保たれる性質を利用して、「スマート温度調節」を可能にしている。相変化とは、水が氷になったり、氷が水になったりするように、物質の状態が変化する現象を指す。この過程では大量の熱を放出・吸収するが、温度自体は変化しない。
鄒氏は取材に対し、「簡単に言えば、布地の中に隠れた『スマートエアコン』のようなものだ。外気温が高くなると熱を吸収して蓄え、気温が下がるとゆっくり放熱する。一方で、素材自体の温度はほとんど変わらない」と説明。
研究チームは、従来の繊維材料に微量のカーボンナノチューブを補強材として添加し、優れた熱伝導性を持つ高速熱伝達経路として活用した。さらに、3次元相互貫入高分子ネットワークを構築し、その内部に相変化小分子を精密に閉じ込めた。これにより、分子が溶けて液体になっても外部に漏れ出すことはなく、同時に素材の柔軟性も向上した。
この設計によって生まれた高性能相変化材料は、蓄熱効率が高く、靱性と強度にも優れ、現在の商用繊維設備にそのまま対応できる。また、裁断、縫製、製織などの工程にもシームレスに組み込むことができ、産業化への道筋は明るいという。
この素材の「エアコン」効果を検証するため、研究チームはこの新素材でベストを試作し、夏季の屋外環境で通常のポリエステル製ベストと比較試験を行った。その結果、ポリエステル製ベストの表面温度は約50℃まで上昇したのに対し、「相変化ベスト」は42℃にとどまった。高温の室内環境でも、優れた吸熱緩衝性能と断熱性能を示した。
鄒氏は、「このアプローチは単に新しい布地を開発しただけではなく、次世代スマート熱管理材料の新たな方向性を切り開くものだ」と述べている。
将来的には、この技術は特殊防護服、ウェアラブル医療機器、スマートスポーツウェア、宇宙飛行士の船内服、さらには建築物の省エネルギー繊維など、幅広い分野への応用が期待されている。(編集YF)
「人民網日本語版」2026年7月2日
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