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江原規由氏:「白猫」「黒猫」から「緑猫」「紅猫」へ
発信時間: 2009-12-06 | チャイナネット

 

1950年生まれ。1975年、東京外国語大学卒業、日本貿易振興会(ジェトロ)に入る。香港大学研修、日中経済協会、ジェトロ・バンコクセンター駐在などを経て、1993年、ジェトロ大連事務所を設立、初代所長に就任。1998年、大連市旅順名誉市民を授与される。ジェトロ海外調査部中国・北アジアチームリーダー。2001年11月から、ジェトロ北京センター所長を務めた。
  中国経済の総設計師といわれた鄧小平氏は、「白猫でも黒猫でも、ネズミを捕るのがよい猫だ」との名言を残しています。以後、中国は「改革・開放」路線を敷き、社会主義市場経済を実践し、経済は1978年以来年率平均9.8%成長、世界第三位の経済規模といった驚異的高成長を遂げ、人民の生活は温飽水準から小康水準へと大きく向上しました。

今年10月1日、新中国は成立六十周年を迎え国慶節を祝いましたが、白猫も黒猫も「ネズミ捕り」の役割を十分果たしてきたといえます。

緑色経済

さて、鄧小平式形容表現をお借りして、現在の状況を例えてみれば、次は「緑猫」と「紅猫」の出番のようです。

国慶節の直前の9月、中国が大きくクローズアップされた会議(会合)が中国(大連での第3回ダボス夏会議)(注1)と米国(ニューヨークでの国連安保理、国連気候変動サミット、ピッツバーグでの第三回G20金融サミット)で開催されました。

大連のダボス会議の主要テーマは「重振増長」(成長回復)でしたが、議題は五つありました。①脱レバレッジ②「緑色経済」に潜むチャンス③アジア発展モデル再考④科学進歩による成長⑤社会需要へのクリエーティブな対応、です。

金融危機発生の反省から実体経済をもう一度見直そうというのが主旨でしたが、このうち、特に、「緑色経済」の発展が大きく取り上げられました。中国では、「緑色経済」発展の必要性がしきりと強調されていますが、「緑色」とは環境保護(エコ)、省エネ、安心、安全ほどの意味があります。開催地大連では、会期中、会議関係者の宿泊施設とメイン会場を往復するバスは電動で、ゼロ排気、ゼロ汚染の新エネルギー車が使われるなど環境に配慮が払われました。

チベットの昌都(チャムド)県左巴村で、メタンガスを使ったハウスで野菜を栽培しているチベット人村民(新華社)



これまでの経済成長は、「先汚染後治理」(環境が汚染されてから対策を講じること)で、とりわけエコへの配慮は後回しにされたケースが少なくありません。日本もその例外ではなかったわけですが、日本に代わって、2010年に世界第2位の経済大国になろうとしている中国が、国際的会議の場で高々と「緑色経済」を提唱した意義は大きいといえます。

「緑猫」の出番

最近、筆者は山東省に行くチャンスがありましたが、青島—煙台間の高速道路から見えた新装マンションの屋根にほぼ例外なく、太陽パネルが設置されている光景には驚かされました。こうした「緑色ビル」の建設は、まだ全国的規模ではないようですが、これまでと異なり、「先治理」即ちまず「省エネ」(省エネと環境保護は切っても切れない双生児的関係)という姿勢が急速に芽生えていると実感しました。

目下、中国では、「環境(緑色)特区」(注2)建設の構想が浮上しています。「改革・開放」の当初、中国の経済発展のきっかけとなった「経済特区」は生産優先でしたが、「環境特区」は生態環境の保護を前提に、世界の関連先進技術を導入し、科学的、効率的な工農業生産と経済経営、都市管理を目指すことになっています。先月号で紹介した山東省黄河デルタ環境経済区の建設プランもこうした発想に基づいているといえるでしょう。

温飽水準とは、衣食の基本的需要を満たす状況。1991年にエンゲル係数が60%以下となり温飽水準は解決された。

小康水準とは、物質面および文化生活で貧しくなくなり日々豊かさが向上していることを実感できる状況。2000年に小康生活水準の達成率が95.6%になった。



胡錦涛国家主席は国連気候変動サミットでの演説で「大々的に緑色経済を、積極的に低炭素経済と循環経済を発展させる」と宣言しています。いよいよ「緑猫」の出番です。

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