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japanese.china.org.cn |30. 12. 2022

2023年、中国の対外開放への期待=松野豊氏

タグ: CPTPP DEPA 対外開放 外資導入 投資 
中国網日本語版  |  2022-12-30

文=松野豊・日中産業研究院院長


資料写真:「中国のこの10年――対外開放成果展」総合展示エリア(2022年11月6日)


 2022年は、世界経済にとってとても厳しい年になった。新型コロナ感染問題は継続的に各国を悩ませたし、米中摩擦の激化は世界経済に分断の危機をもたらした。その結果、21世紀になって大きく進展したはずの世界のグローバルサプライチェーンは、各国の保護主義、自前主義によって後退し、大きく歪んでしまいそうな気配である。

 このような環境下にあっても、中国の対外開放政策は、長年の経験から成熟度が進み一貫性もある。対中投資の判断基準になる「ネガティブリスト(負面清単)」は、毎年順調に減少しているし、各地に設けられた自由貿易試験区などでは、毎年開放度が高くなっている。

 中国の外資導入は製造業分野が主力であるが、近年はサービス業分野の開放も進んできた。サービス業拡大開放総合試行はこれまで5大都市だけであったが、現在は11都市にまで拡大された。

 日本の対中投資は、中国の開放政策に呼応するように順調に拡大してきたが、新規投資は2017年を境に減少に転じている。近年の対中投資は、自動車産業と関連する部品、素材産業が多くの割合を占めている。また新型コロナ感染拡大以降は、製造業以外の小売業やサービス業の新規投資は大幅に減少してしまった。

 中国は、山積する内外の課題に打ち勝つために、今後も継続的な経済成長を必要としている。中国政府は、対外開放度を更に高めてハイテク分野等で対内投資を促進する政策を打ち出しており、また最近は地域貿易協定への参加にも意欲的である。

 2020年、RCEP(地域的な包括的経済連携協定)が署名され、現在は中国を含むアジア太平洋地域の12カ国が参加している。RCEPの開放度はあまり高くはないが、日中韓が参加する初めての地域貿易協定であるため、その意義は大きい。

 また先日の中央経済工作会議においては、中国のCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)とDEPA(デジタル経済パートナーシップ協定)への参加が明示された。これは中国の対外開放や外資導入政策に一貫性と継続性をもたらすもので、世界経済からみれば歓迎すべきことだ。

 CPTPPは、2017年に米国が原協定であったTPP(環太平洋パートナーシップ協定)から離脱した後、日本などが主導して2018年に発効した協定であり、現在は11の経済体が加盟している。

 中国は2021年に本協定への加入を正式に申請した。中国のCPTPP加入申請に関しては、日本の専門家が様々な角度から背景分析を行い、以下のような見解を発表している。

 CPTPPはRCEPよりも開放度が高く、現在の中国の政治経済体制においては、ルールに適合するために改革すべき事項が多く、かなりハードルが高い。しかし中国は近年、国際的なルール形成への影響力強化を重視している。中国の今回の加入申請は、単なる貿易協定参加のメリットだけではなく、中国の「制度性話語権(Institutional Discourse Power)」確立のための戦略の一環であるとみなすことができる。

 このような背景をもとに、最後に筆者の見解を述べたい。中国が今後外資導入を継続し、発展していくためにやるべきことは、次の3つである。

 ➀投資側の立場に立った産業発展計画策定

 複雑な世界情勢下で投資側は、市場の大きさだけでは魅力を感じなくなった。投資誘致活動においては、中国側の発展計画だけではなく、投資者(投資国)に中長期的なメリットが感じられるような産業発展計画を提示していく必要がある。

 ②中国の対外投資の拡大

 中国の国際収支構造をみると、経済黒字の大部分は貿易黒字である。これに対し、日本やドイツなどの経常黒字国は、海外投資の結果得られる所得収支が経常黒字を支えている。中国も海外に積極的に投資を行い、相手国の産業振興に貢献していくことも必要である。

 ③中期的な構造改革プランの提示

 CPTPPは開放度が高いため、中国は今後大きな産業政策、金融政策の制度変更が必須になるだろう。すぐには改革ができなくても、中期的な改革の方向性を示して実行を約束すれば、加入交渉はスムーズに進む可能性がある。

 世界各国は2023年も引き続き、やっかいな問題に悩まされ続けるだろうが、一方で各国は、諸問題の解決のための一歩を踏み出す年にもなるだろう。中国が地域貿易協定に加入して対外開放度を高め、グローバルサプライチェーンの分断を防ぐことは、世界経済にとっては大きなプラスになるはずだ。世界は、中国が問題解決を主導してくれることを大いに期待している。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年12月30日