25日、中国の上層部及び専門家による研究討論会が武漢で開催され、三峡ダム周辺地域の生態環境の保護について議論が繰り広げられた。この会議により、三峡ダム周辺の生態環境の安全には、多くの危険が潜んでおり、予防対策をとっておかなければ、大きな問題を引き起こすであろうことが発表された。
三峡ダムの建設工事は15年かけて行われ、もうすぐ完成に近づいている。今年初めて洪水防止機能が発揮され、そのおかげで長江両岸は洪水の被害を受けずに増水期を過ごした。三峡ダムの年間水力発電量は、5,000万トンの石炭による発電量に相当する。これにより二酸化炭素の排出量を1億トン減少できる。しかし、去年初期運行に入ってから、長さ600キロメートルに及ぶダム区の生態環境や長江への影響が少しずつ表面化し始めた。
汪嘯風国務院三峡ダム工事建設委員会事務室主任は、温家宝総理が今年の国務院第182回常務会議において、三峡ダム工事にまつわる重大な問題についての解決方法を討論していた際、重要な点は生態環境問題であると認識していることを明らかにした。
汪嘯風氏はまた、今年8月29日、アメリカの『ウォールストリートジャーナル』の記事「三峡ダムに関する問題」で書かれた「三峡ダムプロジェクトがかかえる山崩れや水質汚染などの予想外の課題」については、「何か別の思惑があって書かれたものもあるが、ほとんどは三峡ダム工事への関心によるものだ。我々はそれについては重視するべきだ。時代の発展や進歩にしたがって、当初心配された国力や科学技術のレベルや移民などの問題は、今や徐々に解決されつつあることは、すでに事実により証明されている。しかし、我々は、三峡プロジェクトが引き起こす生態環境安全性の問題を決して軽く見てはならない。生態環境の損失という代償を払って経済的繁栄を得ることは絶対にあってはならないことだ。」と語った。
氏はまた、三峡ダム区は一貫して生態系が脆弱で、自然災害が頻発し、水土の流出が深刻であり、人は多く土地は少ないという矛盾が浮き彫りになっている場所である。不合理な開発は生態系の退化を招き、水土の流失の激化は、いまだ根本的な解決を見ていない、とも述べた。
ここ数年で中国はすでに数百億元にも上る巨額を投入して、水質汚染防止、地質災害防止のための整備、植樹造林、生物保護などの生態系の回復を進めており、中でも、1500余りの鉱工業企業が経営停止或いは移転し、70余りの各クラスの汚水・ごみ処理場を建設し、ダム区の土地災害防止のための整備にかけた費用は120億元以上にも及び、避難移民は7万人近くになる。
毎年発表される三峡プロジェクト生態環境監視測定によれば、三峡プロジェクト実施区と移民区の環境は総体的に良好である。三峡ダム区長江主流の水質はほぼ安定しており、3類(5段階評価の上から3番目)以上の水質を主とする。ダムにより誘発された地震の震度は低いレベルを維持しており、安全性に問題はない。
しかし、生態環境をめぐる諸々の危険性については、中国の各レベル政府や専門家が気をもんでいる。黄学斌国土資源部専門家、三峡ダム区地質災害防止工事指揮部部長は、よく発生する地質災害はダム区住民の生命の安全を著しく脅かし、地滑りによる津波災害では、波は最高で数10メートルの高さまで達し、しかもその範囲は数十キロメートルに及ぶ、と指摘している。