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japanese.china.org.cn |30. 03. 2023

若者世代と向き合うという課題

タグ: 若者世代
人民中国  |  2023-03-30

木村知義=文

 今号のテーマは中国の若者世代です。 

 なぜ今、若者世代なのか 

 「青年の強さこそ、国の強さである。現代の中国青年は時代に恵まれ、才能発揮の舞台が無限に広がり、夢を実現する未来はこの上なく明るい……」 

 昨年秋の中国共産党第20回全国代表大会(第20回党大会)における報告で、習近平総書記は、こう青年に呼び掛けました。そして大みそか、中国の国家主席として2023年に向けた「新年のあいさつ」を発表し、その中で「明日の中国は、青年に希望を託します。青年の成長によってこそ、国家は繁栄します。中国の発展は青年たちの努力にかかっています」と、重ねて青年たちに向けてメッセージを発しました。 

 本誌『人民中国』では昨年1月号と7月号で若者世代についての特集が組まれました。登場した若者たちの躍動感に中国の未来を感じ、1月号の特集に触発されて5月号の本欄に「若者論」に触れて書きました。そこで取り上げた「サンデル教授の白熱教室」の放送で出会った中国の若者たちにも本当に感動したものです。 

 もう一つ、「発見の衝撃」です。昨年秋の日中国交正常化50周年記念の「講演会」でのことです。横浜国立大学名誉教授の村田忠禧先生はじめ神奈川県の日中友好を目指す方々が中心になって重ねられ、今では日本全国への広がりの中で開催されているオンラインの「日中民間交流対話講座」の一環として企画されたものでした。登場した中国、日本の若者に、「こんな日中の若者たちの交流の世界があるんだ」と驚くとともに、実に生き生きとしてエネルギッシュな若者の姿に圧倒されました。 

 中国の若者が日本にやって来て「ユーチューバー」として絶大な人気を博し、日本の青年たちと、すごいと言うしかない交流が広がっていることや、その若者たちの共通語とさえなっている「ガチ中華」といった言葉も知りませんでした。さらに、日本でビジネスに携わる中国人の青年群像にも接することになりました。 

 こうした相次ぐ「青年への呼び掛け」や本誌の「特集」、「衝撃の体験」を通じて、あらためて、若者の在り方と向き合うことが中国の未来を考える上で重要な「テーマ」だと意識させられたのでした。 

1月14日に湖北省宜昌市解放路の歩行者天国で行われた西陵縁日で、ロウバイを手にした漢服姿の女性たち。ここ数年、中国では漢服をはじめとする自国の伝統文化をフィーチャーした「国潮文化」が若者の間で人気だ(vcg) 

 夢に目を輝かせた刻苦奮闘の時代 

 「成田空港に着いて、重いトランクを引きずりながら、なんと都内まで歩いたという学生の話に、初めは信じられなかった。でも家族が日本留学のために苦労して持たせてくれたお金を考えると少しでも節約しなければと歩いたというのです。せいぜい3000円くらいの都内までの交通費を節約するためですよ。でも、この留学生の気持ちがよく分かりました。日本の学生は負けたと思いましたね」 

 ある大学の教員から、こんな中国からの留学生の話を聞いたのは、「Z世代」(1995年以降生まれ)といわれる若者がこの世に生を享けた頃のことでした。 

 目標、夢を胸にまさに刻苦奮闘を重ね生きるという体験を通して、それぞれが中国の未来を拓く一人を目指した若者の時代があったということ、それが「中国の今」をつくってきたということも、日本の私たちは、いま一度記憶にとどめておく必要があると思います。そのときの彼ら、彼女らの目の輝きを忘れてはならないと。 

 その一方で、冒頭に述べたような今の若者の姿に接すると、時代は変わる!そんな感慨を深くします。 

 速い中国の変化、変わる若者像 

 この春節に中国に里帰りした友人に、今の中国の若者に対して「世代の隔たりを感じるか、それはどんなときか」と質問を投げてみました。 

 「先生、世代の違いなんてものじゃありませんよ、今どきの子どもたちは。感覚も価値観も、われわれの子どもの頃とは全く別の人間ですよ……」と、文字ではとても書き切れないとウィーチャット通話で返事が来ました。長い付き合いのこの人物もそろそろ60というよわいです。 

 「第一、遊ぶときのおもちゃからして違う。今は全部パソコンとかスマホですよ。兄弟がいる場合は5歳も違えば感覚が全く違います。中国は変化が日本よりずっと速いです」「そうそう、中国速度を知らなければ中国は分からないと、いつも言ってきました」「そうでしょう!兄弟でも考えや関心が全く違うくらいですよ。昔は親の言うことはちょっと違うなと思っても一応は聴いていたものですが、今はまったく耳を傾けません。全部ネットです。分からないことがあっても親には聞きません、スマホです。ですから中国の若者のこれからは問題、その通りです……」 

 話は若者から一気に子どもへと飛んだのですが、気持ちはよく分かるというものです。もう一人質問を向けた女性からは、「若者の結婚観が自分の頃とは全く違ってきた。ほぼ一人っ子で育ってきているので、人に何かをしてあげるという意識が薄くなってきていると思いますね。社会の環境変化は大きいです」という答えが返ってきました。 

 もちろん、この2人の答えが中国の全てではないことは踏まえつつですが、「中国の今」の一断面を言い表していることは間違いないでしょう。 

 この話をきっかけにさまざまな中国メディアを読み返してみると、消費志向の変化に始まり、職業観、人生観、社会観の変化、さらには人間関係の変化など、若者の意識の変化について多くの発見がありました。 

 例えば、今の若者の最も注目度の高い「新三種の神器」は、ロボット掃除機、プロジェクター、折りたたみ式スマホ。「Z世代」のインターネットの月間平均利用時間は160時間、利用ジャンルのトップ3は動画、SNS、スマホゲームで、おしゃれ、トレンド、Eコマースでのショッピングを重視、「クオリティパフォーマンス」を追求し「没入感」を求めるというのです。その一方、中国の伝統文化を新しくして生活に溶け込ませることにも熱心で、例えば「国潮」(中国伝統の要素を取り入れたオシャレな国産品)文化の発展をけん引しているなど、若者のものの考え方やライフスタイルは大きく変化していることが見えてきました。 

 若者と向き合い、日中の未来へ 

 中国の変化の速さを考えれば、若者の意識の変化もまたそのスピードに即して、あるいはそれ以上の速さで変化しているのでしょう。しかし、一方では、それゆえに若者たちが新たな悩みや壁にぶつかることもあるのではないかと思うのです。なぜ習近平氏があれほどまでに相次いで青年へのメッセージに力を込めたのか、その「含意」を読み取ってみることも大事ではないかと思います。 

 日中の交流を考える際に、視界をぐっと広げて若者へ。社会の体制、仕組みが異なることを踏まえながら、素晴らしい可能性を持っている若者たちの姿とともに、悩みや苦しみ、考えるべき課題についても、日本と中国双方で共有しながら向き合っていくことも意味のあることではないかと考えます。同世代間の問題意識を交流し合いながら、若い世代が社会にどう向き合っていくのか、双方の未来を拓くためにどうすればいいのか、心を開いて率直に話し合う場をさらに多様に創り出していくことも、これからの日中関係にとって大事な課題になると考えます。 

 「人民中国インターネット版」2023年3月30日