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胡同に開いた小さな店
発信時間: 2010-01-04 | チャイナネット

鈴木啓史

1974年、愛知県生まれ。大学卒業後、食品会社に9年間勤務。中国の食文化に魅せられ、退職して家族と北京に。現在の悩みは、中国語が上達しないこと。

 

「中国料理といえば餃子やシュウマイ、チャーハンがすべて」と思っていた私が初めて中国の北京を訪れたのは、1996年の3月でした。そこで私は、今まで見たこともないような食材が円卓に並んでいるのを見て、「こんな料理があるのだ」と度肝を抜かれました。また、その当時は食習慣の違いについて全く知らなかったために、出された料理はすべて食べるのが礼儀、という日本人的な考え方から、前菜からがんばって残さず食べようとして、肝心のメーンディッシュが出てきたときにはおなかがいっぱいで食べられなかったことも、今では良い思い出です。

それから4年。大阪で中国食材を取り扱う会社に就職し、自社オリジナルの中国点心のレシピ開発に携わりました。透明な皮の蒸し餃子はなぜ透明になるのか、もちもちした包子の皮はどうやったらできるのか、知れば知るほど中国の食の奥深さに夢中になりました。

そんな折、中国で点心の加工工場を新しく立ち上げる事業のために、浙江省の舟山市に行き、オリジナルの点心を開発、販売に関わる仕事をすることになりました。しかし、中国語は自分で勉強していたので、いつも「あなたの中国語は分かりません」と現地の従業員から言われて落ち込んでばかりでした。やりがいを持って仕事に取り組んでいましたが、家庭の事情のため、2年ほどで実家の愛知に戻らざるを得なくなってしまいました。

実家に戻ってはみたものの、やはり自分の力でやれるところまでやってみたい、と夢を捨てきれず、家族と話し合いました。その結果、「北京でカフェをやる!」という一大決心をしたのです。2008年9月のことでした。どうせなら四合院で開きたいと思い、南鑼鼓巷の胡同にある四合院の一室を不動産屋で紹介され、過去に日本人が住んでいたという縁もあり、そこに決めました。

街路樹が爽やかに広がるこの胡同では、夏の暑い日には、人々が中国将棋に興じたり、うちわを持って世間話を楽しんだりしています。そんな場所で日本人が店を開く、ということが分かると、胡同の住人は興味津々で、ここに何をつくるのか、と聞きに来たり、日本人が経営するのだからもっと日本をアピールした方が良い、といろいろとアドバイスをしてくれたりしました。

そして昼どきになると、必ず「吃飯了吗?(ご飯食べた?)」と聞いてくるおばあさんがいて、まだですと答えると、必ず「早く食べなさい!」と怒られてしまいます。中国の方は昔ながらの家庭料理を大事にしており、家族で食卓を囲むということが多く、食を大切にしている中国の人たちの人情味を感じることができるのでした。

そんな情緒溢れる胡同の中に、私の店「文鳥珈琲」はひっそりとたたずんでいます。店の名前は、北京で飼っている文鳥から来ているので、公園などで鳥を愛でている北京の方たちを見ていると、共感を覚えます。同じ趣味を持つ人たちが楽しく交流しあうその風景は、私の店が目指す、日本人にも中国人にも楽しんで過ごしていただける空間そのものでもあります。

おすすめスポット

南鑼鼓巷

約700年前につくられたという胡同(横町)に、アーティストが開いたカフェやさまざまな雑貨を販売している店がひしめきあっています。それが南鑼鼓巷です。私が開いた店も、この南鑼鼓巷から少し離れた、爽やかに街路樹が広がる胡同の中にあります。

「人民中国インターネット版」より 2010年1月4日

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