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japanese.china.org.cn |07. 03. 2022 |
日本学者による2022年度「政府活動報告」の解読
木村知義 元NHKアナウンサー、ジャーナリスト
簡潔にして要諦を押さえた、例年にも増して緊張感のこもる「政府活動報告」である。第14次5ヵ年計画が「良いスタートを切った」ことをはじめ、この一年の成果を議場の全代表とともに確認しながら、これからの試練を乗り越えるために一層の奮起を呼びかける。
なによりも「新型コロナウイルス感染症対策の成果が定着した」としたうえで「国内外情勢にまた多くの新たな変化が現れ、経済の安定した動きを保つのはいっそう困難になった」「需要の縮小、供給体系への衝撃、市場期待の後退という三重の圧力にさらされている」と、直面する困難について率直、果断に語り、世界経済、国際情勢の不確実性という厳しい環境の中にあっても「人民の素晴らしい生活への憧れを一つ一つ現実のものにしていかなければならない」と呼びかける言葉には胸を衝かれる。
「六つの安定」「六つの保障」をさらに確固としたものにすることを軸に、昨年末の中央経済工作会議をふまえてマクロ政策において「クロスシクリカル調節とカウンターシクリカル調節を重視」することが掲げられ、機動的で柔軟な政策運営によって、目標とするGDP5.5%成長はじめ、雇用の安定、中小、零細業者への目配り、農業、農村問題、「デジタル中国」、「精神文化生活を豊かにする」に至るまで、民生の安定と社会の発展に向けて注力する決意が伝わってくる。
「中国人民にはいかなる困難や試練にもうち勝つ勇気と知恵、力が備わっている」という結びの語りかけからは、困難を直視する中国の力強さが伝わってくるとともに、サプライチェーンをはじめ相互依存が深まった現代世界で、中国が立ち向かう困難は同時にわれわれにとっての困難だということ、世界が共に手を携えて立ち向かうべき課題であることを知らなければならないと強く受けとめた。
西園寺一晃 東日本国際大学客員教授
今年の全人代は、コロナの世界的蔓延がまだ収束せず、米中対立がエスカレートし、ウクライナ問題など世界の不安定要素が拡大する中開催された。以下は「政府活動報告」を読んでの感想である。
1、2021年の中国経済は、国内外のさまざまな試練に見舞われながら、基本的に成功裏に任務を達成した。GDP成長率6%前後との目標は、8.1%と大幅に超過達成した。コロナ対策と、米中対立、世界経済停滞の下では大きな成果である。
2、ただ克服すべき問題も多々あると指摘している。需要が縮小、投資も鈍化、雇用状況にも問題がある。輸出は好調であったが、依然として「外需型成長」から脱していない。今後の最大の問題は内需の掘り起こしと雇用の安定化であり、引き続き「外需型成長」から「内需型成長」への転換を目指す事になろう。
3、2022年の中国経済は、引き続き「持続的安定成長」を目指し、GDP成長率の目標を5.5%前後と設定した。そのためには、ハイレベルの対外開放を含む「革新駆動型発展」が必要だと強調している。
4、中国は目下、内外で大きな試練に見舞われているが、「次の100年」に向け、力強い、堅実な一歩を踏み出すと期待する。
鈴木貴元 丸紅(中国)有限公司経済調査総監
3月4日、政治協商会議の開幕から今年の「両会」がスタートした。2020年、新型コロナからの脱却がいち早く図られ、2021年、8.1%成長、一人当たりGDP3年連続1万ドル突破、国民全員の貧困脱却が実現した後、2022年は新たな目標である「共同富裕」に向けてどのような政策が実行されるのか注目される。
政府メディアでのアンケートでは、法治国家、厳治党、社会保障、社会統治、安全保障など、法治・統治と安定・安全に関心が高い。昨年来、独占禁止法の強化や政府の方向性に基づく企業指導などが強化されており、ルールに基づく公平・公正な発展の基盤づくりに関心が高まっていると言える。昨今の規制等の強化について、海外ではイノベーションへのインセンティブを弱めないかという懸念があるが、ルールに基づく公平・公正は海外でも求められているものであり、イノベーションと競争の行き過ぎた行為を防ぐものである。中国の新たな目標への挑戦を応援したい。
(呉文欽、王朝陽=聞き手)
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