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世界文化遺産・福建省の土楼

 

◆民族が同居・情理を共生

民族が同居している、というのが土楼の基本的な特徴であり、中原の漢民族の伝統的生活方式とまったく似ています。宗教的な雰囲気が色濃く、設備も完備されて、一つの厳然とした小社会が形成されています。族長は徳が高く信望の厚い長老が担っています。土楼の平面は対称で、建築上の明確な核心を有する土楼には強い等級的な思想が体現されています。こうした配置は中国伝統の「宗法(同族支配体系)」の考え方、また民族の同居と管理・統制に適合していると言えるでしょう。

ハッカ人の祖先は中原の漢人ですが、長い移動の過程で、たとえば言語や服飾、生活習慣といった彼らの文化が南方先住民との相互交流を余儀なくされるなかで、相対的に言えば中原の正統な文化は変異していき、それに加え、朝廷の権限が及ばない遠隔地であることから、ハッカ人の多くの集落の管理は少数民族自治の状態と似たものになり、「土着化」の傾向を呈するようになります。このため、ハッカ人は自らを漢族の子孫だと強調しましたが、古代の中央の統治者はハッカ人をその他の少数民族と区別して扱うようになりました。一律に「南蛮」と決めつけ、政治的な圧力を加え、軍事的に攻撃したり、文化的に敵視したりするようになったのです。こうしたことから、ハッカ人の間に自己防衛意識が強まっていきました。また、民族間の小競り合いや衝突も頻繁に発生し、しかも地元の権力組織の管理に限界があったこともあって、ハッカ人は安全面から砦に似た土楼に住まざるを得なくなったのです。

いま一つの際立った特徴は「情理の共生」です。人と人、人と集落の環境との有機的な整合性、緊密な共生関係が具体的に表れていることです。伝統的な農業社会では、良好な「心情」は民族の同居という温かな人間関係、文教を重んじる伝統的な家族の血縁と隣人としての地縁、定着地の重視、調和のとれた美学思想、「礼」という道徳の尊重などに体現されています。良好な「生態」は一方、建築の自然への順応、地域環境の生態均衡の維持、土地の保護や節減、生態系の保護への重視などに体現されています。

風俗は純朴であり、人びとは朝夕をともにし、心を一にして互いに情愛があり、同居という生活方式を保ち、楼内のあちこちに緊密な血縁関係と親戚のような親密な情が満ちています。文教重視の面では、ハッカ人には優れた歴史的な伝統があります。多くの土楼の内部に数え切れないほどある祠堂、書庫、扁額、文字・絵画はいずれもこうした事実を静かに物語っています。

福建省西部の土楼は生土の建築として、人間が自然を利用して発展すると同時に、できるだけ自然の破壊を減少できることを具体的に示しています。煉瓦を焼く必要はなく、耕地を壊すこともなく、土を取ってその土に戻る。厚い壁のある生土建築は熱工学上、一定の長所をもっています。蓄熱力が強く、熱による遮断が大きいので、室内の環境は冬暖かく夏涼しく、酷暑も厳寒もなく、四季通じて春のような感じがあります。また、円形の建築構造によって風を通す大きな天井が構成され、窓やドア、回廊を合理的に組み合わせることで、居住に適した微気候の環境が形成されます。土楼は「焼いても火は通らない、砲撃しても壊れない、虎や狼も侵入するのは難しい、地震でも倒れない」と絶賛されています。今日の目で見れば、土楼は確かに素晴らしい科学的合理性を備え、また素朴な生態環境観を具体的に示すものだと言えるでしょう。

偉大な福建省西部の先住民が、劣悪な生存環境のもとで、自らの労働と知恵を活用してこうした「情理の共生」を発展させ、今にいたっても不思議な昔と変わらない郷土集落として残っていることに、感慨を禁じえません。こうした創造力、こうした開拓の精神は実に得がたい貴重なものです。

 

「チャイナネット」2008年11月11日

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