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japanese.china.org.cn |30. 01. 2022

北京冬季五輪と「中国速度」

タグ: 冬季五輪
人民中国  |  2022-01-30

 

「共に未来へ!北京2022冬季オリ・パラハウス」展の開会式でカーリングを体験する孔鉉佑駐日本中国大使(写真・王朝陽/人民中国)


この号が読者の皆さんのお手元に届くころは、北京冬季オリンピック・パラリンピック(以下、北京冬季五輪と略)が開幕して各国から集ったアスリートたちの「熱いたたかい」が繰り広げられているだろうと思います。この北京冬季五輪に際して考えさせられたテクノロジーの進化と中国社会の成熟に関わる「中国速度」について少し述べてみたいと思います。


 東京五輪の「違和感」と開催意義

本論の前に、東京五輪について少し。五輪史上初めて1年延期となった東京五輪は、コロナパンデミックという難局に直面して、開催を巡って国民の中で意見が大きく分かれました。しかし私は、こうした問題の前に、東京招致が決まった2013年9月のブエノスアイレスでのIOC総会における最終プレゼンテーションで安倍晋三首相(当時)が、東日本大震災による福島第1原発事故の汚染水問題について「アンダーコントロール」と述べたことに強い違和感を抱いていました。今なお故郷に戻れない福島の人々が数多くいることを思うと、五輪開催を巡って言葉にならない「割り切れなさ」を感じ続けてきました。とはいえ、一方では、コロナ対策でさまざまな制約のある中で、世界から集ったアスリートたちが繰り広げるパフォーマンス、記録に挑戦する姿に感動を覚え、目を奪われたことも確かでした。

北京冬季五輪を控えた中国からは選手だけではなく、東京五輪の実際を身をもって体験しながら北京での大会運営の参考にする事前の調査・研究のために関係者が訪れたことも伝えられました。そこで得られた知見はきっと今回の北京冬季五輪に生かされているだろうと思います。 


 北京冬季五輪と四つの理念

そこで北京冬季五輪です。この稿の筆を執っている時点では開会式や実際の競技を見ることができていないのですが、もう一つの「見どころ」に読者の皆さんと共に目を向けてみたいと思うのです。

昨年末、東京中国文化センターで開催された「共に未来へ!北京2022冬季オリ・パラハウス」展に足を運びました。展示から、今回の冬季五輪は「グリーン」「インクルーシブ」「クリーン」「オープン」の四つの理念の下で準備され、開かれることを知りました。

「グリーン」は100%グリーンエネルギーを使い、100%カーボンニュートラルを目指すことを意味します。五輪史上初となる「CO2遷臨界直接冷却スケートリンク」が導入されたことも注目です。聞き慣れない言葉ですが、要は、温室効果ガスとして厄介者の二酸化炭素を冷媒として活用して氷を作ってしまおうということなのです。また、選手の移動には水素燃料電池バス212台が使われます。競技会場の建設に当たっても生態系を優先して自然環境との調和を第一にしたことが強調されています。

「クリーン」は、08年の北京五輪でユニークなデザインが話題になった「鳥の巣」(国家体育場)や夜間の光の彩の変化が美しかった「ウォーターキューブ」(国家水泳センター)などのレガシー施設を今大会の会場として活用することで「節約」に努め、冬季五輪を「氷雪のようにきれいで、純潔」なものにすることを目指したという意味です。

私が最も注目したのは「インクルーシブ」でした。「包摂的な」という意味の言葉ですが、五輪開催の成果を社会全体で共有しようという意味が込められています。パラリンピックに集うアスリートをはじめ、なんらかのハンディを持った人々を社会で大きく包み込んでいくというメッセージも込められているのだろうと思います。五輪にとどまらず、これからの中国社会の目指す方向を指し示すものだと感じました。

「オープン」はもはや説明の必要もありませんが、世界に向け、未来に向けて開かれた北京冬季五輪にしていくということ、さらに、この五輪を一層の対外開放の「推進エンジン」にしていこうという意気込みを込めていることが伝わってきました。

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