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japanese.china.org.cn |28. 09. 2022 |
夏目英男:祖国日本と故郷中国へ
East Ventures Principal 夏目英男=文
日本生まれ、中国育ち。そんな日中両国のはざまに生きる少年として、日中関係は自分が最も関心を持つテーマの一つだった。
初めて北京という地に降り立ったのは2000年の夏。当時は両親の仕事の都合上、中国・北京へと移住したが、北京はまだまだ発展途中の都市だった。外国人もまだ少なく、ところどころ下町文化ならぬ「胡同文化」が漂う北京で、僕は現地の人と同じく、サンザシの実で作られた「大紅果」と呼ばれるアイスキャンディーを片手に北京の街を通り抜けた。
それから十数年の間、中国はインターネット産業の躍進により、瞬く間にデジタル国家へと変貌を遂げた。風情豊かな街中には最先端のテクノロジーがあふれ、キャッシュレスが浸透し、もはや財布を必要としない生活が当たり前となっていた。そしてデジタルネイティブ世代でもある80後や90後(1980年代、90年代生まれ)は幼少期から日本のアニメや、漫画に慣れ親しみ、旅行や留学で日本を訪れた人が多くいた。必ずしも「嫌日」一辺倒ではなく、日本文化をこよなく愛する人も少なくない。
一方で、どれほどの日本人が中国の発展の現状を理解し、向き合っているのだろうか。そんな疑問を持ちながら、私は日本のメディアを通じて中国の若者トレンドや最新のテック事情の発信を始め、20年3月には中国に関する書籍も出版した。文字という媒体を通じ、中国に対する理解を深め、ゆくゆくは中国を訪れてもらい、真に中国という国をその肌で感じてもらいたいと考えていた。
残念ながら、その後は新型コロナの流行によってオフライン交流は断絶し、すでに3年近い月日がたっている。しかし、何よりも大事なのは交流のともしびを絶やさず、私たちの世代でともし続けることだと思う。日本と中国の国交正常化に尽力してきた人たちはとうの昔に第一線から退いている。これからの日中新時代を築き上げるのは、今を生きる私たち世代の使命だと思う。
2018年、日本の高校生訪中団は北京で中国の若者と交流した(写真提供・夏目英男)
日本や日本人にとって、中国はいまだ近くて、遠い国だ。そんな関係性を強化するには、交流の先にある相互理解しかないと考える。波乱の時代だからこそ、お互いを理解し合い、その先にある発展を見据えて、「競争」ではなく「共創」すべきだと思う。
今年は日中国交正常化50周年という節目の年でもある。これまでの半世紀を振り返ると、先人たちが築き上げた国交正常化の道になるが、これからの半世紀は私たちが担う「共創」の日中新時代になるであろう。祖国である日本と、故郷である中国の発展とさらなる交流を願って。