少し前のある朝、黒竜江省チチハル市扎竜(ジャロン)に住む農民の王玉艶さんは、自家のトウモロコシ畑でポツンと佇む国家1級重点保護野生動物のタンチョウヅルをみつけ、直ちに電話で通報した。
車で現場に駆けつけた二人の警官は、扎竜自然保護区と連絡を取って、飼育係たちが、見失ってから2日経つタンチョウのことで気をもんでいることを知った。繰り返してタンチョウを落ち着かせた後、やっとタンチョウを安心させて車に乗せ、保護区に送り返した。
赤い頭頂部に特徴があるタンチョウは、いま扎竜自然保護区に住んでいる「住民」というだけでなく、「原住民」だ。世界で現存するわずか15種のツルのうち、扎竜には6種がいる。「ツルの里」と呼ばれているチチハル市から車で26.7キロ行くと、烏裕爾川の下流にある扎竜自然保護区に着く。保護区は約21万ヘクタールに及ぶ湿地であり、多くの小さな浅水湖や沼沢、広大な湿原、草原から成り、アシなどが青々と茂り、魚介類が豊富で、中国北部で緯度が同じ地域における最も完全かつ原始的で、最も広い湿地環境にあり、古生物の種の遺伝子バンクであるほか、理想的な生息・孵化地であり、渡り鳥の重要な「宿場」だ。約290種の水禽や水鳥、オオカミ、キツネ、アナグマ、ウサギなどが1年中ここに出没しているという。扎竜自然保護区は1979年に設立され、1987年に国務院の認可を経て「国家級」に昇格し、1992年、中国が「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」(ラムサール条約)に加盟した後、「国際的に重要な湿地のリスト」に組み入れられた。
タンチョウはほとんど一生、湿原環境で生息し、魚介類や草の根とその他の水生生物を餌とし、アシの中で後代を繁殖する。長い足に長い首、長い嘴(くちばし)は明らかに、長期にわたる湿原での生活に適応するように「デザイン」されたものだ。しかし、ここ数年はタンチョウの里の生息域が縮小し、人類の活動による破壊も強まる一方だ。
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