中島さんの原稿は数年前に完成していたが、数社の出版社に連絡した結果、出版を拒否された。中島さんは今年の年初、自費出版に100万円を費やした。これは中島さんの年金一年分に相当する。「500部のみの発行で、これ以上は負担できなかった」
自費出版の本には販路がないため、中島さんは付近の書店を訪ねた。店主はその内容に感動し、一軒一軒訪ねて宣伝し、一気に170冊以上も売ってくれた。店主は、「中島さんが売っているのは本ではなく感動だ」と語った。
本書はその後、日本の主流メディアからも注目された。6月10日付朝日新聞は、「残留孤児、本を出版し中国の恩人に捧げる」という記事の中で、「『この生あるは』は深い感情に満ち、中国人のあたたかさを伝えている」と報じた。
第1版の500部はすでに売り切れている。中島さんは笑いながら、「第2版は1000部に増刷した。読者が一人でも増えれば、中国人の善意を理解する日本人が一人増える」と述べた。中島さんは多くの読者から手紙を受け取っており、「中国人は善良で、感動した」、「中国人を見直した」といった感想が寄せられている。
日本の映画監督が中島さんを訪ね、この物語をドキュメンタリー化しようとしている。中島さんは本書の出版の他に大学の講演に招かれ、中国人から恩を受けた自らの経験を日本の若者に語った。
中島さんは、「日本の一般人も善良で、善良な人も意見を持たなければならない。国内では一部の軍国主義者が現れているが、人々が彼らの言動に従うならば、国全体が軍国主義化する。今年は戦後70年だ。安倍政権は安保関連法案の成立を急ぎ、歴史と戦争を反省していない。私の本は戦争の被害者の物語であり、一定の現実的な意義を持つ」と話した。
中島さんの家では、最も目立つ位置に中国の農村部を描いた風景画が飾られている。中島さんは絵を指さしながら、「あれは黒竜江省寧安県、私のふるさとだ。日本は私の祖国で、中国が私のふるさとだ」と語った。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年6月26日