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東京で目にした面白い業態 |
発信時間: 2009-11-17 | チャイナネット |
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林国本
何十回も公用で日本を訪問した経験があるが、あらかじめスケジュールの決まった訪問となると、パーティーやら懇談やらでほとんどのまとまった時間を費やすことになり、ゆっくり町をブラブラする暇はなかった。ところが、ラッキーなことに中国のメディアの特派員として東京に6年間も長期滞在することになり、私はこれを自分のそれまでの「知識構造」の大転換のチャンスにしようと考えた。そのために、できるだけ幅広く、多くの人たちと触れ合うとともに、ふだん、スケジュールの決まった訪問では行けないようなところにも足を運んだ。二、三の例だけを挙げると、忠臣蔵と関連のある泉岳寺、「柴又の寅さん」と関連のあるところ、演歌に出てくる「矢切の渡し」などがそれである。日本をよりよく、より広く、より深く知り、大きく言えば自分のライフワークのための肥やしにできるのではないか、という淡い期待感が私にそうさせたのではないか、という今では思っている。 そのときの体験として今でも記憶に残っているのは「東急ハンズ」という店舗のことであった。 日本はその頃、経済も右肩上がりの様相を呈し、いろいろな面白い企画が現実となって人々を楽しませていた。 「東急ハンズ」は日本の異色のコンサルタント久保田達世さんが開発した店舗で、当時は大きな話題となっていた。私も書店に行った帰りに時々のぞいていたが、私は当時中国も10年、20年後にはこういう店舗が現れる時代が来るのではないかと思っていた。 日本の雑誌には、ある総合商社の人が定年で退職したあと、我が家のベランダを小さな作業室に変えて、鉄道車両の模型を次々と作って実際にそれを走らせて楽しみ、さらにはその凝り性が昂じてついには小型の工作機械まで手に入れて、町ではなかなか買うことのできない部品まで自分で研削して作り上げている、ということまで紹介されていた。日本にはまた、ログハウスとか山小屋を手作りで完成した人もいる。とにかく、それぞれの好みで人生を存分に楽しんでいるであった。 そして、さいきん中国の新聞でも、もともとすぐれた鈑金工として働いてきた人が、おもちゃの修理に凝りだして、いまではどんな電動のおもちゃでも、機械仕掛けのおもちゃでもちゃんと修理して子供たちに喜ばれていることが報じられた。もちろん、「使い捨て文化」がはびこる時代のこと、おもちゃなんか壊れれば捨ててしまって、もう一つ新しいものを買えばいいじゃないかと、あっさり言う人もいるが、世の中には自分の好きなおもちゃを捨てることをいやがる子供もいるので、マーケット・セグメンテーションというマーケティングの言葉を借用するならば、この鈑金工さんの趣味はこうしたニーズにぴったりといえなくもない。まあ、あまり大きなマーケットには発展しえないので、それでガッポリ儲けることはできないだろうが、鈑金工としての充実感を味わえることはたしかであろう。この鈑金工さんは、北京のあるショッピング・モールで小さなお店を借りて、おもちゃの修理屋さんとなり、今では玩具メーカーのコンサルタントにもなっているらしい。 この話題から私は中国の大都市にも、「東急ハンズ」のような店舗が現れる日は近いと予感している。 テレビのキャスターたちが、DIYという英語を頻繁に使っている時代である。「東急ハンズ」はDIYのためのデパートのようなものである。そういうことで中国もようやく「東急ハンズ」のような業態がペイする時代にさしかかったのではないか、と実感している昨今である。 ただ、中国人は日本人より実益を重んじる人が多いので、まずはワン・フロアとかツー・フロアからスタートして、赤字のリスクをヘッジすることを考えてもよいと思っている。今でも、そういうニーズが分散した形で大量に存在しているのだ。それを1カ所に集めて大きな相乗効果をねらってみてはと思っている。中日両国にまたがるインターディシプリナリーな複眼思考が身についた人間の夢物語のような話だが……
「チャイナネット」 2009年11月17日 |
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