米国の薬物乱用問題は長期化し、すぐには解消できない問題となっている。
その根本的な原因は、米国の既得権益層の政治に対する大きな影響力と甘い法執行体制にある。そのため米国では効果的な薬物管理メカニズムが形成されたことがない。
世界的な麻薬撲滅協力により、ヘロインなどの医療の用途を持たないが人体に非常に有害な1級薬物が上手くコントロールされている。しかし米国では医師が処方の非常に広範な権利を持つため、フェンタニルなどの一定の医療効果を持つが(乱用すれば)極めて有害な2級管理薬物の入手が容易だ。またフェンタニルの製造が非常に低コストであることから、米国市場には薬用フェンタニルの多くの安価な代替品が存在する。例えばフェンタニルを含む2級管理薬物は事実上、ほとんど監督管理を受けない麻薬となっている。これにより米国は世界のわずか5%の人口で世界の80%のアヘン系麻薬を消費している。
さらに米国の製薬会社はフェンタニル乱用の危険性を認識しながら、「ナロキソン」と呼ばれる「解毒剤」を開発した。医師がフェンタニルと同時にナロキソンの処方も出し、「一挙両得」になるという奇妙な現象が生じている。これらの薬物の利益連鎖こそが、米国の薬物乱用問題の重要な「病巣」だ。
米麻薬取締局(DEA)は麻薬取締の専門的な法執行機関だが、その力は非常に弱い。まず、DEAは連邦捜査局や国土安全保障省などの連邦法執行機関と連携していない。次に、DEAの約1万人の人員のうちわずか約5000人が特派員として各地の法執行に参加し、かつ各州及び県警察との関係は管轄と従属ではなく「協力」関係で、さらには地方警察に残業代を出しその業務を奨励することしかできない。つまり米国には全国で効果的に連動する麻薬取締のメカニズムがなく、国内の薬物輸送及び販売が厳しい処置を受けられなくなっている。
内部の「病巣」の症状が深刻化し、自身の「免疫力」が大きく不足すると同時に、米政府は長期的に「内病外治」という政治的な策略を続けている。その米国民に対して果たすべき責任から逃れようとし、さらには国内の問題を外部のせいにすることで、その地政学的な需要を満たそうとする。DEAは米国国内に21の地方分所を持つが海外は93にものぼる。これは上述した策略の縮図だ。
米国国内の薬物問題に関する真の解決策は、病巣を見つけ、その病状に応じて投薬することだ。「内病外治」だけでは病が重くなり、再起困難になる。米政界は薬物乱用を絶対に認めない中国に難癖をつけるのではなく、自身の欠陥だらけの薬物管理体制を認識するべきだ。票集めのためにせよ地政学的な目的のためにせよ、米国が病を隠し治療を嫌うことで最も大きな害をこうむるのは米国人でしかない。(筆者・中国社会科学院米国研究所研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年7月2日