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中国女子カーリング・チームの優勝について
発信時間: 2009-04-02 | チャイナネット

林国本

 

中国女子カーリング・チームが韓国で開催された世界女子カーリング選手権大会で優勝したニュースが三月三十日、「北京晩報」紙で大々的に報道された。カーリングという種目はあまり知られていないが、さいきんはテレビでもよく報道されるようになった。この一風変わったスポーツ種目のルーツはスコットランドで、北欧、カナダなどでは市民の間でレクリエーションとして楽しまれている。

中国女子チームのキャプテン王氷玉さんの話によると、中国でこの種目に携わっている女子選手は「中国に生息しているパンダよりも少ないらしい」と語っている。要するに、まだ中国に導入されたばかりの新種目ということである。

王氷玉さんは父親がアイス・ホッケーの選手で、幼い頃から氷に縁があった。

中国では2003年に最初の女子チームが結成された。王さんはその時からのメンバー。当時、家に帰っておばあちゃんに「どんなスポーツなの」と尋ねられて、いくら説明してもわかってもらえなかったということである。

中国女子チームは結成後わずか5年間で世界のヒノキ舞台で大活躍するまでに成長をとげたのだ。もちろん、それはカナダ人コーチ、ダニエルさんの熱のこもった特訓と切り離すことはできない。そして、今後は2010年のバンクーパー冬季オリンピックに向けてトレーニングをつづけることになっている。

この「氷上のチェス」ともいわれる種目で大きなブレークスルーをとげた中国女子チームにエールを送りたい。

さいきん、知人のスポーツ愛好者が真顔になって「中国はいくら金メダルを取っても、スポーツ強国とはいえない。サッカー、バスケットボール、陸上競技ではまだまだだよ」と言っていたが、筆者はそういうアングルからの見方はどうかと思う。建国60年らい、先人たちの努力で、卓球は世界の強豪としての地位を保ち続けている。時には、「ゆらぎ」もあるが、この地位はそういうたやすく揺らぐものではない。もちろん、先頭を行くものは、追い上げてくるものに研究し尽くされている。また、現役を退いた選手たちが外国チームのコーチとなって、中国式のトレーニング法で外国チームを鍛え上げてぶつかってくるご時世である。狭隘な考え方の持ち主なら、「外国勢に加担することはなにごとだ」と額に青筋を立てることだろうが、改革・開放30年を経た中国人も広い視野からこういうことを受け入れる度量をもつようになっている。陸上競技にも、水泳にも強い種目が現れてきている。スポーツの強国であるかどうかは総合的に見るべきではないだろうか。まずその国の全般的なスポーツのレベル、国民の健康レベルを見る必要がある。これまで中国では大衆スポーツという視点でこれをとらえてきた。こうしたものを踏まえて、競技スポーツのレベルにも目を向けるべきである。

筆者の私見であるがメダル数も無視できない。また、サッカーという種目は、ある面では視聴率、集客力、広告獲得量、放映権ビジネスなどから高く評価されていることもないわけではない。また、この種目は長い伝統をもつもので、一朝一夕に世界のランキングに入れるものではない。オリンピックの歴史をふりかえってみてもわかるように、当初は、マラソン、陸上競技、格闘技が主であったはずだ。

以上からみても、筆者の私見では幅広い種目での総合的なレベルでその国のスポーツの全般的レベルをみた方がより妥当だと思う。今回の北京オリンピックでは、中国はこれまで欧米諸国の独壇場といっても過言ではない水上種目、ボクシングなどでもかなりの進歩が見られたし、射撃、飛び込みなどでもすばらしい実積を示した。

今回中国女子カーリング・チームの優勝を知って、筆者はのびのびと成長をとげる中国の若者たちの姿を見て感動するとともに、総合的なスポーツ力ということを考えるにいたったのである。たかがカーリングというなかれ。カーリングも立派なオリンピック種目である。その優勝、あるいは金メダルはサッカーと同じような価値はない、と大声で言える人はいないはずである。したがって、スポーツの強国であるかどうかは、総合力という視角からみるべきだと思う。

 

「チャイナネット」 2009年4月2日

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