社会>
japanese.china.org.cn |30. 01. 2022

北京冬季五輪と「中国速度」

タグ: 冬季五輪
人民中国  |  2022-01-30

 中国社会の成熟、進化の速度

スポーツの祭典ですから競技とアスリートに注目が集まるのは当然ですが、今回の冬季五輪のもう一つの「見どころ」と述べたのは、目を凝らしてみると中国について多くの興味深い発見があると感じたからです。

ここに書いたことは、何も予備知識のなかった北京冬季五輪についての私の「気付き」のほんの一端なのですが、実はこうした「発見」には感慨のこもる「前史」があります。

 放送メディアでの仕事を離れた08年夏、現場に立って中国を見つめ直そう、学び直そうと思い立って北京五輪に合わせて中国を訪れました。五輪開幕に先立つ天津でのサッカー、日本対米国の試合会場に足を運んだのをはじめ、北京市内のいくつかの競技会場で、中国の人々がどのように五輪を迎え、五輪と接しているのかを、時間と空間を共有しながら体感したのでした。

開会式は北京に住む友人の家で、中国を代表する映画監督、{チャン・イー・モウ}張芸謀氏が総指揮を担当した演出に目を見張りながらテレビ中継を見ました。当時の最先端のデジタル技術をフルに活用しながら、水墨画や太極拳、京劇といった中国の伝統文化の粋を見せるとともに、多くの人間が見事なまでに息を合わせて行う群像パフォーマンスを織り込みながら展開する独創的な演出に目を奪われたことを今でも覚えています。

 そんな北京五輪から14年。中国社会の成熟とテクノロジーの進化のスピードはなんと速いのだろうかというのが、今回の冬季五輪を迎える私の感慨です。5G(第5世代移動通信システム)やロボット、AI(人工知能)の活用といったテクノロジー面にとどまらず、四つの理念から見える中国社会の成熟という面で、この「中国速度」が理解できるかどうか、これは五輪にとどまる話ではなく、中国の「現在」の全てに関わる中国認識の重要なカギの一つになっていると思います。


 「中国速度」を理解し新たな中国観へ

 いま友人たちとこの「中国速度」について意見を交わすとき、私は「逆・ウサギと亀」物語というたとえで話すことがしばしばです。「先進国」を名乗ってきた欧米諸国の亀は、ずっと後から追ってくるウサギの中国に大きな差をつけていて追い付くわけはないと高をくくっているのに対して、亀が何年もかかって到達した距離を後のウサギはぴょんぴょんと跳ねながら飛び越え、瞬く間に追い付き、追い越していく、「逆・ウサギと亀」状態を目の当たりにする時代になっている、というわけです。もちろん亀も怠けているわけではないのですが、この物語を理解できるかどうかが、「米中対立」はじめ欧米および日本と中国に関わるあらゆる問題を読み解く上でのカギになるというのが、私の見方です。

 この「中国速度」は、理念や目標を力強く指し示すリーダーシップと試行錯誤を恐れず果敢に挑戦する実行力が一体となって実現できているのだと思います。北京冬季五輪のもう一つの「見どころ」をきっかけに、今中国を{つ}衝き動かしている力が見えてきたという気がするとともに、私たちの中国観を新しくする契機として実に深い問題を投げかけている、そんな思いを強くします。

 

 人民中国インターネット版 2022年1月30日



<  1  2