「光陰矢の如し」-月日が経つのは速い。新中国成立70周年を迎える間に、日中両国を取り巻く環境は大きく変化した。そして世の中の変化は日を追うごとに激しくなっていることが分かる。
新中国成立からの70年の間の変化では、特に改革開放政策が本格化してから40年の経済発展にその神髄を見ることができる。モータリゼーションが瞬く間に進み、今や自動車生産・販売は世界1位の座を占め、中国が世界経済成長のけん引役となっていることは周知のことだ。自動車産業は関連分野の裾野が広いだけに、経済的な波及効果も大きい。一方、自動車の増加が環境汚染の要因の一つになっていることも事実である。その解決のために、EV等の次世代自動車の開発とともに、自動運転の導入が求められている。
現在、自動運転実現に向けた取り組みが世界各国で行われている。日本ではトヨタ、日産、ホンダ等の自動車メーカーを中心に開発が進められ、中国では百度、アリババ、テンセント等IT企業がプラットホームとなり実証試験を全国各地で展開している。自動車関連の要素技術に優位性がある日本と、デジタル経済に強みがある中国は、それぞれの特徴を活かした手法で自動運転実現への取り組みがなされている。
実は、こうした開発手法にはそれぞれメリット、デメリットがある。日本の場合、製品の完成度は高いが開発に時間がかかり、中国の場合は製品化までの時間は速いが製品の完成度という面では日本には及ばない。日中協力の真の目的は、双方の開発手法を融合させ、それぞれのメリットを如何に引き出すかにある。
昨年から始まった「自動運転に関する日中官民合同セミナー」は、こうした日中両国の優位性を活かし、自動運転実現のための相互補完の協力メカニズムを構築しようとするものである。今年9月に第2回目が北京で開催され、200名余の関係者が参加することになっている。また、今年9月11日に行われた日中経済協会合同訪中代表団と工業信息化部との交流会議でも、ICV分野での日中協力について議論が行われた。現段階では、具体的な技術協力には暫く時間を要するものと思われるが、標準化等制度整備面での協力は進められるものと思われる。
グローバル化の進展やデジタル経済の発展に伴い、世界経済が大きく変貌しようとしている今、日中経済協力の在り方も現状に合わせ、長期的展望に立って変化させていくことが求められる。(筆者・髙見澤学 日中経済協会調査部長)