環境問題に国境なし
「身震いするような感動を覚えた」、そんな感激の声が次々と寄せられたのは、同日の午後に放映された鎌仲ひとみ監督の『六ヶ所村ラプソディー』。青森県六ヶ所村に建設されたプルトニウム再処理工場に対する周囲の住民の反応や、様々な専門家らの分析などを盛り込んだ作品だ。上映後のディスカッションで、鎌仲監督はこう述べている。
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『六ヶ所村ラプソディー』の鎌仲ひとみ監督(左から2人目)と歓談する 中国のドキュメンタリー映画の重鎮・司徒兆敦氏(右から2人目)
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「湾岸戦争の際、有害な放射性物質で、子供たちが次々と白血病になっていくのを見た。それを撮影した後、実はその有害物質の一部は日本の核燃料施設から出ているものだと知った」
監督が日本の核問題に目を向けるようになったきっかけだ。
核政策問題は、日本では単に反対派、賛成派の二極論で語られがち。だが、鎌仲監督は反対派の運動を追う一方で、「推進派の中にも様々な個人がいて、その一人一人がなぜそのように生きるようになったのかを描きたかった」という。
その先入観を極力省いた映像に、「一般市民の生活環境に対する関心を非常に客観的に表現。この問題は中国でも同様に注目されるべき」と感想を寄せた観客も。彼らの中から、真摯にエネルギー問題と向き合った、新たな表現の誕生が期待された。
母親の死を記録
二日目の午後に放映されたのは、加藤治代監督の『チーズとうじ虫』。母親の看病のために群馬に帰省した加藤監督が、何気ない日常や母親との交流を追いつつ、限られた命の時間、家族の絆を記録し、命の循環について思索した作品だ。温かく、だが冷静に親しい家族の死を見つめたこの作品は、家族愛を重んじる中国の人々の間で強い共感を生んだ。
「日本人の生活、家庭、さらには実際の感情が感じとれた」「風の音、雷、揺れる向日葵、親子の談笑。それらの中に、もっとも簡単で大切で価値のある幸せを見出すことができた」(アンケートの回答より)
極めて個人的な事柄を扱った映画であるためか、観客の間には、自らの生き方に重ね合わせて感想を語るケースも。それは「これまでに観た中でもっとも感動的なドキュメンタリー……生命の意義が理解でき、家族との接し方、人の生死についての理解がより明確になった」などの回答に表れていた。
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