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japanese.china.org.cn |20. 06. 2023

新たな世界像に向けて中国が果たす役割

タグ: 世界 中国
人民中国  |  2023-06-20

木村知義=文

月号で、何もかもが米国による「対中国抑止」あるいは「中国封じ込め」という文脈で動いていて、相当長い間こうした状況と向き合わなければならないだろうと述べ、この状況を乗り越えていくために「21世紀のバンドン会議」をという問題提起をしました。 

今号では、この問題意識を引き継いで、なぜこの問題提起を中国との関係で発想するのかを述べてみたいと考えます。 


3月10日、王毅中央外事活動委員会主任(中央)、サウジアラビアのアイバーン国務相兼国家安全保障顧問(左)、イランのシャムハニ最高安全保障委員会事務局長(右)は、署名した共同声明を発表し、サウジアラビアとイランの外交再開が合意に至ったことを宣言。三者が共に国際関係の規範を維持し、世界と地域の平和と安全保障の促進に努めることを強調した(cnsphoto)

中国が世界に提起する「公共財」 

結論から先に言えば、世界の平和と発展に向けて、中国は、世界の「公共財」というべき「構想」「イニシアチブ」を提起し、その実現のために着々と動いているからです。この積み重ねによって、かつて中国が「第1回アジア・アフリカ会議」(バンドン会議1955年)において重要な役割を果たし「非同盟諸国」の連帯を生み出すことで戦後世界の新たなありようを開いたように、21世紀の世界においても、世界が最も渇望する平和と発展をけん引することが期待できるからです。 

まず、問題を考える上で忘れてはならない最近の「動き」を挙げてみます。 

・「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」を発表して、ウクライナにおける停戦と和平への道を指し示すとともに、習近平主席がゼレンスキー大統領と電話会談を行うなど、ウクライナの平和を回復するために役割を果たすことを鮮明にした。 

・中国の仲介によってサウジアラビアとイランの歴史的和解が実現。メディアや国際問題・地域研究の専門家たちがこぞって「衝撃」だと声を上げた。さらに、イスラエルとパレスチナの和平に動く可能性が伝えられ、アラブ世界において中国の存在が一層大きくなっている。 

・ブラジルのルラ大統領が中国を訪問、習近平主席と会談して「一帯一路」共同建設はじめ中国とブラジルの戦略的パートナーシップを深め発展させることを世界に示した。 

・NATOの構成国フランスのマクロン大統領が訪中して習近平主席と会談、「一つの中国」政策を尊重するとともに世界の平和と安定の実現に努力することを確認。その後、オランダ訪問における会見で「(米国の)同盟国であることは下僕になることではない。自分たち自身で考える権利がないということにはならない」と語る(BBC4月13日)。 

このように、世界は、米国およびその同盟国あるいは「G7」という「主要国」の枠組みで動いているのではないということ、中国の存在が日増しに重くなっていることが見えてきて、世界に大きな「地殻変動」が起きていることを知ることになっています。そこで、世界の新たなありように向けての「動き」に際して、中国が提供する三つの「公共財」について考えてみます。 

「一帯一路」の発展、深化 

まず「一帯一路」イニシアチブです。提唱から10年となりました。残念ながら日本のメディアではこの10年の進展の全体像が分かりません。むしろ否定的な論調で伝えられることばかりが多くなっています。そこで、第14期全国人民代表大会第1回会議で採択、承認された「2022年度国民経済・社会発展計画の執行状況と2023年度計画に関する報告」(新華社配信)を読んでみました。 

そこでは昨年末時点で150カ国と32の国際組織と200余りの協力文書に調印したことが報告されています。中国と欧州を結ぶ国際定期貨物列車「中欧班列」は累計6万5000本以上が運行され、標準コンテナ600万個を超える貨物が欧州25カ国の200余りの都市に届けられたとされています。 

一方、今年度の「計画」では、「シルクロードEコマース」協力先行区を新たに設立し、福建省と新疆ウイグル自治区の「一帯一路」核心区の質の高い発展を推し進め、辺境地区の重点開発開放実験区の建設を推進することや「シルクロード海運」などのブランドの影響力を拡大し「空のシルクロード」建設の推進を掲げています。加えて第3回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムの準備を進め、海外への発信を強化して「一帯一路」共同建設の物語をしっかりと伝えることも打ち出しています。 

こうした中、武漢市を発着する「中欧班列」に新たな路線が加わったというニュースを目にして驚きました。ドイツのデュイスブルクで積み込まれた貨物が新疆ウイグル自治区の阿拉山口から中国に入り武漢に到着した後、国内の鉄道に積み替えられて浙江省の寧波へ、海運で台湾の基隆まで運ばれたというのです(CRI4月20日)。「一帯一路」は台湾まで包み込んで広く、大きく躍動しているというわけです。「一帯一路」が地球規模で国や地域のありようを大きく変えていくことになると、改めて強く認識させられます。 

同盟によらない「伙伴関係」 

中国が世界に寄与する公共財のもう一つは、国と国の関係を発展させていく上で重要な「ツール」となる「伴関係」です。一般的に「パートナーシップ」という言葉で語られますが、「伴関係」は米欧における「パートナーシップ」とは大きく異なります。「伴関係」は同盟関係によらないというところです。首脳間の信頼関係を礎にして築かれる「パートナーシップ」であり、しかも相互の必要性に応じて関係が可変的に動く融通無碍な弾力を持っていることです。 

これからの世界の姿を構想するとき、「上下関係」ではなく水平的な関係を目指すことが大事になりますが、「伴関係」はまさにそうした考えを体現する「パートナーシップ」です。排他的で時には他国を敵視する分断と対立、抗争を生み出す米欧などの同盟関係とは一線を画する「伴関係」こそ、これからの時代の多国間主義を実践する力を秘めていると言えます。 

指し示す「未来への選択」 

そして「人類運命共同体」です。これからの世界のあり方の土台=基礎となる思想、哲学として、さらには、そこからさまざまな政策が導き出される、いわば新たな世界像の全ての源泉となるものです。 

気候変動、環境破壊、資源、食料問題などはもはや地球上の誰にとっても無関係ではない人類全体の深刻な課題として向き合わなければなりません。どうすれば平和な世界を創り出せるのかという安全保障に関わる課題、地球の全ての人々がどうすれば分け隔てなく豊かな暮らしを目指すことができるのかという命題への手掛かりが「人類運命共同体」に凝縮されています。 

また、「中国式現代化」はじめ、いま中国が世界に向けて発するメッセージは、ひとり中国にとどまらず、地球に暮らす全ての人々の共通利益に深く関わる、まさに地球儀を俯瞰する大局から、私たちの進むべき道を示唆していると言えます。 

さらに、2年前に提起された「グローバル発展イニシアチブ」、昨年の「グローバル安全保障イニシアチブ」、今年になって提起された「グローバル文明イニシアチブ」が、それぞれ分野・位相を異にしながら、同時に、有機的に交差して、これからの新たな世界像について示唆深く語り掛けていることも忘れてはならないでしょう。 

このように、中国は休むことなく理念と政策を提起して、われわれの「未来への選択」について行くべき道を指し示しています。こうした視角から中国を見つめてみると、さらに奥深い中国が見えてくると思うのです。 


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